河童2

若者は怪我で熱を出し唸っていても腹がへる。坊主は社の中央にある囲炉裏で粥を煮ていた。『さあ、雑草ばかりだが、なかなか贅沢だぞ。社に囲炉裏があるのは助かった。』

勧められた粥を遠慮なく『う、うまい』慌てて口の中に流してゆく『熱い』

『慌てるな、全部食っても構わん』ゆっくり食べるように言う坊主に『助かります』

それでもガツガツと苦しそうに口に運んでいた。それは怪我で痛いのか、腹が隙間だらけのせいなのか、どちらともとれる呻き声と勢いがあった。

若者は三杯めの粥をすすり終わり椀をおくと、苦しそうに息をしながら姿勢を正し、

『オホンッ。私は志を持ち、二十歳の決意で…。』

若者が言葉を選びつつ喋るその上に坊主が言葉をかぶせる。

『言わずともよい。どうせ関東方のどこそこの大将の首でも獲って侍になり、出世の道を当てにして田舎から出てきたんだろう。どうだ、間違ってはおらんだろう。できた仕事は道づくりに草刈りと逃げることぐらいだろう。』

若者が言いたいことを優しく坊主が代弁すると、若者は全て見透かされているとばかりに、下を向き口ごもる。

しばらくの沈黙のあと、思い出したかのように『名は』と坊主が訪ねた。

若者もまた、助けてもらった上に礼儀を忘れていたのを思い出し、改めて姿勢を正して坊主に向き直り。

『これは、助けてもらいながら気のゆるみから失礼しました。申し遅れました。私の生まれは・・・・。』

若者は自分の生い立ちと家系、名をつげる。

『歳は二十歳名を康介と申します。』康介と名のる若者は自己の紹介が終わると旅の僧に名を訪ねた。

『うむ、儂は…次男として生まれ・・まあ、子細な聞かないでくれ。しかし、名に敵の総大将の名があるとは』

坊主が言い終わると康介と名のる若者も気にしているのか、『うむ・・・。』気まずそうに頷き下を向き、話をかえるべく、

『せめて名を、なんとお呼びすればよいかと。』

坊主はニヤリと笑みを浮かべて。

『うむ、まあ旅の僧、旅僧とでも今は呼んでくれ』

康介は頷き黙り込むと痛みに顔をゆがめている。痛みもあるが満腹もあり眠気が増す。坊主はそれに気づき、

『康介殿眠るが良い。わしも眠る』二人はその場に寝転がる

外はシトシト雨音がする。眠りゆく二人の耳に雨音とうるさくも心地よい蛙の鳴き声が聞こえてくる。幾度かの呼吸をしているうちにすべてが消えていった。


眠りについてどれ程の時間が過ぎたのか。

この辺りにも日本のどこそこと変わらず、山もあり川もありそして田畑もあるが、そのほとんどの土地が薄気味の悪い林と、このあたりの者たちが作ったであろう手入れの行き届いてない池とも沼とも言えないものばかりだった。

手入れが行き届いてないといっても、この辺りの人々が出来てないこともなく、戦のために手入れされていないだけの事であろう。

その証拠にあたりの畦道田畑は手が掛けられている様子、この社もなかなか村のハズレに有るにしては手入れもされている。

しかし、森や沼の荒れている影響で、ここも薄気味の悪さでは負けていなかった


自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!