河童21

子どもは今までと違い、不安気に男を見つめる。
男は、幼き年寄りが、やっと怖がり始めたと、少し愉快になってきた。
「河童なの・・。」
「そうだ。だからもう寝ろ。儂もしゃべり疲れた。」
「かっぱは小柄なの・・。」
「そうだ。云ったとおり、お前ぐらいの大きさだ。」
「歩くのが下手なの」
「そうだ。年寄りみたいに歩く」
「・・・。」
「だから寝ろ。かっぱは来ない。心配するな」
男は思いの外、不安を見せる子どもに、脅しすぎかと思い。
「心配するな。話だけで、未だ誰も見たことがないんだ。さぁ、寝ろ」
「・・・。」

幼き年寄りは黙りこむ。
男は寝たのかと思い、星空を見ていると。
「おじさん・・・」
話しかけてきた。
「なんだ起きてるのか、大丈夫だ。つくり話だ。河童なんぞいない心配するな。」
「・・・。」
しばらく静かだった。
男も静かにすわっている。
そのそばには子どもが寝ている。

「おじさん。」
いきなりの声に驚く。
「なっ、何だ起きてたのか。河童の話なら気にするな。作り話だ。見たやつなぞ居やしない。こんなところに出やしない。」
「・・・みたよ・・。」
「・・・。」
「みたよさっき。おじさんを起こしたのは、河童を見たからだよ。」

男は呆気にとられ。つい吹き出す。
・・この子ども、からかわれた仕返しか。・・
「うんうん、その手にはのらん。大人をからかうのは無駄だ。」
軽く笑い飛ばし子どもに目を向ける。
幼き年寄りは。
「本当だ」飛び起きる。
「本当に見たんだ。おじさんが寝ているときに、あそこにいたんだ。だから、おじさんを起こしたんだ。最初は交代の人かと思ったけど、おじさんの話でわかったよ。あれは河童だったんだ。本当だよ。」

必死に話してみたが、所詮は子どもの話し。
ふふっと男は笑い。
「解ったから。もう寝ろ。河童の話しは作り話だ。儂がからかっただけだ。もう寝ろ」

話を聞く気のない大人相手に、幼き年寄りはあきらめ、横になり目を閉じた。
「・・見たのにな。」
少しすねながら、夜風に漂う生臭さを、「河童の臭いだ」不快に感じつつ眠りについた。

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!