河童3

そんな薄気味の悪い人気のない場所にいる者は生臭い坊主と、まだまだどこかに火の手は上がるであろうと、そして天下は大坂に戻るであろうと、これといった根拠もなく思い続ける先の見えていない若者だけだった。

そんな場所に聞こえてくるのはかすかな雨音と蛙の合唱だけ。

そんな蛙の合唱が一斉に退いた。静寂があたりに染み渡る。しばらくの静寂そして草の揺れる音こすれる音。より耳を澄ませば草木を踏みしめる足音すら聞こえる気がする。

『はてっ夢の中かな・・。』浅い眠りから社の外へと気を向ける坊主。

坊主は緊張でこわばる身体をそのままに、外の気配へと意識を向ける。『散策か』夕暮れ時に来た侍たちとも思ったが、外はシトシト雨が降っている。大物幾人かは取り逃がしただろうが、この雨の中この社を怪しんでいるというのか。わざわざ小物を捕らえに雨の夜に走り回る働き者もないだろう。坊主は耳に意識を集中し外に気を向ける。

タッタッタッと足音が聞こえる。
坊主が康介に視線を向ける。若者は痛みも忘れ寝息をたてている。

「この足音は百姓か。子ども・・・。いや、・・・田畑は離れた場所にあるが、こんな夜に社に用事もあるまい。」

不安が積もる坊主は、身体を起こし外に意識をすべて向ける。

足音は社の周りをゆっくり、時に足早にうろついている。どうやら中の灯りが漏れているので、中の様子を伺っているようだ。

坊主はしっかりと身体をおこし、もう一度意識を集中して外の気配をうかがってみた。

坊主の緊張と外の気配に、眠っていた康介も目を覚まし、横になったまま刀を抜く準備をしていた。

坊主と光介に緊張が走る。足音は社の戸口でとまった。ど口に手をかける様な音が、ゴソゴソとする。
坊主と康介が身構える。

ガタリと音がし、ゆるりと戸が動く、動いた戸口から指が入り込む。

坊主と康介の身体を一気に血がめぐる。身体が熱くなる。

康介は尻を床につけたまま起き上がり刀を抜く。が、それより何より速い動きは坊主だった。

もとは侍の一子。戸が動き指が見えたその瞬間、脱兎のごとく立ち上がり、戸口に見える指をつかみ、その少し奥に見える手首を掴むと、社の中に引き釣り込み、背中に腕を捻り押さえつけていた。

「おおっ。見事」坊主の動きに康介が感嘆の声をあげる。

「おや?」坊主は妙な感覚に落ちる。「これは・・。」言葉をこぼして黙りこむ。

「康介どの灯りを」微かな明かりの中、康介の目にも場違いなものが見えていた。

康介がいろりの炭に息をかけ、少しだけ勢いのます炎が照らし出したのは、坊主に押さえ込まれて震える若い娘だった。


   4

娘は坊主に押さえ込まれて灯りに照らされ震えている。
娘は坊主と康介の顔を見回し一息吐き出し、再び康介の姿に目を移す。


自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!