クロウリーとアジラフェールは恋愛関係ではないと思う
!!!ネタバレ!!!
!!!幻覚!!!
!!!感想というか自分の話!!!
!!!製作陣の意図は分かりません!!!
!!!S2E6ラスト10分のあのシーン特化型感想!!!
!!!早くS3を配信してくれ…!!!
前置き
まず、書いた内容を理解してもらうために筆者について説明する。
私は自認としてはアセクシャル・アロマンティックだ。言葉の定義はなんかややこしいが、私は恋愛したいと思ったことがなく人に触るのも嫌い。
心理的な「恋愛に興味がない」の方は、色々ジェンダーフリーイベントに参加した結果、たぶんセクシャリティというより発達の問題で、コミュニケーションが得意でないためわざわざ深く他人と関わる気にならない、他者との距離を測るのが難しい、他人への興味が長続きしない、など恋愛以前の問題が多い。あとものすごく独占欲が強いので、自分と異なる思想を持つ全人類をあまり信用できない、親しい人が自分と異なる感覚を持つことを許せない、という調子なので他人をちゃんと受け入れるのが難しく親密になることができない。
肉体的な方も、心理的な他者への抵抗感の影響もあるが、なんとなく肉体そのものを気持ち悪いと思っていて、内臓とか体液とかねちゃねちゃしたものが不快なので、気色悪いからあまり触りたくないという感じ。
恋愛を理解できないと、フィクション作品でも恋愛パートがまるっと分からなくて見当違いの解釈をしていることがかなりある。今は多少分かるようになったけれど、子どもの頃は本を読んでも恋愛の部分が本気で分からなくて「なんとなくふわっと詩的なことが書いてある(?)」と思っていた。大人になってから読み直して「こんなに恋愛の話だったんだ……」とがっかりしたことが何度かある。今でも平均的読者が汲み取れる内容の何割を理解できているか分からない。
フィクションにおける肉体的な描写も嫌い。私は濡れ場やキスシーンが排泄やゲロと似たベクトルで気色悪いと感じる(あと食事も。他人と食事するのは平気だけど、映像作品の食事にフォーカスしたシーンが苦手)。というか「濡れ場ってストーリー進まんしいらねえだろ」と思っている。要る??????キスシーンも何のためにあるのがよく分からない。うちの実家の犬(故犬)だって人が見てるとうんこできなかったのに人間ならもっと慎みを持って欲しい。
でもまあ排泄も食事も不可抗力だし、つまりキスだってセックスだって不可抗力(…?)で、そんなに慎むもんでもないんだろうなとは思う。
個人的に恋愛は肉感のあるもので、だから私はそれに魅力を感じない。
恋愛はともかく、私は親愛については知っている、と思う。「唯一無二の存在」や「ブロマンス」にめちゃくちゃエモさを感じる。なぜなら前述の通り人と上手く関われないから、自分は絶対に手に入れられないと分かっているので、届かないものほど輝いて見えるんですね(?)。私が『RRR』の感想を45,000字書けたのは、あの作品が最強のエンタメ&深く文化的なだけでなく、ほぼ恋愛要素のない友情の物語だから。でも40,000字は長えよ。
例のシーン(S2E6 46:54〜)について
ここからがグッドオーメンズの話。
中学生か高校生の時に原作を読んで、その時は(中二病なので)どちらかというと聖書の内容を現代化してる部分にテンション爆上げだった。ドラマはニール・ゲイマンが関わっているのもありイメージ通りで、よりアジラフェールとクロウリーの友情(?)にフォーカスされている感じが更に良かった。シーズン2のアナウンスがあった時も本当に嬉しかった……。
で、急に色々すっ飛ばして例のキスシーンですよ。あれは人間の考えるような恋愛的なものじゃないと個人的には思う。
本来、あの世界では天使にも悪魔にも恋愛感情はないはず。ベルゼブブとガブリエルのことは置いておいて、アジラフェールとクロウリーはずっと人間たちを見てきて、人間の習慣も大体のところは知っている。二人がお互いに抱いている感情はまだ人間が定義していない種類のものかもしれない。とりあえず「愛情」と呼ぶしかない。
アジラフェールは「良い」天使で、個人的に「良い」とはかなりエゴイスティックなものだと思う。主語から見て「良い」であって、全員から見て「良い」ものなんてない。まあそういう話ではなく宗教・神が関わってくるのだが、それはつまり神が主語の「良い」で、現代向きではない。だからクロウリーは普遍的な「善」に背を向けることになったのかな。彼は理論的で現実的だから。現実的というか「実際的」か……?
二人の抱く「愛情」もそれぞれの性質に倣っている。アジラフェールは「良い」天使だから一人の不幸も見逃せない、彼は全員にとっての「良い」の中でクロウリーとの「愛情」を続けたい。それに二人の関係を後ろ指差されるものでなくしたかったのか、彼は「良い」存在だから。
あとアジラフェールもクロウリーのこと my angel って呼びたいんだよね……でもクロウリーは my damon で十分なんだよ……(幻覚です)。アジラフェールの "Crowley, come back…… to HEAVEN! Work with me! " はきっと “Come back to ME! " って言いたかったんだろうな……。
(追記:ニルゲ先生が「アジラフェールはクロウリーのためなら世界を作り変える」というポストにいいねしていたが、アジは「良い」の定義をも変えようとしてるんか…?
あとシーンさんが「アジはクロを愛していることを悟られないようにしている」と言っていたので、それは恐らくアジが天使は悪いものを愛すべきでないと考えているためで、クロが天使に戻れば堂々と好きでいられるということでもあるのかな)
クロウリーはもっと現実的で全員にとっての「良い」なんてないと思っている。だから自分と大事なもの、「愛情」の対象にとっての主観的な最善を選ぼうとする。その辺は6,000年なあなあにされてきたが、はっきりさせようとして離別することになった。これまでたいていの衝突があってもクロウリーが折れてきたのだと思うが、アジラフェールの願いでも自分の本質的な部分は変えることを承認しなかった。自分についてだけじゃなくて、原作によると「クロウリーは人間が好き」とあるので、彼はアジラフェールの天使な部分(をアジが大事にしているところ)も好きかもしれないけれど、泥臭いというか人間めいたところが好きで、アジがその部分を捨てられるとは思いたくなかったのかもしれない。だからあの後も車の前で待ってた……。
たぶんアジラフェールはクロウリーに何千年も「お前は天使だ、お前が悪いことなんてするはずない」と言われ続けて自分の正しさを過信してるのでは…?まあ嘘ついただけで「堕天しちゃった…」とめちゃくちゃ凹んでる姿を見たら「大丈夫やで!」と言い続けるほかないよな…。
二人がお互いに抱いているのは「愛情」であると思うが、肉体を持たない彼らが抱くのは恋愛感情ではないと思う。家族愛的なものでもない。彼らがお互いを快く思っているのは付き合いが長いからではなく、快く思っているから長い付き合いになっているはず。だから結局友情、ブロマンスと呼ぶほかない。
じゃああのキスはなんだったのか。
彼らは人間の行動や本などの作品から、それが一種の特別な、最上級の行為だと分かっていると思う。もちろん天使や悪魔にとっては何の意味もない行為。
彼ら自身も自分たちを繋ぐものが、人間の言うところの何なのかは分からなかったんじゃないかな。天国にも地獄にもそれを表す言葉はない、たぶん神の計画にはないものなのかも。でも、地球で長らく過ごして「人間じみた」彼ら(もといクロウリー)が、言葉で言い表せない最大の「愛情」を示す手段がそれしかなかった、ということではないか。
これは「雨に濡れて見つめ合ったら恋に落ちる」と同じくらい荒唐無稽で、でも彼らにとってはふさわしい行為だったんじゃないかな、と思う。肉体的な接触の必要がない悪魔が、それでもやったということにあのキスの意味があったのだと思う、恋愛的な話ではなく……それに意味があるのは「共に長らく人間と過ごしてきた」という前提があり……(まとまらない)。
しかし天使(と悪魔)は涙を流せないが故に余計につらい場面だった……。愛はエゴだからお互いのエゴをぶつけたら離別するしかないのか……。
あの場面を見たら自称アセクシャルの私も筆舌に尽くしがたい鳴き声しか上げられなくなって何回も見直している。キスとゲロを同じベクトルでキモいと思っている私が、信じられないくらいあの場面をリピートしている。恋愛シーンでこんなにリピートしたのは『ストーリーオブマイライフ わたしの若草物語』でジョーがローリーを振る場面くらいだよ…(あれはとてもアセクシャル的なシーンなのですごく刺さった)。
少なくともあれは私にとって恋愛のシーンじゃなくて親愛のシーンだった。というか、もしかすると自分の中で愛情表現というか恋愛表現の理解が一歩進んだのかもしれない。分からん。もう少し落ち着いてから考え直して加筆するかも。
あと、S2全体的に「クイアすぎる」と感じる人もいそうだけど、世の中には「ストレートすぎる」作品が大量にあるから別に良いのではないかと思う。
【追記8/9】
エゴサ中に「途中でアジラフェールが応じてる」という幻覚を読んだので見直したら「ま、まじだ……!」ってなった。そしてアジの開口一言目の " I L …… I forgive you. " で死ぬ……。
あとメタトロンってあの口ぶりだと絶対にクロウリーの堕天に関わってるよな……アジに何か盛った説が流れているが、個人的に「君を許す」発言などはアジの自発的なものだと思う……ただメタトロンが来るタイミングと提案が巧妙すぎた……。
しかし色んなオタクの幻覚を読んでいると、つくづく自分が認識している感情のバリエーションの少なさを感じる……が、私が愛について理解できていたら今現在の阿鼻叫喚はこの程度では済まされなかったと思う。
はやくS3をくれ……あと日本でも特典を見せてくれ……。
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