河童24

そんな山男の姿を、幼き年よりはしばらく眺めていた。
山男は身動きせずに様子を伺っている。
「何処かへ消えたか。」
そうつぶやき
「まだ、いるな」
腰を落とし構え直した。
幼き年よりには眠る前のことが思い出される。横になるときに見えたあの影。
「あれが現れたんだ。だからおじさんは震えてるんだ。」
幼きとしよりは、男に声をかけようとしたが、脅かすと悪いと思い口を閉じる。
しかし、小さな声ならばと、
「おじさん」と、声をかける。

男はすべての気を集中し、見えづらい夜の視界にすべてを集中している。石ころが転が音さえ聞き逃さない。
そんな張り詰めた男の耳に思わぬ方角から刺激が入る。
「おじさん」
予想だにしない方角から耳への刺激。
男はすかさず反応して驚き。
「うわぁー」声の方へと体を向ける。
声をかけた方も、ここまで驚かせるつもりもなく、ただただ驚き、目を見開くだけだった。
「なんだっ」
驚き飛び上がり棒を振り回す。そして、棒の先が幼き年寄りへ向きピタリと止まる。
二人は言葉もなく見つめあったが、男は棒切れの先を下に向けながら、
「おっ・・・おきたか。」
その言葉のあとも、しばらく静かに見つめあっていた。

「おっ・・起きたのなら何か得物を持て・・・何かがいるぞ。」
男は、ぼやけて見える夜の景色に向かい構え直す。
「何か解らんが、山犬の群れかもしれん。ならば厄介。腹を透かして少々荒くれているかもしれん。儂は自分のことで手一杯。自分のことは自分で守れ。」
幼き年よりは納得いかない。
「おじさん。山犬じゃないよ。河童だよ。」
隠れている河童たちに聞かれまいと小声で話す。
自分の見たものを認めてもらうため、信じてもらうために言葉を投げるが、
「・・・。」
男からの返事はなかった。
返事はないが話は聞こえている。
自分が見たもの、子供が見たもの、どちらも同じだとすれば、捨て子の集団か河童か。
犬どもではないのは確かなようだった。
男は考えた。
二本脚で歩くもの、またはそれに近い生き物。
「猿か・・・猿か」
猿と思えば心落ち着く。
猿か・・。
「猿なのか・・・。いや違う。」
どう考えても、猿ではない。
猿はもっと小さい。二脚で立つこともあるが歩くときは四つ足だ。
人のようにすわることあっても、見間違えそうもない。
落ち着いていた気持ちは再び緊張を呼び出した。
身体が再びの緊張をする。
だがすぐに緊張は溶けてくる。
得体の知れないものに怯える自分の姿を思うと笑いがこみ上がる。
若かりし頃、山の中で皆とはぐれ一人山の中で三日三晩過ごした時のことを思い出す。あのときも普段は見えない何かを見て一人震えたことを思い出す。
あのときと同じだ。
「ふっ。」
息を吐き捨てるように鼻からこぼし「クックッ」と、我が身のことをわらいだす。


自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!