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RRRによって生まれた狂人による幻覚【転載】


「配信したら観よう」とか思ってる奴ら全員ロンギポー


ガンギマッた狂人(15R目)による、 細かすぎて伝わらないRRRの好きなシーン 全部乗せ。
全編のネタバレと若干真面目な話。
(※某サイトで2023年3月12日、9R目の頃に投稿したものの転載)


絶対に映画館で観ろ(ネタバレなし)


 このエッセイタイトルにちょっと語弊がある。私はそもそもLotR3部作を年に3回くらい見る生活を10年していた(去年IMAXリバイバル上映があり「なんかもうええわ」と満足した)、根っからの狂人だった。なお、映画館には多くて月に12回くらい行く。一番好きな映画はイングマール・ベルイマンの『野いちご』。映画館で観た一番長い映画はタル・ベーラの『サタンタンゴ』(7時間18分)。インド映画は『きっとうまくいく』『バジュランギおじさんと小さな迷子』『バーフバリ』『パドマーワト』『マガディーラ』『バルフィ!』ほか数作しか観たことがない。ハマった映画の俳優やスタッフのSNSストーキングが趣味。

 RRRは熱い男たちが筋肉とブロマンスと画圧で殴ってくる最強のエンターテイメントである。
 体感的に、私がどれだけ騒いでもさして周囲でRRRを観に行った人間は増えていないので、たぶん私のようにリピートしまくっている狂人が多いのだと思う。私はまだ9R目(執筆時点)だけど知り合いは17Rくらいしているし、Twitterには30R以上観ている狂人も結構いる。でも100時間以上費やすなんて正直オタクには屁でもないだろう。

 上映開始から四ヶ月以上経っている(そして私は四ヶ月以上生活に支障をきたしている)が、グラミー賞も取ったしアカデミー賞もノミネート中なのであと一ヵ月くらいは上映してるはず。とにかく映画館に行け。
 「配信始まったら観よう」とか思ってる奴らは全員ロンギポー!!!!愚か者!!!!なぜなら通常スクリーンどころかIMAXでないと見えない涙やウィンクやペンキや赤土やシバかれる籠があるからです。というかあのエネルギーをダイレクトに浴びるのに2000円なんて実質無料。私はまだ観てないけどDolby Digitalはかなり音が良くて風の音もはっきりと聴こえるそうなので音響重視ならこちらでも良いのかも。あと暗い場面も綺麗。
(追記:Dolbyで観た。「スクリーンちっさ」というのが第一の感想で、映像はかなりクリアで音も良いが、サントラがでかすぎて声が小さく聞こえる、あと真ん中の方でないと音をちゃんと浴びられない、個人的にIMAX一択)。
 追記:見納めとしてグラシネ池袋で観た。通常IMAX以上に縦幅があるからより画面が広い……これで観たら他で満足できなさそうだ……。(※結局見納めてない)
 追記:応援上映、絶っっ対に合わないと思いつつ「やってるならとりあえず行ってみないと(?)」という野次馬根性で参戦。これはかなり客ガチャがあると思うが私が行った会は割と大人しかったかな。まあどの回にも映画と会話する人間は居ると思うので、祭りが好きな人、多少の無礼講は許容できる人向け、あと友だち一緒の方が楽しいと思う。なお私は他人の存在に疲れてしまい途中で抜けた。

 「3時間長い」と思ってる奴ら、実質2秒で終わるし、終わった頃には「あのDostiのシーンだけで6時間欲しい」って思ってます。私は膀胱が強いのでトイレ事情はあんまり分からないけど、全部クライマックスだし、どうせ何度も観に行くことになるので途中で抜けても割と大丈夫だと思う。
 なお、『ララランド』のディミアン・チャゼル監督の新作『バビロン』の方が長いです。あとアバターも同じくらいある。尻込みする必要はない。

 とりあえずRRRを観るにあたり、別に何も知っておく必要はないが、多少知ってると楽しいよということを書いておく。

 これはいわゆるヒンディ語、北インドのボリウッド映画ではなく、南インドのテルグ語圏のトリウッド映画であるが、監督いわく「ボリウッドもトリウッドもハリウッドも関係なく映画は素晴らしい(うろ覚え)」とのことなので気にしなくていい。ただ、テルグ語の作品であることに監督や主演のNTR Jr. とラーム・チャランは誇りを抱いているな、というのを感じるので、他の文化との垣根を超えつつ自分の文化を大事にすることは大事だなと思う。かなりナショナリズム色の濃い作品ではあるが、それは別に悪いことじゃない。
 主人公の二人は史実の活動家がモデルとなっている。

 インド古典文学『ラーマーヤナ』『マハーバーラタ』を軽く知っておくと良い。『ラーマーヤナ』のラーマはパワーというよりかなり苦悩するタイプの英雄で、理不尽な目に遭っても争いを避けようとするような描かれ方をしている。三人の弟のうちラクシュマナに特に懐かれており(全員慕っているが)、妻となる姫の名前がシータ。そして猿の姿の神(風属性)ハヌマーンにも慕われている。『マハーバーラタ』には五人の王子が登場し、その中の一人がビーマ、とにかく強い大食漢(ごめん私マハーバーラタはちゃんと読んでない…… が、特にバガヴァットギーターのあたりを押さえておくとエモい)。ビーマの父親は風の神ヴァーユ(ハヌマーンもそう)。あとビーマの弟のアルジュナは弓の名手。こうして見ると、インドって昔からブロマンスがアツい文化なのね。
 ビーマ⇆ビーム、ラーマ⇆ラーム、は方言や言語の問題なので同じ名前。
 あと水泳帽みたいなやつはムスリムがかぶるものとか、「アンナ (anna) 」が「兄」、「タンムドゥ(Tam'muḍu タンムルゥに近く聞こえる)」は「弟」という意味とかを知っておくとエモさが増すが、とりあえず1R目は純粋にエネルギーを浴びにいって欲しい。どうせ何回も観に行くことになるので。というのも、10分に一回クライマックスがあるので、一つのクライマックスの余韻に浸っているうちに次のクライマックスが来るという具合で、すべてを存分に味わうには心の準備が必要だからです。

 「インド人の見分けがつかん」という人のために主人公二人の見分け方を説明する。
 一人目、シュッとしてて美人でまつ毛が五メートルあるのがラーマ。彼は制服も2種類着こなし私服もあり神化したりと結構コスチュームのバリエーションも多いが、とにかくまつ毛が激しい人と覚えておけば大丈夫です。目の表現が美しすぎる。彼を見てまつ毛美容液のランクを上げた女は多いはず。でもきっと日本人の毛穴の数じゃ無理。
 二人目、比較的がっしりしていて天パでかわいいのがビーム。「髭のおっさんがかわいいとか笑」とバカにする輩は私がトンギトンギにしてやる。ともかく基本的にムスリムの格好か青っぽいゴーンドの衣装を着ているので分かりやすいはず(ムスリムの衣装が分からない?がんばれ)。あと表情の触れ幅がすごい。

 監督は『バーフバリ』のS. S. ラージャマウリgaru 。これで49歳というから若え!と思う。バーフバリを観てなくてもヤシの木ロケットの場面を観たことある人はいるかもしれない。観てないなら観ろ。

 正直かなりガバガバなとこあるし小物が安定してなかったりするけど、圧倒的エモさと面白さで殴ってくるので雑なとこすら楽しめる。
 なんならタイトルが一番雑まである。まだこの映画が企画段階だった頃、監督はマルチヒーローを撮ることくらいしか決めていなかったが、キャスティングはNTR Jr. とラーム・チャランにオファーしていたので、自分たちのイニシャルのRをとって #RRR (この時点での呼び名はトリプルアール)とコードネームのように呼んでいたらしい。で、それがそのままタイトルになってサブタイトル的に Roar とか Revolt とか付けた、という感じらしい(うろ覚え)。なんかの番組で「 #MyNextMovie とかにしてなくてよかったですね笑」と言われてた。一番雑とか言ったけどRRRはこの三人のパワーで作られているので最強のタイトルなのかもしれない。なんにせよRRRは最高。全員IMAXで観ろ。

この先は細かすぎて伝わらないRRRの好きなシーン全部乗せとなっているが、数ヶ月に及ぶ感想エゴ(のための)サーチにより、めちゃくちゃ共感した他の狂人たちの感想や幻覚がかなり盛り込まれている。狂人に会うために応援上映行こうかな。




DVVからタイトルコールまで(ネタバレ)


 ここからネタバレ。正直私はネタバレが嫌な理由がまったく分からないのであるが、RRRに関しては狂人の妄言を聞いても実際の映像をイメージするのは不可能だと思う。ネタバレ踏んだと思って萎えててもぜんぜん違う映像が出てくるから気にしないでほしい。

 まず、リピートしてると本編始まる前のDVVエンターテイメントのロゴと「ジャヤジャヤ!」というBGMだけでテンションが上がる。めっちゃ格好良い。
 そこからインド声楽!って感じのボイパが始まる。私はちょっとだけ北インドのシタールを触ってちょっだけインド古典音楽について調べたことがあるが、音に対する解像度がすごい。いわゆるドレミに名前と色と動物が当てられていて、北インド音楽のラーガは「色」を意味する。これ共感覚のある人間からするとかなり感動するんですよね。そして主要音ヴァーディは「話すもの」を意味する。詩的すぎないか……?
 インド古典音楽では、楽器奏者も歌から始めるのだが、人間の声が楽器だということがよく分かるイントロになっている(無理やり話を戻す)。ニザリザー。
 
 
 さて、やっとSTORRRYに入る。マ゛ッ゛リ゛!!!(伝われ)
 ゴーンド族が暮らす南インドの森で、部族の少女マッリがイギリス人総督夫人の手ににヘナアートと思しきものを描いている場面から物語は始まる。何回も見ずとも「完全に絵をなぞってるだけやんけ(描いてねえ)」というのがバッチリ映っているがそんなこたあどうでもいい。ちなみにこのシーンですでにビームと行動を共にするジャングとラッチュの姿がある(ただでさえ見切れがちなペッダイヤ推しとしては、きっと彼はビームと狩りでもしてたのかな?それともイギリス人が乱獲するので気が立っている野生動物を宥めてたのか?などと妄想をする)。
 ここで悪党のドンであるスコット・バクストン総督がえぐい量の鹿を仕留めて現れるのだが、更に鬼畜なその夫人キャサリンが「暖炉の上に飾りたい♡」と二束三文でマッリを拉致る。ここの総督夫婦の首傾げはとてもチャーミングです。
 この映画には色々と誤解を招く表現があるが、その中の一つは「ゴーンド族は最強」というものである。主にビームが虎とタイマンはったり噴水破壊したり牢をブチ壊したりするせいだ。しかし冒頭で娘を拉致され、裏道を使ったとはいえ車に追いついて体当たりで停めて無傷っぽいロキもなかなかである(追いつくまでに転けてそうな汚れがあるが)。エンドロールの某シーンには突っ込みが入るが、まあ最終的に「さすがゴーンドの女」で片付けられるようになる。ゴーンド族は最強。
 総督の「弾丸の価値を知っているか?」はもう狂人たち全員諳んじられると思う(ラストにちゃんとこの台詞に意味を持たせてて好き…)。からの容赦ない暴力。初見はかなりびびるが、回を重ねるごとに「でも相手はゴーンド族……」と思い始める(?)。
 車を追いかけてきた部族のみんなの中にラッチュがいない気がするんだけど、驚異の脚力で兄貴を呼びに行ったんだろうか……?

 さて、次はFIRRRE担当のラーマ登場。とにかくまつ毛が長い。そして美。さらにまつ毛。
 デリー郊外のイギリス軍の詰所っぽいとこの周りで暴徒化するインド人たち。その中の一人(ターバンの巻き方的にシク教徒、さり気なく色んな宗教の人が出てくるの好き)が、驚異の肩から繰り出した石が詰所に掛かってたジョージ五世の写真に当たる。テンション爆上げのインド人たち。ブチ切れたフィリップ・グリーン(イギリス軍のなんか偉めな人/割とモブ)は「あのBxxterdをここに連れて来い」と命じる。
 そこで颯爽と帽子を脱いでフェンスを乗り越えるのがラーマ。いちいちフォームが美しい。そしてラーマのテーマ音楽がべらぼうに格好良い。不穏だが信念を感じる(いち狂人の感想です)。キーラヴァーニ氏によると父親の言葉がマントラのようにラーマの中で繰り返され、それを隠すようにベースにチェロが入り、金管で表面上に見えるラーマの強さなどが表されているらしい。
 彼は丁寧な暴力で暴徒をシバいていく。普通のモブなら石で殴られただけで死ぬが、ラーマはラグ家の末裔なので持ち直す。この場面、4R目くらいから「彼はずっとこんな風に一つ一つの困難を丁寧に叩きのめして来たんだろうな…」ととてもエモい気持ちになる。なお、このシーンは実際に6,000人のエキストラが出演し、それをCGで2万に増やしているらしい。エキストラ6,000人……?
 守備よくシク教徒の兄ちゃんを上官の元に連れて来た後、注目!!!!!!ラーマは消化用バケツに入った水を自分の顔面にバシャア!とするのだが、その時にまつ毛の上に溜まった水の量がえぐい。なんというか、ラーマはとにかく目のクローズアップが多いので、ラージャマウリgaru もカメラさんも「ラーム・チャランのまつ毛を見守る会」であることは間違いない。美。
 再び列に並んで、フェンス越しに痛めつけられ支え合う群衆を眺めるラーマの心境よ……。
 色々あってラーマはSpecial officer になることを目指し、そのためなら本来なら同胞であるインド人にも容赦しない冷徹な男……として描かれる。だが、インド人である彼はそう簡単には昇進できず(それについて例のフィリップが上官に抗議してそうな場面がちっさく映っている)、八つ当たりしてサンドバッグを破壊する。あの後自分で掃除したのかヴェンカテスワルルおじさんが片付けてくれたのか……。ここで襷掛けしている紐は、彼のカーストが高いことを示しているらしい。

 次にWATERRR担当のビーム。オンレエエエエ!!!
 の、前に総督の屋敷で(総督は帰国中)代理のエドワードがニザーム藩顧問から「ゴーンド族のあの娘は返した方が良いですよ、やつらやばいんで」という忠告を受ける。どうも史実のビームはニザーム太守と敵対していた(うろ覚え)らしいので、エドワードが助言を受け入れたのはそういうことなのかなと思ったりする。あの「羊飼い」という言葉選びはキリスト教圏のイギリス人に分かりやすいような例えになっている、という考察があって面白かった(ただ、テルグ語原文では「守護者」みたいなニュアンスで「羊」とは言っていないらしい?)。
 あとエドワードは葉巻を吸っているが、あれって総督のでは?留守番中に親が隠した高え菓子を食う子ども的なやつ?


 場面が変わってゴーンドの森!ビームの登場!
 彼は最初、パンイチで獣の血を浴びている、その水面に映った鏡像として映されるのだが、もう画としてあまりにも格好良すぎる。その後ろ姿も最強なのだが、険しい表情で血を滴らせている(そして作中で唯一鼻ピを付けている場面でもある)このカットだけで、彼が人どころか神であるような演出となっている。この先もビームが水に映る場面があるが、これは神が宿る合図なのかな。
 とにかく中の人のタラクさんは演技の振れ幅が素晴らしすぎる。いや私は苦悩する人間が好きなのでラーマ派なのだが、ビームという揺るぎない信念のある繊細なキャラはタラクさんにしか演じられないと思う。そして顔のパーツが完璧すぎる。
 狼改め虎との追いかけっこ。この虎完全にCGなんだけど、ガチギレして「むうぅ」みたいな顔しててかわいい。そして罠にかかって暴れ回る虎、ロープを引くビームのバッキバキの肉体美。あのポーズなに??????このためのパンイチ?????
 ここでビームと行動を共にするのがペッダイヤ、ジャング、ラッチュ。眠り薬を仕込んでいるのがグレイヘアのペッダイヤ(これは名前ではなく長老?大伯父さん?的な呼び名らしいので(実際、ビームの名付け親という設定らしい)私は全力で彼の名前を公開してほしいと思っています→ネトフリのエンドロールによると Cheema チーマという名前らしい……!)、よくフレームアウトしている。「ペッダイヤ」というワードを覚えておくと、ビームが結構な頻度で彼を呼んでいることが分かりエモい。なおラーマもヴェンカテスワルルおじさんにしょっちゅう「おじさん(ババイ、親の未婚の兄弟?)」と呼びかけている。どこかにペッダイヤとババイがお互いの甥自慢してる幻覚を見ているオタクがいると思う(作中では最後しか顔合わせてなさそうだが)。
 ジャングとラッチュは割とぽよぽよした腹回りをしているが、マッリ奪還チームに選ばれたのは彼女の親族だからなのかな…?ジャングの刺青好き。
 このシーンで最初の「インドのつよい薬草」が登場する。虎が数秒で寝る煎じ薬があの距離にあって大丈夫なのか(「訳あってお前を利用した…」のとこ、ここで「タンムドゥ」と呼びかけている…!)、爪痕それで治るのか、などを気にしてはいけない。ビームはゴーンドの戦士。
 ビームはムスリムの一家(父、母、妹)のもとに身を潜め、表向きは息子アクタルとして生活している。よく見ると壁には息子らしき人物を含めた四人家族の写真があり、何らかの理由(もしかするとイギリス関係?)で亡くなっている?という考察がある(そういえば遊びに行ったラーマは写真を見て「アクタル…雰囲気変わったな…」って思わなかったのかな?)。
 公開前、キャラ紹介的な動画でビームがムスリムであるような描写があることに、ヒンドゥー教至上主義傾向が強まっている現代インドでかなり批判があったらしく、監督は「ムスリムのフリをするのは最大の隠れ蓑です」的な説明をしていたが、無神論を公言する彼は宗教的対立は単純に無意味だと思っているんじゃないかなあ。
 自動車修理工として働くビームはイギリス兵から理不尽な目に遭いつつもマッリ救出&助けてくれたムスリム一家のためにも耐え続ける(ビームがロバートに殴られた時後ろのモブがほっぺ押さえててちょっと笑う。あとロバートの彼女は夫人やジェニーと一緒にいたり地味に出番多い。)。
 チーム羊飼いはなかなかマッリの消息が掴めずにいる。ジャングを作業員として総督の屋敷に送り込もうとするも、ID不所持でシバかれる。そこに現れて止めに入るイギリス女性ジェニー。ビームは「優しそうな人だ」と彼女を(悪い言い方をすると)足がかりに屋敷に入れないかと考える。私は正直、ビームがジェニーを「善良な人、美しい」という以上に惹かれている、つまり恋愛感情を持っているのかいまいち判断がつかない。

 さて、ニザーム藩顧問の助言を受け、イギリス側ではゴーンド族の羊飼いを捕えよう会議が開かれる。「え…逮捕歴もない部族民を…?」とザワザワする軍人たちを前に、総督夫人が「捕まえた奴はSpecial officer に昇進」と宣言(そんな権限あるのか?)。そこで「生死を問いますか?」名乗りを上げるのがラーマ。フィリップ・HeScaresMeMore の進言により、ラーマの羊飼い狩が始まる。
 場面は変わり、ラーマの自宅(?)。場面の切り替わりでラーマが喋るのだが声が良すぎてびびる。ここでは制服ではなくスラックスにシャツ姿だが、中の人チャラン氏の私服と同じくらいシャツのボタンが仕事を放棄している。なぜあんなにもボタンを留められないのか?ここでスワルルに「ババイ」と呼びかけるのが聞ける。
 羊飼い捜索のため、反英分子の集会に行くラーマとスワルルおじさん。活動家の「革命歌を教える」という言葉には失望しているように見える。ラーマは「総督を暗殺した方が早い」と発言する炎上商法により注目を集め、まんまとチーム羊飼いのラッチュが引っかかる。この時のラッチュの爪についたペンキはたぶんIMAXでないと見えない。そしてラーマ初の「弟(タンムドゥ)」呼びの相手はラッチュという。まあ弟(ビーム)の弟(ラッチュ)は弟だもんな…?
 しかし検問で警官だとバレたことにより、ラッチュとラーマの追いかけっこ勃発、流石のラーマも最強ゴーンド族には追いつけずラッチュを見失う。
 ラッチュは橋の下で仲間と落ち合い、ジャングにしばかれそうになるもビームに止められる。ビームの包容力。魚釣り少年にもお駄賃あげるし。ペッダイヤの方が弱音を吐くが、数少ないペッダイヤの台詞なのでおっけ。
 橋の上では羊飼いの仲間を見失ってキレそうなラーマに、ちょっとバテつつ追いついたスワルルおじさんは慰めの言葉というか火に油を注ぐ言葉をかける。

 からの機関車爆発事故です。燃えながら落ちていく機関車の近くに魚釣りの少年!!少年の小舟割と水漏れしてんな!!!
 ビームはおそらく自分がお駄賃をあげたから!!という焦燥と根っからのヒーローなので助けに行こうとするが、周りの人々は諦めモード。この場面にいるグレイヘアのおじさんとか買い物中のお姉さんとかは某鞭打ちの場面とかにもいるので顔を覚えておくとエモさが増す。
 橋の上のラーマもどうにかして少年を救おうと手立てを考える。ていうかスワルルおじさんどこ行ったよ。スワルルおじさんとバンジーする世界線もちょっと気になる。
 そして橋の上のラーマと橋の下のビームがお互いに気づく(IMAXでも橋の上からなかなかビームを見つけられないのだが、ラーマの視力8くらいあるのかな)。この時点でDostiのテーマが流れている。バイクで橋の上に行くビーム。馬に乗ってロープをスタンバイしてよく分からないジェスチャーをするラーマ。何かを理解してロープを自分に結びつけるビーム。その結び方で大丈夫か!?
 正直ラーマが馬に乗る意味がよく分からないのだが、勢い的なこと?結構振り子の力いるもんな……まあ格好良いから気にしない。
 ここでビームの方に火の中に飛びこませることにめちゃくちゃ妄想が捗る狂人たちですが、子どもを託される→インド人としてのアイデンティティに目覚めるラーマと、インドの旗を渡される→文明に目覚めるビーム、とこの後の展開を予期させてとてもエモい。それぞれの背景がお互いの属性(火、水)なのも好き。
 少年キャッチ&リリースした後のラーマの「無事か……!?」みたいな目がめちゃくちゃ良い。そして炎の中から濡らした旗に包まれて戻ってくるビームもめちゃくちゃ良い。
 そしてがっしりとお互いの手を握り、テンション爆上げで叫ぶアクタルと思わず笑ってしまうラーマ。延々と冷徹なところを見せつけられてからのこの笑顔。絶対にこんなに笑ったの数年ぶりなんですよ(幻覚)。ここはラーマの本来の性質が見られてとてもエモい。火にビビりながら名乗るラーマと「アクターRRR!!!(偽名)」と勢いの良い巻き舌で答えるビーム。
 ここでタイトルロゴ!!!RRRの魂!!!なんか歌詞英語だけどええんか!!!?からのDostiシーンです。

 このぶら下がる場面、ビームの中の人NTR Jr. は高所恐怖症&水中撮影の経験がなくかなりハードだったそうだけど、撮影前に自らぶら下がって動作確認する監督を前に無理だとは言えなかったそうな。監督、虎の人形動かしたりリハーサルでマッリを演じたりかなり撮りたいビジョンがはっきりしてるんだな〜と感じた。だからこのクオリティなんだな……。



 

Dosti からNaatuまで(ネタバレ)


 頭からドスティまでて5,000字近く書いてて笑う。全シーン中途半端に書き起こしみたいになってるから観た人じゃないと伝わらないと思う。

 さて続いては、狂人が何度もYouTubeでリピートしたであろうDostiの場面、エモいサントラと共にラーマとビームが友情を深めていくシーンです。
 ドスティを鬼リピする前に見て欲しいのが “Bheem for Ramaraju” と “Ramaraju for Bheem” ですね。YouTubeにある。キャラクター紹介動画だけど本編に出てこない映像がかなりあり、円盤化の際にはカットシーン全部盛り込んだ9時間完全版を制作して欲しい。特にビームが波と対峙している場面(森の虎なのに海にいるってどういうことだろう……)に注目していただくと、ドスティで二人が線路を歩いている場面のビームの仕草が波の話をしているようにしか見えなくなる(という考察を読んでもうそうとしか思えない)。
 Dosti(友情)をBGMにやたらキャッキャしてる二人の友情ダイジェストが始まるが、地元ではどちらも頼られる立場だったから、対等に接することができる相手ができて嬉しかったんだろうな〜と狂人は考察する。
 2ケツでバイクに乗ってる場面といいラーマの人参といい魚が貰ったやつと明らかに違うとこといい、ドスティシーンのエモいところは全てだが、幾つか具体的に書かずにはいられない。アクタル(ビーム)はラーマ(とスワルルおじさん)にムスリムの家族を紹介し、一緒にマンディ(ビリヤニ的なもの)を食べる。アクタルは左手でチャパティを掴んでお母さんに叱られる。ラーマはやけに切なげな目でそれを眺め、問いただされて「昔を思い出しただけ」と答える。目の表現〜!!!!まつ毛〜!!!!あとビームはデリー在住のムスリムのふりをしているので「兄貴(アンナ)」ではなく「兄貴(バイヤ)」と呼びかけている。この二つのワードを聞き取れると後々エモい。
 ラーマの恋人の名前がシータだと知りビームが「ラーマとシータか!」と言う場面、文盲であろうビームが『ラーマヤナ』を知っている、口伝文化の強さを感じる。
 忘れてはならないのがラーマの懸垂とビームの肩車スクワット。これがこんなにエモい伏線だとは誰も思わねえよ……。
 あとは肉塊を運ぶアクタルを揶揄しつつ甥っ子がニコニコなのを嬉しそうに眺めるスワルルおじさんや、日記を書きながら寝落ちしたラーマに扇風機を当ててあげるビーム(ここで彼が文盲であることが分かるのすごく好き)、柵から逃げ出した山羊を戻そうとするお人好しアクタルと「やめとけよ」みたいなジェスチャーのラーマ(そして案の定泥棒と勘違いされて逃げる)、子どもたちとの綱引きで余裕で勝利するアクタル、恋バナにキャッキャするアクタルなどが見られる。あとビームは屋敷にいるジェニーを見つめているが、たぶんジェニーも彼に気づいていたのでは?と思っている。というか全体的にジェニーの出番はもっとあったのでは……?
 ドスティの中でも、捜査が進まず/マッリの手がかりが掴めず苛立ちを隠せない二人の姿が描かれていてとてもつらい。たぶんラーマはアクタルに「英国の犬」であることは知られたくないし、ビームもマッリのことは話せない。仲良くなればなるほどお互いの任務が達成されたら友情に終わりが来ることが分かっていただろうなあ……エモいなあ……。

 ドスティが終わったと思ったら若干雲行きが怪しくなる。ラッチュの似顔絵を持って聞き込みをしていたラーマは、アクタルに「俺に見せてみなよ、知ってるかも」と言われて紙を見せようとする(ラーマがここまでアクタルを頼らなかったのは、四年に及ぶ潜入捜査で、というか村にいた頃から人に頼るということができなかったからでは?)。が、運良く風が吹いて似顔絵は水溜りに落ちる。ビームの周りで何かが起こる時は風が舞う、名前の由来のビーマがヴァーユの息子だからか。こういう神話とストーリーをリンクさせるの好き。
 落ちた絵は別に顔が見えないほど汚れてはいなかったが、ラーマがアクタルのところに戻ると、ちょうど屋敷から車で出てきたジェニーに目を奪われていることに気付く。そしていったん似顔絵をしまうのがラーマという男、自分のことは後回し!!!!
 ここでビームは「すげえ美人だ」って言うけどやっぱり私はこれが恋愛的な感じなのか分からない。中の人NTR Jr. が「ゴーンド族は素朴で動物に近い、都会に出て文明を知り人間になった」みたいなことを言っていたが、ジェニーに対しても(兄弟と呼びかけた)虎に対するのと同じような感覚でいるのでは?という気がする。
 さて、この場面でラーマ→アクタルの「タンムドゥ(弟よ)」が聞けるのであるが、ラーマは完全にアクタルがジェニーに惹かれていると思っているので恋路を応援しようとウキウキとそのへんに置いてある釘を手にする。そしてバイクで2ケツしつつ、車を走らせるジェニーを追い越させ、その釘をシャラシャラ〜と道路に落とす。最高に楽しそうなツラしてやがる。そしてバイクを止めさせ、自分はワクワクとベンチに座り、何にも分かってないアクタルに「まあ見てろって」とウィンク。このウィンクのためにIMAXで観ろ。
 車がパンクすると「え!なんで止まったの!?」とびっくりし「釘を撒いた」と聞いて「そんな悪知恵が」とさすが兄貴モードになるアクタル、やっぱりタラクさんの演技力すごい。そして「修理してあげたら話が弾むかも!」とウキウキする弟と「こいつまじか」という顔をする兄貴。ラーマは故郷に許嫁がいるのにどこでこんなナンパ術を覚えたんや。
 パンクした車から降りたジェニーは真っ先にアクタルに話しかける。やっぱり彼女は屋敷から彼を見て知っていたと思う……。ラーマが通訳してもちゃんとアクタルの方を見てるし。ここからさらに兄貴の悪知恵が発揮されるのであるが、嘘翻訳とインド式首振りという言語とジェスチャー二重のすれ違いが面白い。ニコニコを崩さずに「首を横に振れ」など指示するラーマと、何も分かってないのに「イェス!」と繰り返すアクタルが良すぎる。今度はジェニー(マーケットに行きたい)と2ケツしてバイクを走らせるビームの「マーケッ…?っあー!」みたいなのも好き。そして笑顔で見送るラーマ。良い。

 
 市場のくだりはまずお互いの名前を知るとこが面白い。テルグ語で「名前」は pēru だが、通じなかったのでおそらくヒンディの naam と言って「name ね!」と見事通じる!印欧語!!!(あと「すごく大きい cāla peddadi 」のペッダはペッダイヤのペッダなのだろうか)。そういえばビームって名乗ったっけ?マダムハヤメテジェニーヨは確かに長いけどNTR Jr. の本名ナンダムーリ・タラーカ・ラーマ・ラオ・ジュニアもまあまあ長いよね。なお、創造神のフルネームはコドゥリ・スリサイラ・スリ・ラージャマウリです。ついでにチャラン氏はコニデラ・ラーム・チャラン・テージャ(たぶん)。私が『ラーマーヤナ』を読んだきっかけってキャラクターの名前がとても美しいからなんですが、リアルインド人の名前もなかなか覚えがいがある(しかし名前かぶり多い)。

 そしてジェニーの口からマッリの名前が!!ここのビームの表情よ。何がすごいって、ここでビームは一切喋らないんですよ……ただエモいサントラが流れているだけ、表情だけの演技なんですよ…ほんとタラクさんすごい……ここのためだけに観に行っても良いくらい素晴らしい。言葉が通じたところで事情を話すわけにもいかないビームはマッリだけに分かるサインとして、ゴーンド族の紋様入りのバングルをジェニーに託す。ビームって自称無知だけど賢いよな???
 別れ際にジェニーが招待状を渡すのも準備が良すぎるので、やっぱり彼女のシーンってもっとあったんだと思うな……。屋敷にいるといつもこちらを見上げている神秘的なインド人……自分の方を見ている気がするけれど、現地人と話すなんて周りから良い顔はされないし、どうにか理由を作れないかしら……という具合に名も知らぬ男が気になって夜も眠れなかったに違いない(幻覚)。だから車がパンクしてもアクタルを見つけて割とニコニコで話しかけたんだと思う(?)。

 (オタクの推測によると)次の日、アクタルは意気揚々とラーマの家に行って台所に直行、勝手に飯を食いながらことの次第(マッリ除く)を語る。この描写だけでめちゃくちゃ仲良しなのが分かる。ここでラーマがジェニーについて「君の魂、愛しい人……」などのどこで覚えた?みたいな甘い表現を連発するがアクタルは「変なこと言わないでくれよ」みたいな感じでやっぱり恋愛的じゃなさそうに見える、人として好きだとは思うが(ビームは本能的に善い人を見分けられそうだし)。ラーマの「嫌いなやつと2ケツはしない」という畳みかけに、Dosti履修済みの我々狂人は「そうですね」としか思えない。そしてマダムハヤメテジェニーヨにラーマ爆笑!!!笑顔!!!!美!!!ここのアクタルのドヤ顔も好き!!!訂正されたアクタルの感想が「短いな」なのも好き。
 弟がパーティに誘われて驚きつつ「ついてきてくれよ……」と言われて笑顔でサレー!しちゃうのも兄貴。そして冒頭からは想像できない仔犬ちゃんみたいな瞳で身支度を整えられるアクタル。マジでタラクさんすごい。

 さて、10分に1回ある見せ場の一つ、ダンスパーティ。ロケ地はウクライナのキーウというから、この場面の意味を考えてもとても象徴的である。
 ソワソワとアクタルを待つジェニーの側にいるのはジェイク、ええとこのボンボンである(幻覚込み)。ダンスには自信があるだけでなく周りからも上手いという評価を得ている(敵役のスキルを高くすることで後の展開への効果が高くなってて好き)。ジェイクはナンパしようと思ってたジェニーがウキウキと知らんインド人の方に行ってしまいめちゃくちゃおもんなくなる。ここでラーマにリリースされるアクタルの「兄貴!?」がめちゃくちゃ良い。というかタラクさんはずっと良い(?)。ラーマはラーマで使用人に羊飼いやラッチュが混ざっていないかと目を光らせる。
 おもんなくなったボンボン・ジェイクは楽しく社交ダンスをしているアクタルを転ばせて「ノロマにダンスはできない笑」と馬鹿にする。ガタイの良い取り巻きにジェニーをブロックさせる念の入れよう。ここでタンゴやらスイングやらのステップを見せつけるが、観客は「なんやお前」以外の感情がなくなる(個人の感想)。アクタルは自分がシバかれることに対する忍耐力が強いのと、言葉が分からず状況を読めずにいる(急に知らんダンスを踊られたらそうなる)。ここの見上げてるタラクさんの横顔が良い。
 ここでラーマ兄貴のお盆ドラム!!!!どうしてもドンドコドンドンと書きたくなるが、エゴサで見つけたRioさんのツイート(noteにもまとめられていた!  https://note.com/ryuon00/n/n03bed86bb819  )によると「ドット ドトン ドン」なんだそうだ。とにかくアガるリズムであることは間違いない。ここでお盆を蹴り上げて黒人ドラマーからスティックを受け取るのであるが(ここで黒人を使うのはちょっと分かりやすすぎる演出にも思うが、被支配層の人でないとスティック投げてくれないよな)、ドラムを打つ姿勢の格好良さ。困惑していたビームが自信を取り戻す。スティックを黒人ドラマーに託し、颯爽と近づいてくる兄貴。ここで英国レディたちはラーマの女になったんだと思いますね。絶対そう。あと立ち上がったビームのターンの格好良さ。ちょっと中の人出てる。

 からの ”””DO YOU KNOW “NAATU?””” ですよ。ここから1分弱は公開半年前くらいから知ってて、それで絶対観に行きたいと思った。この場面、インド映画あるあるなダンスシーンであり、同時にそうではないといち狂人は思っている。私はそもそもインド映画の一見唐突なダンスもミュージカル映画も特に抵抗はないんだけど、それが苦手な層にも受け入れられるようなすごい導入だと思う。そしてこの Naatu (エスニックという意味とキーラヴァーニ氏が言っていた)、ラージャマウリ監督は歌詞担当の人に「誰かを貶めるような内容にはしないで欲しい」と伝えていたそうな(たぶんナートゥについての話だったと思うが歌曲全体についてだったかも)。「ナートゥで言及されるのはヒンドゥー教や仏教以前の土着の神」という指摘を見て&現在のインドの状況で「誰かを貶める」の意味に色々と思いを馳せてしまった……。
 抵抗はなくてもインド映画のダンスってなんとなくよく分かっていなかったのだけれど、これを、このストーリーの流れで観て、インドの文化において踊りというものがどれほど重要か「「「解って」」」しまった。思い出さなければならないのは、インドで最も有名な神の一柱は「踊る」という枕詞を持っていること。踊り、そして歌というものはシンプルな感情を表現するだけでなく雄弁に語る言語の一つであり、肉体であり精神的儀式であり、かつ完璧なエンターテイメントなのだ(個人の感想です)。文化と血と祈りとエモーション、踊りや歌がなければ芸術でもエンターテイメントでもない……。
(追記:RRRにしても正統派(?)ハートフルストーリーな『バジュランギおじさん』や『きっと、うまくいく』にしても、抱いているテーマは重い(独立運動、宗教紛争や学力至上主義など)のだから、そういうものも歌や踊りで表現すのがインドという文化、神を讃えたり喜びを表すだけでなく、つらさも苦しさも虚しさも歌や踊りで昇華して乗り越えよう、という強さだ、というのが感覚的に分かった)。

 ナートゥは踊りそのものも粗野で力強く(そして真似したくなるようなシンプルな振り付けにしたと振付師のラクシートさん)(そして全然真似できない)歌詞も最高でしかない。日本語字幕がかなり優秀なのではないか(テルグ語分からんので正確なことは言えないが、翻訳家の方のインタビューはとても好感が持てた)。
 タラクさんとチャラン氏の踊り方は揃っているけど個性があって好き。タラクさんはとにかく体幹がやばい、なんとなくダンス経験者は彼の方を好みそうな気がする。役作りでかなり筋肉量を増やしていたのになんであそこまで脚が上がるんだ。チャラン氏は軽やかでキレがある。美。
 蛇足だが、YouTubeに ”Dosti Of Ram & Bheem Video SongsJukebox Ram Charan & Jr. NTR Telugu Best Songs | Telugu Hits” というタラクさんとチャラン氏の他の映画のダンスシーン詰め合わせ動画がある。本当に格好良すぎで飛ぶし、この動画に収録されているダンスの元映画が一切日本で観られないことに発狂する。そして「RRRダンスシーン少なすぎ!!!!」みたいな気持ちになる。

 話を戻して。
 ダンスそのものはもう「「「大画面で観ろ」」」としか言えないので、細かくて(狂人にしか)伝わらない話をする。ジェイクはダンスマスターのボンボンなのでダンスで煽られたら応戦せずにはいられない。たぶん友だちになったら良い奴なんだと思う。ちゃんと「ナートゥってなに?」って聞いてくれたし。ラーマがジェイクを延々煽りまくってるのがめちゃくちゃ良い。終盤までレディが結構残ってるのも推せる。リピートしまくってるとレディたちのドレスを見る余裕が出てきて、一つ一つの美しさと、あれほど激しく踊っても乱れないのがすごい…となる。衣装さんに賞をあげたい。
 ラーマ対アクタルになった後、兄貴がアクタル強火派のジェニーに気づいて(レディたちのラーマコールもものともせず)「いってー」みたいな小芝居と共に負けてあげるのも、アクタルが何事にも全力なのも両方推せる。ガッツポーズジェニーとガッカリするラーマの女たちも、地面に倒れて「なんなんあいつら…」ってなってるジェイクも、遠くの方でちゃんと演奏してる黒人ドラマーも推せる。推ししかいない。
(そういえばジェイクはサルサ踊ってないけどラーマが「サルサでもフラメンコでもない」って言うのは「西洋の踊りなど心得ているが?」というさり気ないアピールだったのだろうか。ジェイクが何を踊ったかあんまり覚えてなくて適当に言ったのでもめちゃくちゃ推せる)。

 まさかナートゥまでで10,000字以上になるとは……。アカデミー賞おめでとう!!(パフォーマンスは素敵だったけど、やっぱりナートゥには筋肉が要るんだなと改めて思った)。



マッリとの再会からINTERRRVALまで(ネタバレ)


 ナートゥダンスバトルが終わり、脚をいわしたアクタルはラーマ兄貴におんぶしてもらう。ここの二人の笑顔が良すぎて後の展開が辛すぎる……宝の日々……。あとラーマのめっちゃ盛れてる角度の顔に若干字幕かかってて嫌(しょうがない)。
 そこにジェニーが車でやってきて(ここで首飾りがマジックテープで留められているのがバッチリ映っていることに気づいてはいけない)アクタルをお屋敷へご招待!一気にソワソワするビーム。
 二人を見送ったラーマは、車の飾りのペンキを見てラッチュの爪についていたペンキ汚れを思い出す。ここ無理あるって!!!確かにIMAXなら該当シーンでペンキ付いてるの見えるけどさ!!!クローズアップのカットを入れられなかったかな!????ともあれ、ラーマはラッチュが塗装工であろうと推測し、スワルルおじさんと共に工場に行く。
 足の速さでは勝てないと分かって待ち伏せしてるラーマが策士すぎる。首尾よくラッチュを確保したラーマの顔……冒頭の群衆と戦ってる時のように無表情で、ナートゥとの落差がやばすぎる。美。

 ジェニーと屋敷に向かうビーム。門の二重扉などをチェック、入り口でロバート・バイクウゴカナイに難癖をつけられつつも侵入成功。
 ここからの一連のジェニー、絶対にアクタルのこと好きなんですよ、でもビームはずっと気もそぞろで言葉も通じない……ジェニーかわいそう……。
 そして聴こえてくるマッリの歌声……。はいタラクさんの無言の演技!!!!ここで「腹が減りました」なのもビームの良いところ(まあ実際兄貴の家からほぼ飯抜きでパーティ行ってナートゥしてたわけだもんな)。ちょうどマッリの歌詞も「おやつもあるよ」みたいなのが面白い。
 挟まれる総督夫人のお茶会(?)の場にインドの要人の妻みたいな着飾ったインド人がいることに色々な思いを馳せてしまう。
 屋敷を駆け回ってマッリが閉じ込められている部屋を見つける。鉄格子をパワーで破壊できないかチェックしててさすがビーム。母さんのところに帰りたいというマッリに歌いかけるビーム……本当にここも吹き替えなのか???インド映画の吹き替え事情がよく分からないけど、俳優によって吹き替え担当が決まってるのか、日本の声優みたいな感じなのか……?

 ムスリム一家の家に戻り、総督の屋敷を攻める(事実上、攻める)決意をするビーム。ここではペッダイヤもジャングもいるけど、普段は近寄らないようにしててラーマとは面識がなかったのだろうか。ここの toṃgi toṃgi, nakki nakki の直訳は「伏せて伏せて、隠れて隠れて」だそうだ。伏せて=乞う、という動きだから日本語訳が「許しを乞う」なのかな。音はめっちゃ強そう。ビームの「ラッチュはどこだ?」で切り替わる場面……。

 どこかの廃屋でラッチュをしばくラーマ。「兄貴は森を支配する虎だ」と決して口を割らないラッチュ(Jai Gond!!!!)。めった打ちにしているラーマの腕紐が切れて飛んでいく首飾り……。
 首飾りを見つめるラーマから故郷にいるシータに切り替わる。最初にシータを観た時「めっちゃ綺麗」と「この格好はぶりっ子すぎないか??」のせめぎ合いだったのだが、過去編との繋がりなのだろうか。ここで彼女の元にやって来る村人の中で「ラーマは俺たちのこと忘れたんじゃねえか?俺たちはともかくお前のことは?」と言うマニの兄貴やシータを気遣うじいさんなどが後の場面でも出てくる。2R以降は首飾りを見つめるシータが何を考えているか分かってとてもエモい。

 夜、廃屋に放置されたラッチュは負傷した手で毒蛇を捕まえる。さすがゴーンド族。
 戻ってきたラーマがラッチュの胸ぐらを掴むと、服の中から契り紐が現れ、それに気を取られた隙に毒蛇を投げるラッチュ。
 毒蛇に噛まれて「残り1時間の命だ、ゴーンドの秘薬でしか治せない(原語)」と言われたラーマの心境たるや。最初の行動がラッチュを逃すって……(語彙消失)縄を切るナイフを与えた後の微笑みは本来のラーマだよな……(ラッチュはびびってたけど)。ここからしばらくガンギマリした美しいラーマの目を見ることができます。

 シヴァ寺院で打ち合わせをするチーム羊飼い。ラッチュのことはとりあえず放置……?その背景にふらふらになったラーマ、でもビームは気づかない。通り過ぎるように思われたが、ラーマはその辺に落ちてた鍋をナートゥのリズムで叩く。そしてそれに気づくビームの表情……タラクさん!!!!最高です!!!!倒れているラーマを見つけて駆け寄るビームのスライディングの美しさよ。
 ここで Dosti を流すの、かなりしんどさを煽ってくる……Dosti期の終わり……。
 毒蛇の咬み傷と気づいて仲間に手際よく指示するビーム。可愛い弟を見慣れていたラーマはこの時点で「ん?」と思うかも。そのへんの草をむしるビーム。初見だとあまりにもそのへんの草すぎて突っ込みを入れてしまうが、実際インドには毒蛇が多いので解毒剤となる薬草を植えておくらしい。シヴァ寺院で祈りを捧げるビームを見て疑念が湧くラーマ。目が美しい(あとビームが寺院ではちゃんと靴を脱いでいるとこにぐっとくる)。
 毒が回っている兄貴に契り紐をかけようとするビームとそれを見て衝撃を受けるラーマ。目よ!!!!そしてビームが圧倒的善すぎてつらくなってくる。毒が回っていてもラーマは任務遂行のためにビームに手を伸ばすが、ビームはそれに気づかない……。
 ラーマを部屋に寝かせ「峠は越えた」(ゴーンドの医術つよ)「俺は野暮用だ」と立ち去ろうとするビーム。ガンギマった目でビームを捕まえようとするラーマ(この時点ではまだ問いただそうとしてるだけなのかな?)。目が美しい。ここでラーマが一言も喋れないのがまた……たぶん毒が回って物理的に喋れなかったと言うより、父からの呪いを遂行しようとする肉体に心がついていっていなかったのでは……これほど親しくなった男をイギリスに差し出さなければならない……(追記:ここ、もしかしてアクタルを捕まえたくないから「行かないでくれ……お前を捕まえたくない……」という感情だったのか……?)
 カーテン越しの「バイヤ(兄貴)」からカーテンがなくなって「アンナ(兄貴)……」と呼びかける演出に痺れる、本当にタラクさんの演技が素晴らしい、何度でも言う。呼びかけと共に、ラーマのテーマ、父との誓い(呪い)の音楽がそっと始まるのが好き。「俺はアクタルでもムスリムでもない。ゴーンド族のビームだ」と誇りに満ちたビームとそれを聞いてどん底に突き落とされるラーマ。私はしんどい展開が大好きなのでここのシーンだけでも五億回見られます。さらに「兄貴との日々は俺の宝だ」なんて言われたら精神崩壊もの。ビームの考え方はシンプルで、自分の信念に迷いがなく、それがラーマには眩しく映りそう……。
 ビームがラーマに事情を話さなかったのは彼を危険にさらさないためだが、ラーマがビームに自分の状況を話さなかったのは「英国の犬」と蔑まれて離れられるのが怖かった&もし受け入れてくれたらビームを巻き込んでしまい、父親のように自分の手で殺すことになる可能性を恐れたのかな…ラーマの根底には恐怖がありそう…(※幻覚)。
 ビームに去られたラーマのベッドから落ちる方向に違和感があるが、右側に手を伸ばす(→そのまま落ちる→着替え?かなんかのために隣の部屋に向かう)→身体がついて来ず本の山にダイブ、ということだと思っている。この崩れる本はラーマの心境だろうな……。

 と、次の瞬間にはサンドバッグを殴っているラーマ。こいつほんとフィジカルどうなってんだよ。めっちゃ元気じゃねえかよ。でもラーマはラグ家の末裔だもんな……(洗脳済み)。
 とある狂人の考察で「序盤のラーマはサンドバッグ(敵)を破壊できるが、この場面のラーマは破壊できずに縋り付いている」というのを見かけて「天才か…?」と思った。そしてリフレインする「兄貴との日々は俺の宝だ」&肩車……泣き崩れながら壁を殴るラーマ。ここで壁が破壊されすぎて若干引くが、Twitterに「漆喰の壁なんてあんなもん」という壁破壊済みの狂人がいたのでリアルなのかもしれない。
 血の流れる手を眺め、過去の誓い(呪い)を思い出すラーマ……。

 総督邸前でトラックの準備をするチーム羊飼い。トラックに檻の金具留めてるのはムスリムのおじさんなんだよな……ムスリム一家のエピソードも知りたい……ビームがロバートに殴られてる時も庇ってたし……。ビームはどこ?という問いの答えはすぐに分かる。
 宣言通りトラックで扉をぶち破り、覆いをめくってオンレエエエエ!!!!!!!と檻から飛び出すビームと森の仲間たち。鹿と虎を同じとこに入れといて大丈夫なのかという疑問はあるが大迫力でこまけーことはどうでもよくなる。アニマルパニックになるイギリス人たち。なんか現実のインドには虎だか豹だかに襲われるイギリス兵のおもちゃがあるらしくて闇が深い。この場面の後ムスリム一家と逃走するジャングとペッダイヤがDVD特典で欲しいです。
 敵をぶん殴りつつビームが振り向いた先にいたのはジェニー。ここの二人の衣装といいシチュエーションといい完全に美女と野獣……監督はディズニーが好きらしいし。ジェニーは車で逃げようとしたんじゃなくてビームに会いに来たんでは(なんならマッリがバングルを見た時の反応で何か気づいていた)……?会話シーンも撮ってたかも……と思っている。なんか場面の切り方も駆け足だし。完全版でここのやりとりもください。

 総督夫人たちは屋敷に逃げ込む。逃げようとするマッリをぶん投げてビームに向かってくるロバート。このビームを見て向かってくる漢気には拍手を送りたい。愛する者を傷つけられたビームの怒りは凄まじい。ロバートはレスラー型だからもう少し良い戦いになるのかと思ったら一方的にやられてた。鹿も参戦するし。自然の猛威。扉の鍵を手に入れたところに響き渡る低音の「アクタル!」
 ここのラーマの登場シーンも強すぎる。燃える馬車なんてどこで調達してきたんだ。ていうかなんで燃やしたんだ。白馬四頭の馬車がラーマ(※ラーマヤナ)なのは分かるが……。ラーマ(※RRR)は太陽担当、ビームは月担当らしいのでスーリヤの戦車をイメージしているという考察を見た(あとインドでは「月は星々に囲まれているが太陽はひとりぼっち」というイメージがあるらしいので本気でオタクを殺しにきている)。顔は影になっていて、それがラーマであることはなかなか分からない。燃える車輪に吹っ飛ばされたビーム、燃える炎によって照らされるラーマ……ラーマは相変わらず無表情で、ビームと目を合わせることもせず、さらには「アクタル」と呼び続けている。ラーマの中でもまだ消化できていないんだな……。ビームの「母に誓って罪など犯していない!」の背景がアニマルパニックなので「罪……?」みたいな気持ちが湧き起こるが無視しろ。
 こんな決定的な場面でもビームはまだラーマを諦めていない。お前ってやつは!!!!!!なんというか、ラーマは不屈ではあるけど自分の行動にかなり葛藤や苦しみを抱いていて悩みは深いけど、ビームはずっと一貫してビームなんだよな。「ロンギポー(降伏しろ)」に対して「そんなことを言う姿を見るのもつらい」ってどういうことだよ……懐のデカさが宇宙かよ……。殴られてなお「兄貴は俺の仲間だ!!!」と言い切るビーム、それを殴り飛ばしたのはこれ以上ビーム言葉を聞いたら使命を遂行できなくなるからか……?
 せっかく手に入れた鍵が側溝に落ち、それで腹をくくるビーム。ここから二人のフィストファイトが始まる(なお、この間は背景から動物たちの姿が消え、いるのはなんか知らんけど逃げまどっているイギリス兵だけ)。

 ここの場面本当に格好良い。ラーマの方が手数も多くビームの攻撃も上手く避けているが、ビームは一撃でラーマを吹っ飛ばす。パワーじゃ勝てないと気づいたラーマが関節技をキメ始めるのが良い。ここで揉み合いつつも、チャラン氏の目に指が入りそうになってさり気なくずらすタラクさんの優しさ(※中の人の話)。
 からの火vs水ですよ。正直この場面はだいぶダサいと思ってます。まだ背景花火で松明を持っているラーマは良いとして、破壊された噴水と荒ぶるホースを持つビームは「格好良い……のか……?」と思ってしまう。あとアクションも微妙に弱い気がする。この後に虎をワンパンでぶっ飛ばすラーマのドヤ顔は好きです。

 ラーマが虎を殴っている頃、ビームはパルクール的な感じで屋敷に侵入(鍵必要だった?とかは考えるな)。すかさず追いかけるラーマ。
 ビームはバルコニーからマッリと総督夫妻たちを見つける。この状況で正面突破しようとしてるのもビームらしい。
 だが追ってきたラーマがそれを許さない。追いつくの早。ラーマは大理石の破片でビームを刺すのに躊躇する。この時、完全に「生け捕りなら昇格」っていうのが抜け落ちてると思う。ラーマが迷っている間にビームが反撃、一瞬の迷いの末にラーマの胸を刺す(ここの場面について「ビームは迷っていないように見えるけど、本気で殺すなら首を狙ったのでは(参考:ヤムナー川)」という考察を見かけた。ありがとうございます)。
 マッリの元に向かうビームを、ラーマは彼からもらった契り紐で捕らえる。脚本が鬼!!!!!そして初めて「ビーム」と呼びかける……。
 二人の眼下にはめっちゃ映えるアングルの総督。この映画、悪役がとことん悪役に徹してて最高なんですが、この場面は最高とか言ってられないくらい情緒にくる。
 引き上げられながらラーマを殴るビーム、それを避けずに受け止めるラーマ。咆哮するビーム(n回目のタラクさんやべえ!!!)。
 ここで「ラーム・チャランのまつ毛を見守る会」が発動し、ラーマの目のクローズアップ、目に流れ込んで滴る血、契り紐だけで繋がった二人の手、からのINTERRRVAL!!!!
まだ半分だよ!!!



ラーマの回想からヤムナー川(ネタバレ)


 なんかまだ未RRRの人にも読まれている気配を感じたので明記しておくと、この感想は既にRRRを観に行った狂人向けに書いています。あの映像を文字化することは不可能なので。

 インターバル後。
 ムスリム一家が既に逃げていることが分かって良かった(ついでにラッチュも)。
 ラーマは特別捜査官に任命され、念願の赤い制服を身にまとい、涙目で武器庫を眺める……そしてフィリップ・HeScaresMeMore と地味に再会してる……お前がアニマルパニックを生き延びてて良かったよ……。
 射撃訓練をしながら、ラーマの過去編がスタート。

 過去編、ヴェンカタ役のアジャイ・デーヴガン氏を始めボリウッド俳優が多くヒンディ語で演じているのでリップシンクしていない(一応合わせるためにヒンディのナンセンスを話していたらしいが)。ちょっとRRRをヒンディで観たくなるし、タラク・チャラン本人たちが吹き替えをしている他の言語(カンナダ・タミル)も観たい(やっぱりマラヤーナムは難易度が高いのだろうか)。
 指導者の父のもと、子どもの頃から軍事訓練を受けるラーマ。「敵に実弾を撃ち込みたくてたまらねえ!」と言うマニ兄貴に、ヴェンカタはなぜ解放運動を始めたか語る。スコットの登場に「お前15年も同じ話(弾の価値)してんのかよ……(値上げしてるな……)」と思う観客。

 家族(+シータ)で飯の最中に、ラーマの弟が左手で食べて叱られる。この後 Dosti を見直すとだいぶ来るものがある……。そこに現れるヴェンカテスワルルおじさん!ニザーム藩顧問もヴェンカタ・アヴァターニとかだったしインドも名前かぶり多いんだなあ。結局スワルルおじさんとラーマとシータの関係が分からない。シータはラーマ母を「アッタ(義理の母)」と呼んでいるので交叉従兄弟、やっぱり血縁者なのだろうか。
 地味に「ここでお前と一緒に闘いたい」というスワルルおじさんとヴェンカタパパのやりとりが好きです。ここもドスティ……。

 色々あって(急に端折る)ラーマに射撃の才能があると分かった時の「お前自身が立派な武器だ」には考えさせられる(厳密には「どこで武器を得る?」と言っていたこの場にいないスワルルおじさんに向けて「武器を得たぞ、ヴェンカテスワルル」と言っているらしい)。でも子どもに戦い方を教えなければ彼らも自由を得られない……。あとラーマに銃を撃たせたのがシータなの地味に好き。

 そして村に戻った途端始まる銃撃戦。ここでイギリス軍が言うのが「降伏せよ(ロンギポー)」……ラーマは村を破壊し仲間を殺した奴らの言葉を親友に対して言わなければならなかった、という構造、心がなさすぎて好き。
 父ヴェンカタは囮となるが、すぐに銃弾が足りなくなる。そこに弾をもたらすラーマ、子ども時代から不屈すぎる(「ラーマ!戻れ!」と言うのは例のマニ兄貴)。
 負傷した父に代わって敵を撃つことになるラーマ!ムルムルムルムルムル!!!(伝われ)これ本当は ఉరుము / urumu (雷)らしい。というのを知ってから注意して聴いたら本当にウルムって言ってた。インド文化って雷好きだなって書こうと思ったけど雷はどんな文化でも重要だった。
 子どもが敵を殺す場面はなかなか酷い場面ではある。でも他にどんな道が?
 これだけでは飽き足らず、ラーマは弟や母が殺されても敵を撃ち続けなければならない(父親の命によって!)。やっと敵が撤退し、父から「村人たちに武器をもたらすと約束しろ」と呪いの言葉を受ける(過去編をここで一旦切るの本当に憎い演出)。
 どうも現代インドでは日本のように父権の強い文化が残っていて、息子が父親の期待に応えることに対する信仰が根強いらしい。『バーフバリ』主演のプラバースさんが父親に反抗する主人公を演じた映画があるらしいが(うろ覚え)かなり興行成績が悪かったそうな……。ラージャマウリ監督はなんとなくそのへんの文化もよく思ってはなさそうだが、RRRは上手いバランスなのかな……と思う(というのは最後まで観たら分かってもらえるかもしれない)。
 特別捜査官になってやっとシータに手紙を出すのもラーマらしい。誰にも弱音を吐けなかったけれど、これで目的まであと少しというところ……でも完了してはいないから、それにそれだけビームのことが堪えていたということでもあるのかも。

 さて、就任後に初めてスコット総督に会うと、彼はビームを公開鞭打ちに処すという。ここのラーマ、どんなリアクションもできないけれど「大変なことになった……」と思っているのが確実に分かる。鞭打つ役目はラーマが自分で買って出たのだとしたら(イギリス兵なら容赦しないだろうから)しんどさが増すな……。

 鞭打ち当日。
 刑場には機関車事故の時にいたグレイヘアのおじさんや買い物をしていたお姉さんなどの姿もある。デリーはヒンディ圏(ウルドゥ?)なので通訳がいる。総督夫妻のそばにジェニーがいるのは、現地人と関わった彼女に対する戒めなのだろうか。
 車のバックミラーに丸く切り抜かれるラーマと車の窓に丸く切り抜かれるビームの対比好き。
 ラーマはビームのためにも自分のメンタルのためにも「跪け」と言うが、ビームは目も合わせない。祝賀会の場面と逆!!!そして鞭打ちが始まる。
 私は映画を映画として見ているので、ずっと「ラーマの鞭打ちフォーム綺麗だなあ」と思っているが、親友を鞭打つという非常につらい場面。実際、中の人チャラン氏は「タラクに怪我をさせてしまったかも」と泣いたらしい。ラーマはビームを跪かせようと鞭打ちに合わせて鎖を引いたり色んな手を使うが、ビームは決して屈さない。あと9R目にしてやっと、ラーマが左手に首飾りをつけていることを確認した……ここまできて迷ってはいられないもんね……。
 さらには鬼畜の化身・総督夫人が「血溜まりは????」「まだ跪いてない!!!!!!!!」などといらんこと言った挙句にえげつないトゲトゲ鞭を取り出す。なんか使用済み(鋲が赤い)な気がするのは幻覚か……?
 ラーマはビームに「命を大切にしろ」と言う…… この場面で許しを乞うているのはラーマ……。
 そこに風が吹く(注:ビームの名前の元ネタの『マハーバーラタ』のビーマは風の神ヴァーユの息子)。風が運んできた葉っぱに赤土が付いている(=祝福されている)ように見えるけど、私以外で言ってる人を見かけないから幻覚かもしれない(枯れてるだけ?)。でも歌う前に「大地の女神が息を吹きかけた木の葉がお前に話しかけている」と言ってるんだよな。泉に映る鏡像として登場したビームは、ここで水溜りに映る自分を見る……彼が神がかりになるサイン……。
 そして始まる Komram Bheemdo!!!!RRRで最も人気があると言っても過言ではない。もちろんRRRには最も人気がある歌が何曲もあります(?)。この do という接尾辞はなんなんだ……!やっぱり巻き舌のある荒々しい言語って素敵だなぁと思う。
 ビームはラーマを見つめながら歌うが、もはやラーマを見ていないようにも、その先の群衆を見つめているようにも見える。繰り返すが、デリーはヒンディ圏なので彼の歌の内容が分からない者も多いはず。それでも鞭打たれながら誇りを失わないビームに群衆は釘付けとなる。この場面、後ろから縄で引かれてるのにダンスのステップのように見えるとこが好き。風は吹き続け、民衆のボルテージも上がっていき、ラーマは(またしても「ラーム・チャランのまつ毛を見守る会」発動により)返り血を拭うふりをして涙を隠す……。ビームが気絶したと思わせてから続きを歌うのずるすぎ……。ていうかなんやあの鉄の塊(タラクさんはここ?かどこかで腕を痛めたとか。ビームのコスチュームで右手は布でしっかり覆われているが、もしかしてギプス隠し……?)
 ビームは極限まで膝をつかない。倒れ伏しそうになりながら、民主に向かって手を差し出し、彼が倒れた瞬間に彼らは暴徒と化す。
 鉄条網もものともせず暴れる民衆、すかさずビームに駆け寄るラーマは民衆を見渡す。風が吹いている……。
 ここのシーンはエモーショナルすぎてぜんぜん上手いこと文章化できない。IMAXで見ろ。

 夜、ラーマは刑場に戻り、ここで彼も水溜りに映るが、ビームの(あるいはインド人としての)魂が彼にももたらされたということなのだろうか。大地に残るビームの血に触れる。まだ乾いてないのでちょっとビームの血液状態が不安になるよ。風はまだ強い。ビームの信念がラーマに変化をもたらしている……。Dosti場面で鉄条網の向かって左手にいたラーマがちょうど真ん中にいる……。
 そこにチャリでやってくるスワルルおじさん。武器の運送役(?)に任命されたと告げられ、令状をもぎ取るラーマ(令状の日付が2月23日なのを見逃さないオタクたち)。ここで父親の言葉がリフレインされるも、それは鞭打ちの音にかき消され、ラーマはビームを解放する決意を固める。
 ある意味、ラーマはビームによって呪縛から解放された。彼は昇進のために本来味方であるインド人を傷つけてきたことで自責の念を抱いていたから、むしろビームの命と引き換えに死ぬことで贖罪されることすら望んでいたかもしれない。
 ビームにマッリを返してやると語りだすラーマに「ここまで努力してきたのに……15年も……」と困惑するスワルル。鞭打ちの時スワルルはどこにいたんだろう。見れなかったのかな(心理的に)。「武器のない革命を知った、やつの歌は群衆の心を武器に変えた、その気持ちを皆に届ける」と語り、「25年かかろうともビームを犠牲になどしない!!!ビームは殉教者でなく火山だ!!!」と言い切るラーマ。「お前の命も危ない」に対しても「望むところだ」と微笑む。その時のスワルルおじさんの顔!!!!!
 ラーマの第一の任務は自分の命に代えてでもビームの命を救うことになってしまう……。お前はどれだけ自分を犠牲にすれば気が済むんや。
 『バーフバリ』で「多くを救う者は英雄と呼ばれ、一人を救う者は神と呼ばれる」という台詞があったが、ラーマはここで神になったと解釈して良いのだろうか(冒頭のラーマvs一万、ビームvs虎、もこの対比だろうか)。

 二日後(次の日?)ラーマの牢の前に来る激おこ総督とラーマ(と手下たち)。「こいつの首を捻り上げて首が折れる前に目玉が飛び出すのを見たい!!!!」と嫁みたいなことを言い出す総督。ラーマはテルグ語で「マッリを刑場に連れて行ってこいつの顔を恐怖で歪ませてやりましょう」と芝居を打つ。総督はたぶんテルグ語分かるんだよね、だからここまでのし上がれたのかな(というかニザーム藩顧問との会話を見るにたぶんエドワードも分かってそうだし(いやエドワードはよく見ると通訳がちゃんと喋っている…?)、門のところにいるトーマスも現地語で話してる(何も考えずにテルグ語と思ってたけどデリーだしヒンディ?と思って聞いたらヒンディだった)、デキる男たち。
 ビームにはラーマの真意が分からずに絶望する。
 さらにラーマはビームが逃げやすいように南に伸びるヤムナー川付近に刑場を移す。

 ビームを運送車に連れ出す際、スワルルおじさんがカミソリを渡そうとバレバレの行動を取るのでハラハラするが、カミソリは運良くビームの手に渡る。この時のビームの心境がものすごく気になる。ビームとスワルルは面識があるから、もしかしてラーマが俺を逃がそうとしている?という考えが頭を掠めたのでは……?対するスワルルおじさんはビームを助けようとしながら「ラーマを救えるのはお前だけだ…」みたいな気持ちだったのかな……。
 一方のラーマは銃に細工し、たぶん椰子の木の根元などを掘ったりする。おそらくギリギリで、手も汚れたままだった。そんな時に総督から働きに感謝されて握手求められるから本当に運悪すぎ。手に汚れがついた総督の心に疑念が生じ、優しくマッリの方に触れるラーマにさらにそれは深まる。バックミラー越しの総督まじ怖え。

 先に刑場に連れられたビームはせっせと縄を切っている。
 刑場に向かうラーマや総督。椰子の木を目にして策略に気づく総督について「絶対にバーフバリ観てる」と言ってる狂人がいて思わず同意してしまう。車のスピードを上げてバイクを吹っ飛ばすラーマ、それを追わせる総督。支えていた木を引き抜いて椰子の木を倒すラーマ、アクセルを踏むも椰子にドーンされて吹っ飛びつつ銃を構える総督(伝われ)。この場面の後、総督は普通にことの次第を睨みつけているが、どこに着地したんですか?
 車から吹っ飛ばされつつ無傷っぽいマッリはやはりゴーンド族の女。対して、不運指数がカンストしているラーマは木に刺さる(は???)。これは森の女神の子を鞭打ったことによる大地の女神の罰なのか、無傷のラーマだと無双してしまうから都合上負わされた傷なのか(総督の手に土がついて勘付かれたのも「罪を償え」という大地の女神の意思なのか?)。
 それでも鉄の意志で木を引っこ抜き、イギリス兵を首尾よく撃ち殺し、逃げるマッリを追う兵士を血反吐を吐きながら脚で〆まくるラーマ。やっぱ木に刺さったのはハンデか。ここの表情吹っ切れすぎててつらい。とにかくマッリをビームに返すことだけを考えている……。
 対するビームも爆発や銃撃音を気にしつつ縄を切り終わり、丸腰で兵士たちを〆始める。銃が無効化されていることに疑問は抱いただろうか。とりあえず鈍器として使っているけれど。
 マッリは森を抜け刑場に辿り着く。方角も分からんかったろうに……さすがゴーンド族(テンプレ)。ビームを見つけてちょっと微笑むラーマに心が痛む……この時点ではラーマの中に、もしかしたら一緒に逃げて事情を説明できるかも、許してもらえるかも、という甘い期待があったかもしれない。が、ラーマの不運指数はカンストしているので、銃を直してビームを撃とうとしてる輩に気づいてしまう。ラーマは迷わずピストルを構える。この位置だとマッリの目の前でビームを狙っているように見えることも百も承知だったと思う。その上で自分に関する希望は捨て去ったのだろう……お前はなぜそんなにも自分を犠牲にするんだ!!!!!!(クソデカボイス)
 予想通りビームはラーマに向かってくる。ラーマはビームが自分に飛びかかってくることを予期し、要するに(?)ビームを信じて引き金を引く。ここのビームの飛距離と殴る勢いがやばすぎて「驚異の跳躍で敵を叩く……」と Raamaṃ Bheemaṃ をリフレインしてしまう。弾は敵を始末し、ラーマは予想通りビームにぶん殴られる。
 ビームに馬乗りにされたラーマの表情がもう「うああああああ゛(語彙消失)」って感じ……朦朧としつつ「役目は果たした……」「彼に殺されるなら構わない」(殺されるだけのことをした、むしろ罰されたいまで思っているのかな……それは日本的な感覚すぎ……?)と安堵しているように見える。目が本当に美しすぎる。お前の行き過ぎた自己犠牲精神はどうかと思うぞ!!!!!!!!!親父のせいか???????本人の性質?????
 棒を振り上げたビームは躊躇する。首を狙っているから完全に殺す気、だって自分や大切な人を傷つけようとしたのだから。大切な人が傷つくことに対するビームの怒りは凄まじい。この後の場面でも現れているが。
 しかしあまりに穏やかな兄貴の表情を見てビームの手は止まる。10R目にしてここのビームの目からぱたたっと涙がこぼれているのを確認した……(気づいてツイートしてくれた狂人ありがとう)!祝賀会でラーマの手が止まったように「宝の日々」が頭をよぎったに違いない……。ここで一瞬マジで刺したように見えるアングルが良い。もしかしたらここでビームが手を下さないために森の女神がラーマを刺したのかもしれない……(幻覚)。
 ラーマを置いて去るビームとマッリ。この後マッリは「兄さんを捕まえた人が椰子の木を倒して……木に刺さって……なんか追っ手は来なくて……」と支離滅裂な説明をしたかもしれない。状況的にどう考えてもラーマは自分を助けようとしていたのにこちらに銃を……?と混乱するものの、ビームは逃げ回るのに精一杯で深く考えることはできなかったかもしれない……。
 残されたラーマは更なる追っ手がやって来ることに気づいたが、深手を負いすぎてもはや〆ることができない。でもビームたちが見えなくなるまで全身で兵士たちを捕え続ける。薄れる意識、美しすぎる目、穏やかすぎるサントラ(Janani, 母)、ブラックアウト……。

 ここで絶対ラーマ死んだと思うよね。ていうか映画終わったと思うよね。でもラーマはラグ家の末裔だしこの映画の監督はラージャマウリgaru。終わらないんだよ!!!!

 ちょっと感想が長くなり過ぎたので次で終わりにしたいけど絶対に終わらない。



ラーマの回想2からLoad! Aim! Shoot!(ネタバレ)


 たぶんお気づきのことと思いますが、私は読書感想文が苦手です。書きたいこと全部書く。
 ちょっとだけテルグ語を調べたりしてるけど、研究者も少ないせいかアルファベット転写すら揺らぎがあって難しいな……と思っている。もうテルグ文字覚えた方が早い。

 さて、薄れゆく意識の中でラーマが思い出すのがシータとの別れと村人との誓いなのが重い。本当はこの場面も前章に入れる予定だったけど長くなり過ぎたので……。
 シータの首振りからの手を離さない流れが好き。ネックレスをちぎるラーマ……なんか欠けちゃってる気がするけど無視しろ。
 メソメソするシータに「お前の勇気が私を勝利に導く」と語りかけるラーマ。シータは首飾りを見るたびにこの言葉を思い出していたのだな……。シータは毅然とした表情になり、土でラーマの額に印をつける。
 そして村人に(ここでも過去編のマニ兄さんやじいさんたちの姿が)、「武器を持ち帰るまで帰らない、ゴーダヴァリ河に誓う!」とラーマ。ここ格好良すぎる。見送る村人がヴァンデーマータラム(母なるインドに栄光あれ)と叫ぶ……このスローガンは爆発事故前の橋の上でも聞こえるので、ぜひリピート時に確認しよう。

 さて、元の時系列に戻る。
 総督の「(ビームが逃げてから)いったい何ヶ月だ?」についてはナートゥの日や鞭打ちの日程、ドスティ期などを特定してきた狂人たちも「いったい何ヶ月なんですか?」と思っており、未だ最強の肩車記念日を特定できずにいる。
 エドワードの解説によってビーム包囲網が狭まっていることが分かる。マッリやムスリム一家を連れて何ヶ月も逃げ延びてるの逆にすごいな。

 総督たちはラーマが繋がれている牢を訪ね、彼が懸垂をしているのを見つける(は?いや、ラーマはラグ家の末裔……)。ここでSoul of RRR が流れるの良い。ラーマは窓から見える武器庫を睨み、まだ彼の意思が折られていないことが分かる。そして暗唱されるバガヴァッド・ギーター。これはビームの担当(?)の『マハーバーラタ』に含まれるフレーズであるが、クリシュナが語る相手はビーマの弟アルジュナ、弓の名手である。「私は結果にこだわらない、過程を重視する、我が飢えた血が枯れるまで目的に向かって進むのみ」(ごめんなさいうろ覚え)「Load! Aim! Shoot!」に対し「せいぜい虚勢を張れ」と言う総督。ラーマは脚をめった打ちにされてから独房に放り込まれるが、そこでも懸垂をする……お前ってやつは……。

 場面は変わってハトラス、兵隊の目をかいくぐって逃げるビームたち。宿舎のようなところにいる。割と早い段階でここの一行の後ろにシータが映ってる。見切れがちなペッダイヤ。
 手配書にラッチュがいないので「ラーマは口を割らなかったんだ!」と思うけど、ジャングたちのことはそもそも知らなかったのだろうか。そしてラーマは「アクタル」のことは知っていても「ビーム」については知らないから口を割りようがないけど、それはそれでラーマはつらかったのでは。
 食料調達に行ったジャングが「米の一粒も買えなかった」と報告した矢先にやって来る兵隊。逃げようとする一行に振り向くシータ。耳飾りのシャランという音がする……。この時点ではなぜ彼女がここにいるかは観客には分からない。
 しらみつぶしに探そうする兵隊と追い詰められた一行を見比べ、「天然痘患者がいるんです」と芝居を打つシータ。彼女が蹴り飛ばされて前に出ようとするビーム!!!!
 兵がいなくなってすぐ彼女に駆け寄って労ったあと「患者がいるのか?」尋ねるビームに「まさか薬草で治そうと……????」とざわつく狂人。「兵隊を追い払いたくて嘘をついた」「人助けをしろというのが許嫁の口癖で」と言うシータ。ラーマ……。
 「子どもが飢えていると食べ物が気を悪くする」という感覚に親近感を抱く日本の狂人。食事を分け与えられて感謝するムスリムママ(手配書によると一家の名前はアーメッド・パシャ、ファティマ・ミルザ、メーリーン・パシャだった。ついでにマッリの本名は Mallamma マッランマ?)。
 シータと名乗り、「南の方から許嫁に会いに来た」「デリーで警察官をしている」という言葉に続いて現れる首飾りの片割れ、ざわつく一行、ドスティ期の恋バナがリフレインするビーム。ざわつきに気づいたシータは「大丈夫、警察官になったのは……解放運動のため」とラーマの過去について語る。ここで観客もまだ開示されてなかった襲撃の末路を知ることになる……脚本の構成力……。
 父に「村人に武器を届ける」誓った少年ラーマは、再びイギリス人に包囲されていることに気づく。銃を構えるも弾はあと一発、そしてダイナマイト。自分の先が長くないと悟っているヴェンカタは「どんなことがあろうと目的に向かって突き進め」と言う。呪いその2……。
 だいぶ話が逸れるが、アジャイ氏の美しい顔を見ていると(ヒンドゥー教徒の方にこういうことを言うのは失礼かもしれないけど……)すごく「仏像の造形に似ている……仏陀はインド人なんだ……」という気持ちになる。耳の形、唇の形、少し長めの鼻筋、幅広で少し垂れているせいでミステリアスに見える視線……というインド的な顔立ちが東の果て日本にまでちゃんと伝わっていることに感動する。
 あと書きそびれていたのだが、冒頭で暴動が起きた原因である拘束された活動家ラーラー・ラージパト・ラーイは史実のヴェンカタと親交があったらしいので、ラーマは父の友人の支持者と対立せねばならない……という何重にもしんどいシチュエーションだったと言える。
 はい、話を戻す。
 ヴェンカタは一人イギリス軍に降伏する。そして敵が集まったところで「Load! Aim! Shoot!」、背中にはダイナマイト……。ラーマは自らの手で父を撃つ……脚本はどれだけラーマを虐めれば気が済むんだよ……さすがの私も「もっとやれ」とは言えねえよ……。
 
 ラーマの過去を知り衝撃を受けるビーム。「その人は武器を手に入れられたの?」と尋ねるマッリ。シータは親友を裏切ったラーマの葛藤、悩み、そして親友を助ける決心をして捕まったことを語り、震えながら令状を取り出す。「二日後に処刑するから遺体を引き取りに来い」
 ここからのビームがすごい……「俺はマッリを救おうとしたが、その人は国を救おうとしていたのか」n回目の「タラクさんやばい……」です。厳密には国ではなく土(土地)という解説を見かけたが私にはテルグ語が分からない……。「俺は森で生まれ……無知だった」は完全にネットミームになっているけれど、平凡に暮らす凡人にとってはRRRはそのくらいの最大の衝撃をもたらすものだったということで許してほしい。しかし「俺は森の人間『なのに』知らなかった」とも訳せるらしいので早急にテルグ語を学ばねばならないと思った。厳密なニュアンスが知りたい!!!!確かに獣を乱獲されたり史実でも相当圧政に苦しんだりしてたわけだものね……。
「この手で殴りつけ、親友を見殺しにしてしまった」
 この考えに至る所がビームのすごいところというか強さで、祝賀会のことも鞭打ちのことも許せない人は許せないはずだが、ロンギポーするラーマに「そんな姿を見るのもつらい」と言えるビームだから、鞭打ちを経ても「あの優しい兄貴が親友の俺にあんなことをするなんてとてもつらかったに違いない」と涙できる……まじで強い……。なんというかビームにはちゃんと「愛され自信」があると思う。愛に関わらず、自分がキャッチした他人の感情を疑わない、信じられる強さ。
 ビームは「シータ姫はラーマの所へは行かない、ラーマがシータ姫を迎えに来る」とラーマ奪還を誓う。もうビームにはなんの迷いもない。揺るぎない表情で歩き出すビーム最強……。
 なんというか、ラーマとビームは別々の強さを持っている。愛や信頼や期待について、ラーマは重くとらえて一人で抱え込み、目的のためなら自己犠牲も辞さない不屈の精神を持っているが、ビームはそれをパワーにして必要なら助けも求められるし決して諦めない。他人を頼ったり甘えたり信じたりできるのも強さなわけで。ラーマの道は状況に応じて曲がりくねり目的を見失いかけることもあるが、ビームの道は真っ直ぐ。だから同じ親友を救うという目的でもラーマは「自分の命に代えてでも」だしビームは「一緒に生き延びる」となる。
 ……ビームはこの格好良い出発の後にシータに首飾りを借りに行ったのかな。かわいいね。エンドロールを見るに神の力的な感じで生成したのかもしれないが……(?)
 そういえばシータ役のアーリヤーはヒンディ語圏の女優なので「台詞だけ覚えた」って言ってた(リップシンクだけで声は吹替)。多言語国家大変だ……。

 ビームはジェニーから兵舎の地図をもらうわけだが、やっぱりここもジェニーの出番もう少しあったと思うなーーー!!!まずどうやって見つけたの!!!ともかく、ひとり身軽なビームは首尾よく兵舎に忍びこむも、いったいどの独房にラーマがいるか分からない。
 ここでナートゥのリズム持ってくるの本当にずるい!!!!ラーマは最初幻聴を疑ったはずだ……「ビ、ビーム!?」と動揺しつつも壁を叩き返す。返事を聞いたビームの顔!!!タラクさんありがとう!!!!!(?)泣きながら地面を叩くビーム、サントラがDostiのメロディ!!!ウワー!!!とエモさが限界を超え語彙を失う狂人。
 独房を覗き込むビームのカットは側溝に鍵を落とした時の構図に似ている気がするが幻覚かな。いや、闇に落としたDostiをここで拾い上げるという演出なんだよ。うん。
 泣きそうになりながらビームを見上げるラーマ、でもビームがべそべそしながら「国を救おうとしていたとは……」と言うと兄貴の顔になって「どこで聞いた?」と尋ねる。笑顔が優しすぎるんだよ!!!!!!!(最終的にキレ始める狂人)
 そして現れる首飾りの片割れ。ラーマの「し、しシータ!?」にちょっと笑ってしまうが「ラーマを連れてくるとシータ姫に誓った」と言うビームの凛々しさが上回る(上回る…?)。そしてくっつけた首飾りの貝の模様がどう見ても合っていないが無視しろ。エンドロールのアレでもはやシータのじゃない説あるし(ないよ)。

 ここでビームの脅威のパワーが発揮される。雄叫びと共に独房の檻を破壊し、ラーマとドスティ繋ぎからの最強の肩車!!!!!!!!!!ここから延々無双し続けるから狂人はテンションが上がりっぱなしである。
 二人が別々の方向を確認するところから好き。ラーマがのけぞるところはビームがアシスト、銃を撃つラーマがメインに見えるがビームの足捌きが本当に美しい。インドのアクションは踊りのようで好きだ。あと撃たれそうになるとラーマが「ウワー」って頭を庇うのちょっと面白い。この場面はいちいち説明しても伝わらないのでまじでIMAXで観ろ。
 ここのリハーサルのオフショットを見たが、ハーネスの締まり方で二人の身体の鍛え方が分かる……絞るチャラン氏も増量するタラクさんも大変だ……吊ってるとはいえチャラン氏の体重の6割はタラクさんにかかってたというし……。

 兵舎が騒がしいので鬼電をする総督、「私が着いた時には逃げられてました(大嘘)!」と報告するエドワード。「特殊部隊で叩け」「確実に仕留められる距離まで撃つな」と抜け目ない総督、でも距離の問題じゃあないんだよな……。

 兵舎から森の中に逃げ、限界がきたラーマを手当するビーム。ゴーンドの薬草力!!!!そしてラーマ寺院に掲げられた旗をラーマにかけ、ラーマ像に祈りを捧げる(ややこしい)ビーム。そして神像の持つ弓矢が本物であることに気づき、足元の赤土でラーマ(人間)の額に印をつける。
 小川で水を汲むビームに忍び寄る特殊部隊、水を飲むビームすれすれを飛ぶ矢。ここの弧を描く水が綺麗。さらに四方から飛んでくる矢に倒れるイギリス兵と川に飛び込むビーム。
 エドワードのそばにはインド人通訳がいるが、地味に冒頭のマッリを拉致する場面からエドワードとセットで映ってるのよね……たぶんエドワードはテルグ語分かるっぽいのに。この二人の間には友情に近いものがあるのではないか、と狂人は疑っている。いや確信している。もう一緒に育った説もある(幻覚)。たぶんこの通訳のように英国人と関わるうちに感覚が英国化したインド人もいたのだろう。彼は生き延びたのだろうか…。

 ぜんぜん上手くいってなさそうな気配を察知した総督からまた鬼電。叱りつつも増援部隊送ってくるあたり「ここで逃すわけにはいかない」という意志を感じる。
 そこに響き渡る「「「エドワード」」」
 ここの!!!サーチライトに照らされて現れるラーマ!!!!強すぎる!!!!!格好良い!!!!!!
 ラーマ神モードなどと言われているが、史実のシータラーマ・ラージュ像にかなり忠実なビジュアルとなっている。しかも彼が『ラーマーヤナ』のラーマやヴィシュヌ神の化身になぞらえられていたのも史実通りというからインドすごい。なお、エンドロール時のビームも史実に近い見た目になっている。
 そういえば「布がズボンになってる笑」みたいな感想を見かけたけど、布を巻きつけてズボンにするやり方があるんですよ。インドのインスタグラマーがやってたよ。ということで私も2×1mのストールで試してみたところ、2枚使えばそれらしくなることが判明したので、ラーマもあの旗を2枚かそれ以上使ってるんだと思う。

 ここのサントラがまた強いんだわ!!!!Raamaṃ Bheemaṃ!!!!!! ラーマはラグ家の末裔!!!!!!王の威光を持つ者!!!!!(※ずっと言ってたのはこの歌詞です)ビームがひたすら跳躍ゴリ押しなのはなんなんだろう!!!でもアルジュナの矢〜ビーマのターンになる流れすごく好き。 
 めちゃくちゃ脇道に逸れるんだけど、スケオタとしてはナートゥとかは使わずにペアでDosti とRaamaṃ Bheemaṃ を中心に編曲して「ビームはハスティナプラの都で象牙を砕きシヴァの破壊の舞を踊る」のとこで5ALi してほしいと思っている(まじで一部にしか伝わらないやつ)。
 タラクさんのすごいところ、実際はそこまで重くないだろうけど「バイクの重み」を感じさせる表情・動きでぶん回すところだよな……。

 話を戻して、ここで神のごとく戦うラーマとビームをIMAXで観てくれ。「ラーマの矢がすごい」とか「ビームの槍がすごい」とか「銃もバイクも鈍器」とかどんどん語彙が死んでいくから。「ハスティナプラ〜」のビームのバイクぶん回しがめちゃくちゃ好き。ここは観てる方もめちゃくちゃエネルギーを使う。RRR観ると痩せる、割と本気で。
 エドワードの撃った弾がラーマをかすめ、大切な者を傷つけられたビームの怒りが沸る。n回目のタラクさん最高シーン。エドワードが振り返った時には槍が貫通している(エドワードの中の人エドワード氏のインスタでこのシーンがピン留めされてるんだけど、クソほどネタバレだし自分死ぬ場面なのに良いのか?と思ってる)。なおラーマは「なんかかすったな?」くらいのリアクションで笑う。
 

 からのラーマの ”BHEEM!! EE NAKKALA VĒTA EṂTASĒPU!!!!!” ビーム、狐狩りは終わりだ!!
 字幕では日本人に分かりやすいように「仕留めるべきは獅子!」となっているが、厳密にはここは「象の額を叩きに行こう」で、ラッチュを引っ掛けた集会での発言も「なぜ蛇を捕まえるのに藪を叩く?」ではなくこう言っているようだ(Mirch Bajji さんのnoteより https://note.com/telugu/n/n7f7ab3c6f5bd )。テルグ語が分かるともっと伏線が増えるってことですね!!!!!!どうもラーマとビームは別々の方言を話しているらしいというのを聞いて、テルグ語が分からないことがますます悔しくなった。
 イギリス兵をシバいていたビームはそれを聞いてバイクを片手で止めてまたがる。ラーマも2ケツすると見せかけて馬をゲット。 Dosti!!!!!!!

 総督の砲弾を浴びつつ、ラーマがまたよく分からんジェスチャーをし、ビームは指示に従う。結果、火のついたバイクが武器庫にダイブする事態に。そして引くほどデカい爆発。この時点でラーマは武器を持ち帰る気はなかったのだろう。ただ相手の武器を奪うだけ。だが、崩壊する武器庫に飛び込み銃を持ち出そうとするビーム。
 総督は一応生きているが、上から滴り落ちる血、上を見ると鉄条網にぐるぐる巻きになって死んでいる夫人の姿。ここの字幕は「なぜだ!」だが、観客も割と「なんでぐるぐる巻きに……?」と思ってると思う(夫人の中の人アリソン・ドーティがインスタにこの血みどろメイクの写真アップしてて笑った)。

 そこに現れるラーマ。次々とモブを射る。さらに笑っちゃうくらい大量の武器を引いて現れるビーム(それ絶対に後で引っ張り上げないといけないよね……?)。ここのサントラはラーマが初めて銃を撃った時と同じ……!
 ビームがもたらした銃に涙目になるラーマ。目が美しい(これもn回目)。こうしてラーマと父親の誓いも果たされる……。
 さて、モタモタと銃を構える総督。その右肩を射て弾丸をキャッチし「インド人の命より重い弾だ、無駄にしてなるものか」と言うラーマ、そして銃をビームに委ねる。ここでラーマがビームにかける「敵の心臓を撃ち抜け」みたいな台詞はヴェンカタがラーマに言っていた言葉というのは聞き取れているが正確には何て言ってるんだ……。
 本編にはないけど、本国予告編やパンフにはラーマがビームに銃の撃ち方を教えるシーンがある。どんな場面か気になるので完全版に入れてください。
 ラーマの「Load, Aim, Shoot!」はヴェンカタの声が重なっている。ここで笑ったビームの心境が知りたいよ……弾は総督の心臓を撃ち抜く。日の沈まぬ大英帝国……(British Empire じゃなくて English Empire なんだよな)。

 次でたぶん最後。
 なんでこんなとこで切るのかって?こっからが長えんだわ。



RRRはただのエンタメ映画ではないという話・エッタラジェンダ(ネタバレ)


 トラックが潰れそうなほどの武器を積んでどこかの花畑にやってきたビームとラーマ。ここのロードムービーだけで2時間欲しい。花畑で待っていたのはチーム羊飼い、ムスリム一家、シータ、ジェニー、そしてヴェンカテスワルルおじさん!おじさんが合流するまでのスピンオフも欲しいです。
 トラックから降りてくるビームとラーマ。それを迎える一同。ここでみんながかなり雰囲気の変わったラーマを見ていそうな中、ジェニーだけビームを見ているように見える。
 シータにラーマを届けるラーマ、ムスリム一家に感謝するビーム、ビームとジェニーのハグ、ラーマに「やり遂げたな」と言うスワルル。これ以上の大団円ある?????
「君は恩人だ、何が欲しい」と言うラーマ。そばでソワソワしているラッチュ(合流できてよかった)をよそに「読み書きを」(正確には「学を(చదువియ్యి)」)と答えるラーマ。つまり文明で戦うための武器が欲しいということ(だと私は解釈している)。
 ラーマは白い旗に「水と森と大地と」と書き、二人でそれを掲げる。

 エッタラジェンダの前に閑話休題、ちょっと真面目な話。
 何度かふわっと触れたように(触れてたはず……)、RRRのラーマとビームにはモデルとなった活動家がいる。実際には二人が出会うことはなかったが、「もし二人が出会っていたら」というパラレルワールドの話である。

 史実のコムラム・ビームには学があったそうなので、ラストで掲げられる「Jal, Jangal, Zameen(水、森、大地)」のスローガンがラーマに与えられたように見える演出に批判の声も上がったらしい。

 RRRは1920年代のインド事情だけでなく、現代のインドの情勢も絡んでいる。
 長らく分離運動が行われていたテルグ語圏アーンドラ・プラデーシュ州は、2014年にとうとうテランガーナ州が分離し、それ以来住民(氏族)同士の対抗意識もますます大きくなっていたらしい。
 史実のアッルーリ・シータラーマ・ラージュは現在のアーンドラ・プラデーシュ州の出身(生まれた場所は不明だが住んでたのは確か)、コムラム・ビームは現在のテランガーナ州の出身、この二人の英雄が手を組むことで、再び二つの地域の人々が争うことなく一つになることを願っている、とラージャマウリ監督はインタビューで言っていた(インタビュー読みすぎてソースがどれか分からなくなっている……すまん……でも出身地は一応wikiで確認したよ)。
 というか、ラージャマウリ監督はヒンディ圏もテルグ圏も宗教も関係なく、一つのインドとして平和にやっていけたら、という話をしてた気がするんだけど……うろ覚え……ブクマしとけばよかった。
 ともかく、ラーマとビームが主人公に選ばれたのはちゃんと理由がある。

 はいエッタラジェンダ!!
 日本版ではインターバルがないだけでなく、上映時間の関係で(?)エンドロールがエッタラに押しやられているが、本来はエッタラの後にエンドロールがあるそうです。そりゃそうだよね……あれじゃ読めない……。

 ダンスの前に挟まれる後日談の話をしよう。
 ラーマはスワルルやシータと共に故郷に帰り、村人に武器を持たせるという誓いを果たす。泣き崩れるマニ兄貴。
 RRRは基本的に小物(例:サスペンダーの色、バングルなど)が安定していないが、ここにきて「さすがにそれは駄目だろ」案件が発生している。ラーマの胸には組み合わさって一つになった首飾りがある。そしてシータの胸にも首飾りの片割れが!!!!!!!衣装さんをはじめ誰もこのことに気づかなかったのだろうか……?まあ、シータから首飾りを借りそびれたビームがそのへんの貝で作った説などもある。だから模様も合ってなかったんだね!!!!
 ……でも、これは細かいミスじゃない気がするんだよな……。

 ゴーンドの森に戻ったビーム。ターバンをー巻き銃を背負い、ラーマと同じく史実のコムラム・ビーム像とかなり近くなっている。マッリが「母さん!」と呼びかけ、ロキも「マッリ!!」と叫ぶ。生きてたんかいワレとみんな思ったはずだが、彼女はゴーンド族の女です。ともかくこれで円が繋がった……大団円。
 ジャングもラッチュもはっきり確認できるが、見切れ芸人ペッダイヤはターバンの端や足もとしか確認できない。カメラアングルどうにかならんかったんか!!!!!!
 ラーマもビームもこれから独立に向けての戦いに身を投じると思うと束の間の幸せというか、まさに戦いは今からやっと始まる……。

 はいエッタラジェンダ!!!!(2回目) 意味は「旗を揚げろ!」(「揚げよう」かも、動詞の変化が分からん…)。
 エッタラ始める前にもう5秒余韻が欲しいところだが、ハッピーなタラクさんとチャラン氏が観られるのでおっけ。これぞインド映画というダンスシーン。二人の踊り方の違いが好き。チャラン氏の遊びのある踊りとタラクさんの体幹!!!タラクさんはキレッキレだしチャラン氏のシャツのボタンは相変わらず仕事をしていない(そもそもボタンがねえ)。ここの踊りはキャラクターというより俳優たち本人に見える。
 バックダンサーたちが結構面白い動きをしているのでYouTubeでそっちメインで観ると楽しいかもしれない。

 エッタラジェンダという曲、結構なインド讃歌で、自由のために戦った人々を讃え、ある種のプロパガンダという面も少なからずある。でも時代考証的に使えなかった現代のインド国旗ではなく(ヒンドゥー教至上主義的な意味合いが強まっている)、独立しようと奮闘していた時代の旗が掲げられているのは製作陣の配慮もあると思う。パンフレットによると、あまりフォーカスされてこなかった南インドの英雄が中心なようだ。
 エッタラジェンダを聴くと、もちろん楽しいのだけれど、歌詞やインドの歴史を噛みしめながら聴くと言いようのない深い悲しみを感じる。もちろん迫り来る映画の終わりへの寂しさもあるのだが、色々な怒りや苦しみを乗り越えた上での表現というか……やっぱり喜びだけでなく怒りも悲しみも踊りと歌に昇華して乗り越えていくのがインド文化なのだなあ…(個人の感想です)。普段からカジュアルに歌や踊りが存在するからこその表現。

 ともかく、あの壮絶な戦いを経ての踊りなので純粋に楽しみたい。
 シンプルに音の話ならRayya Rayya Ragathamu Lelemmane (沸る血が君に立ち上がれと言う)とか Veyyara dhandora velli cheppara oorooraa (千の太鼓の音が〜?訳が分からん…)とかの巻き舌が連続するあたりが好き。韻の踏み方が独特で(踏んでるよな…?)とてもテルグ語を学びたくなる。
 こういうエンタメや曲でも神の名前が当たり前に出てくるのにインド文化を感じる。こういう文化はきっと一神教圏より多神教圏(日本も含まれる)の方が感覚的に馴染むのではないかなあ。
 しかし、数ヶ月聴き続けてキャッチできるニュアンスをキャッチし尽くすと、私はインド人ではなくインドの歴史や文化や言葉や風土を知らないから、RRRの根幹やスピリットを本当に理解することはないんだなと思って悲しくもなる。


 など色々と言いつつ、映画館ではひたすら主演の二人をガン見しているのであるが、偉人のターンで衣装が変わるのが好き。アーリヤーも可愛いしジェニー役のオリビアが出てくるのも嬉しい、アジャイさん出てくるけどワンフレーズだけなのちょっと笑う、そして監督!!!創造神!!!!
 繰り返される ఉరుము ウルム(雷)のニュアンスが知りたい!!!
 毎朝エッタラジェンダを聴きながら出勤するとだいぶメンタルを支えられるのでおすすめ。なお日本のiTunesにはRRRのサントラはない。謎。

 ふう。まだ書く(長い)。
 中の人たちの話。なお、私はインド映画界隈については相当なにわかです。ただ好きな映画については出演者やスタッフのインタビューやSNSを片っ端からチェックするのが趣味です。インドは英語インタビューも多いのでかなり助かった。
 リアルの二人は演じたキャラクターと真逆で、実際には年上のタラクさんがスマートでしっかりしてて声も大きくて(※インタビューなどすごい喋る)オープンな人、そして年下のチャラン氏はおとなしくてぽやぽやした感じがする(アカデミー賞の会場でインタビュー中にタラクさんを見かけて嬉しそうに手を振った後、返事がすげえ適当で笑った。大好きじゃん)。
 インタビューなどを見てて「よくこの二人であのキャスティングにしたな!!?」と審美眼に脱帽してしまう。本人たちも、チャラン氏が「タラクの性質(火)を演じられて楽しかった」と言えばタラクさんも「チャランは深い海のよう、飛び込まないと何を考えているか分からない」と言う。シャイな人が心を開いた相手への懐き方ってすごいよね。タラクさんの前ではチャラン氏はかなり弟みがある。
 二人はお互いに有名かつ対立するような立場の家の生まれだったけれど(※詳しく知らない)、彼らが仲良しなのを知っていたラージャマウリ監督が「マルチヒーローを撮るなら」と当て書きでキャスティングしたのだそう。タラク氏は「RRRの後に絆ができたんじゃなくて、絆があったからRRRが作られたんだ」と言っててオタクは泣く。二人が若い頃から一緒に仕事してる監督の、二人に対するコメントも暖かい。インタビューを片っ端から読め。
 インタビューなどでふざけ合ってる二人は本当に仲が良さそうでまじDosti。タラクさんは「チャランは閉じた本のよう、私はチャランの殻を破って入っていける数少ない人間の一人」と言っているし、チャラン氏も「タラクが大好き、”ありがとう”と言ってこの関係を終わらせたくない、ずっとこの関係を続けていきたい」と発言。あとインドの友達の距離感かなりバグっててしょっちゅうハグしたり手を繋いだり膝に手を置いたりしてて??????となる。仲が良いのは美しいこと……。
(Twitterで、タラクさんの奥様とチャラン氏の誕生日が一日違いで、奥様の誕生日祝いをしてたタラクさんが日を跨いだ瞬間に迎えにきたチャラン氏(家が10分圏内)の誕生日会に行って奥様が怒ったという話を見かけ、出所のタミル語圏のインタビューも発見して若干情緒がおかしくなった。こういうエピソード聞くと、タラクさんもチャラン氏が好きだろうけどチャラン氏のタラクさん愛がかなり強火に見える……笑)
 インドのファンたちはかなり強火でファンというより暴徒のような時もある。そしてライバル俳優へのヘイトも強く、ファン同士のヘイト合戦も絶えない。俳優同士が仲良くするのも難しそうな雰囲気がある。マルチヒーロー映画を撮るのはかなり大変だったと思うから、監督もタラクさんもチャラン氏もありがとうという気持ち……。
 というかインドの文化でこの作品が生まれたことに、もうインダス文明あたりから感謝したくなってくる。

 さて、続編の脚本を模索していると監督が認めているわけですが……これを超えるのは相当難しいぞ……なんせ史実も史実だし……モデルの二人は若くして亡くなっているから完全にフィクションになるしかないのか……?
 というわけでここからは続編に関する幻覚。
 正直、今回の(?)RRRの主人公は個人的にラーマだと思っている。ビームは神そのもののように登場し、信じがたいほど純真で、理不尽にも鞭打ちにも耐え、歌で民衆を動かす。ラーマは過去も語られ、使命のために味方を敵に回して苦悩し、友を敵に売り、その友によってインド人としての誇りを取り戻す。だから続編が作られるなら、今度は文明を知り人間の暗黒面や複雑さに多く触れることになるビームが主人公になって、彼の過去も語られることになるといいなあと思っている、そして文明的な困難に一緒に立ち向かうのが世間慣れしているラーマ……。

 私個人はつらく苦しい物語が大好きなので、不運指数がカンストしているラーマが何らかの理由でシータを失ってどん底にいる場面なども見てみたいですが(史実のシータも夭折しているし)、まあそういうノリはないでしょう。たぶん。
 女性の活躍がないという批判もあったから、シータはもっと活躍するはず(今回も吹き替えだがリップシンクはしてたけど、出番増えたら大変だな……)。シータをちょい役にしとくのは勿体ない……だって彼女も訓練を受けた可能性もあるじゃない?(あるのか?)
 とりあえず続編はラーマとシータの結婚式で踊り狂うとこから始まって欲しい(シータのラーマへの呼びかけ bava は「結婚しうる親類男性」も指すようだし、作中の描写的に史実通り二人が「プラトニック」な可能性も捨ててはいないが……)。もちろんビームもチーム羊飼いもジェニーも出席する。ワンチャン、フィリップ・HeScaresMeMore もいるかも。微笑ましく眺めるペッダイヤとババイのカットが欲しい。ラーマの前でずっとソワソワしてるラッチュも見たい。ダンスシーンは全体で3回くらい入れてほしい。頼む。たぶんこの映画でインド映画のダンスに抵抗がなくなった人は多いはずだ。ダンスという文化の重要性が「「解った」」狂人は多いはずだ。
 ジェイクは絶対に続編に出ると思う(ガンギマッた目)。なんかナートゥで改心した(?)フリして英国に密告するとか、マジで味方になっても良い。あと女性キャラを増やすならめちゃ強いゴーンドの女出してほしい。もう成長したマッリが女羊飼いに
なっててもいい(すごくどうでもいいけどマッリ役のトウィンクルちゃんの名前はインド的キラキラネームなのか気になっている)。
 通訳の彼も生きてたら続編でインド側のふりをしながら「エドワードの仇ーー!!」って裏切ってきたりしないかな(※そもそもエドワードと仲良かった説が妄想)。史実ラーマもビームも仲間の裏切りで亡くなってるようだけど、RRRでそれはないかなあ……。

 とりあえずビームとラーマのDostiを死ぬほど浴びたい!!!!!!でも地元も違うし別々の道を歩む感じで終わってるんだよな……まあ私のない想像力と乏しいインドの歴史・文化の知識では面白いこと何にも思いつかないので、いつかまたDostiを観られることを祈りつつ今作の円盤化を待とうと思う。特典たくさん欲しい!!!舞台裏も欲しいけどテルグ語だけじゃなくてヒンディ・カンナダ・タミルのご本人吹き替え観たい!!

 ……これだけ長い感想書いとけばRRRロスも多少乗り越えられるはずだ。それはそれとして家にIMAX欲しい。

 最後に、Twitterでたくさん感想や考察や幻覚を流してくれた狂人の仲間たちやインド文化に詳しい人やガチの研究者の方々ありがとう。勝手に見てました。周りにご存じの人あんまりいないから鬼のように眺めてました。私はインドの歴史にも文化にも現代の情勢にも、そしてインド映画にも詳しくないし、インドのどの言語も分からないので、明らかな間違いがあったら教えてもらえると嬉しいです。

 自分で書いててうんざりするくらい長かったのでここまで読んだ人だいぶ狂人だと思う。お疲れ様。



1R目は字幕で観て欲しいという話【6/21追記】

 あのですね、私は冒険が好きなんですよ。急に何だという話ですが。

 RRRがここまで深く私に刺さったのは、この作品が私にとって未知な文化の物語である、という部分がかなりあると思う。私は色んな文化を知りたいし理解したい。個人的な哲学の話をすると、この「理解」というのは単純な understand というより comprehend 、その意味するところを包括して自分の中に取り入れたい、自分の一部としたい、くらいの傲慢な考えである。
 私は色んな文化に中途半端に興味を持ちがちで、色々勉強してみて分かったのは、異文化を完全に理解するなんて永遠に不可能であるということです。ある文化を内包するというのはその土地でその文化の一部として生きるということで、それは異邦人がただ旅行に行ったり暮らしたりしただけで得られるようなものではない。
 それでも好奇心は止められないし何かを知るのは楽しい。

 で、吹替の話です(前置きが長すぎる)。
 色々ややこしい話をする前に結論を言うと、文化とか言語とか面倒なことは考えず、ただエンタメとして映画を楽しみたい層(&字幕読むのが苦手な人)は確かに存在するし、その層にも観てもらうために吹替版を作った意義はあると思った。支持する母数が増えるのは良いこと。

 ここからは普段ぜんぜん吹替を観ない人間の感想なのであまり気にしないで欲しい。アニメも観ないから声優の名前が発表されても「なんかたぶん大御所を連れてきてくれたらしい」というくらいしか分からなかった。

 まず、改めて字幕版の良い点(吹替の話じゃねえのかよ)。
 欧米の文化はそれなりに日本に流入しているが、インド文化は想像以上に日本と異なっている、というところがRRRの「カジュアルな」翻訳にかなり壁を作っている、と思う。
 Mirchi Bajji さんなどのRRRのテルグ語原文を直訳してくれているnoteをを見ると、元は字幕ともだいぶ違うことを言っていて、それは深く文化的であり、解説なしで日本人が理解しながら観るにはハードルが高すぎる。だから改めて日本語字幕は日本向けの言い換えと「インドみ」のバランスを上手く取ってくれたのだな…ととても感銘を受けた。前に帰国子女の友だちが「日本語そのものは普通に喋れるけど ”猿も木から落ちる” 的なやつが分からない」と言っていたのを思い出した。その土地で生きなければ馴染むことがない表現。

 私は絶対に外国映画は字幕で観るのだが、それは分からなくても外国語の響きを聞いているのが好きなのと、リップシンクや俳優と声優の相性などのストレスを減らしたいという理由がある。字幕だって(そもそも翻訳者が信用できるか否か問題もあるし)制約が多いから正確ではないが、耳で音を覚えられれば後から実際何を言っていたか調べることはできる。

 RRRは私にとってはただのパワフルエンタメではなく文化的にとても面白い作品である。私はインド文化にそこまで詳しくないしたくさんある言語の一つも分からない。この作品を理解するにはもっとたくさんのことを知らなければならない、未知の部分がたくさんあるということに、私は魅力を感じている。

 言語が好き&マイナー言語映画に慣れている&ふんわりとしたインド文化・歴史の知識があったため、1R目から「バイヤ」「ババイ」らへんのニュアンスも繰り返される「アンナ」が「兄貴」に当たることも、ざっくりしたヒンドゥー教の風習もスッと理解したけれども、一般的にはこの辺はスルーされる部分で、ただ映画とか言語が好きだから刺さったに過ぎないポイントなのかな…。いや、狂人たちみんなテルグ語や風習について鬼のように勉強しているから、RRRを観て文化って面白いと思った人は多いと思うんだけど、それは(日本にとっては)マイナーな言語・文化の映画が刺さった一部の狂人と周辺の人々の話であって、やっぱり映画というのは多くの人にとってインスタントな娯楽なんだと思う。吹替というのはそういう人たちにも楽しんでもらうために分かりやすく、というか誤解が少ないように作るべきなのだろう。

 吹替の台本の元になったのは英語字幕なのだろうか。それとも日本語字幕…?テルグ語スクリプトではない気がする。それがすごく知りたい。「どうすれば日本の観客に分かりやすいか」というところを頑張って考えたんだろうな…というのは分かった。

 声優さん達の演技に関しては、いかんせん普段から吹替を観ていないからよく分からないんだけど良かったと思う。感情の乗せ方などに微妙に解釈違いはあったが、台詞というか物語の見せ方そのものが若干違うので仕方がないのかも。
 あと、ジェイクの「フラメンコォオ!」は笑うしかなかったんだけど声優さんがRRRガチオタで気合い入り過ぎたとかかな、知らんけど。

 ある程度予想はしていたが、吹替版は言語の違いを完全に排除しているため不自然になっている場面がちらほらある。「マダムハヤメテジェニーヨ」のくだりはいっそカットしても良かったのでは…というくらい初見吹替勢にとって不可解な気が…?(繰り返すが制作陣の頑張りは感じる) ここを含む言語のすれ違いのくだりがかなり無理がある……醍醐味みたいなもんなのに……もう少しどうにかできなかった…?
 とりあえず「ババイ」「アンナ」系の呼びかけがほぼ削られてる。インドって呼びかけとか、呼びかけではない語尾などに相手の属性をくっつけることが多いようなので、日本人には少し馴染みづらいからそれはしょうがない。
 ちょっと物申したいのはビームが頑なにラーマを「兄弟」と呼んでおり弟属性が消失していること。作中で色んな人に対する「兄貴」という呼称が氾濫ぎみなので混乱を避けたのだと思われるが、ビームが弟属性でないとラーマ過去編のエモさがちょっと減るじゃない????それなのに毒蛇解毒のとこで一回「兄さん」て呼ぶのはなんか逆によく分からんかったよ…! なんでか二人を対等な関係として演出したがっていることは感じた。なんでかは分からん。
 あとゴーンド族の地方民っぽい言い回しが抜けてたのも個人的には惜しい……何よりペッダイヤ構文がペッダイヤ構文じゃなかったのが……。

 好きだったところ。
 ラーマは公私で一人称を分けるタイプ、というか警察官モードと本来の自分で「私」と「俺」を分けてたのかな。ずっと低音ボイスなのに独房からビームに話しかけるとこが優しくてめちゃくちゃサムズアップした。
 「ご存じかな、ナートゥを?」はリップシンクを気にしつつ親しまれた字幕版を踏まえていて好き。
 ラーマが警官だと知ったビームの「そんなことを言う姿を/見ているだけでもつらい」の言葉の切り方も良かった。テルグ語もといインドの言葉は早口な印象があるので、日本語を当てるのは結構難しそうだ。フレームアウトを上手く使ってた気がする。
 鞭打ち後のラーマの「誇らしく死ねれば良い」は襲撃前のビームの台詞を踏まえてるな…!(というかテルグ語でここってどう言ってるんだっけ?)

 ちょっとまだ咀嚼しきれていないけれども、すごく頑張って作ってくれたんだなということは感じられる吹替だった。声優さんたちも良かったけど……やっぱりタラクさんの表現とチャランさんの低音ボイスが好きと改めて思った……。

 人に勧めるなら、やっぱり一度目は字幕で観て欲しいというのが個人的な願い。吹替は文化的な表現などがかなり平らかにされているので、私がエモかったポイントがあまり伝わらないというのが理由。あとやっぱり言語が統一されていると無理があるシーンが存在するから。なんとなく全体を把握していただいた上で吹替で台詞を聴いてほしい。とりあえず複数回観ろ。


 たぶん他の狂人の感想などを読んでからまた書き足すと思う!!!!いやどうかな!!!!長過ぎてスクロールがめちゃくちゃ面倒くせえ!!!!

(それにしても、配信でいつでも観られるようになって一時停止したり字幕を確認したり好きなシーンを繰り返し観られるようになったのはありがたいですね。ますますIMAXのど迫力で見直したくなります。復活してくれ!)

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