河童13

払った刀が空を斬る音。刀の消えた先には、驚きのあまり瞬きせずに立ち尽くす年寄りと、驚きで自ら跳んで水溜まりに腰を抜かして座り込む、百姓の跡継ぎらしい若者が、驚き固まり震えていた。

「おっ」その言葉が出たあと何も言葉がでない坊主。
「なっ・・なっ」と言葉をつまらせ、
「なっ中へ、中にはいれ、さぁ、入れ」
坊主は刀を怪しむ年寄りに近づき、肩をグッと掴み、力任せに引き込んだ。
「そこの若いの」
坊主が外を見ながら叫ぶ。
「そこの水浴びしている若いの、すぐに立ち上がり中へ、さぁ、中へ。」

坊主は無意識に若者へと刀を向ける。
若者は坊主の剣幕と迫力に、腰を抜かしたまま動けなかった。

坊主は辺りに視線を走らせ、座り込み動かぬ若者に、より近づき、
「さあっ中へ、さぁっ」
動かぬ、いや、動けぬ若者の首もとをつかみ、社の中へ力の限りで放り投げた。
「あわわっ・・。」

若い男を放り込むと坊主はもう一度辺りを確認し、素早く社の中へもどる。
外をちらりと見ると引き戸を閉め、百姓らしき二人を睨み付けて、
「何をしていた」
激しく云う必要もないが、興奮は冷めず、脅すように聞く、
坊主のといに。
「あっ、ああ」
言葉にならない。
それもそうだろう。坊主は無意識に刀を二人の方に突き出しながら問うている。
「どうした、舌がないか」
「あっ、いや、かた・・・な」
百姓の恐怖の相手が、突きだす刀にあると坊主は気づかない。
康介が見かねて「刀を」と仁王立ちの坊主に声をかけるその時。康介の顔は驚きと恐怖にかわる。
引き戸が動く。
「あっ、戸が」
康介は言葉と同時に脇差しを素早く抜く。痛む身体をかばいながらなんとか構える。
それと同時に坊主の後ろの引き戸が、一気に開く。
康介の驚き、引き戸の開ききる音。
「油断したっ」
坊主が素早く踵をかえし、同時に刀を戸口へと払い構え、突き刺しにゆく。
「うっ、違う」
突き刺しにゆく刀の前には
「あうっ」
荷物を背負い驚きのけ反る、もう一人の男が立っていた。



自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!