『マイ・スモールランド』感想 (2022/5/18)【転載】

(インスタから転載)

“ Welatê min ê biçûk”
川和田恵真監督

『マイスモールランド』
 私は邦画があまり好きではない洋画ファンです。社会派日本映画にちょっと期待しては「そうでもなかった…」となり続けていたので、観ようか迷ったけど「是枝裕和が関わってるし…西川美和も関わってるし…少なくとも嵐莉菜ちゃんは可愛いし…」と観ることにした。

 個人的にとても良かったと思う。
 確かに嵐莉菜ちゃんはどの角度から見ても美しかったけれどそれだけじゃなくて演技も良かった。今回オファーが来たのと同じ理由でオファーが来づらいこともあるかもしれないけど、もっと活動しやすくなると良いな。

 民族やアイデンティティというものは島国な上に閉鎖的な日本人にはとても理解しづらいもので、クルド人たちの「俺たちクルド(誇り)」みたいな感情の強さというか真摯さをキャッチできる観客がどれくらいいるかは分からないけれど、そこもちゃんと描いていたと思う。
 日本人とクルド人、社会と家族の間でずっと橋渡しの役目をせざるを得ないサーリャがつらい(第一子の不幸とも言えるのかもしれない、物心ついた頃には日本にいたであろう妹は見切りをつけてるし…)。家父長制の強いコミュニティで結婚相手まで見繕われているし男友達がいることを良く思われない。日本で育った彼女にはクルドコミュニティに対する疎ましさも少なからずあるが、だからこそラストのあの場面がぐっときた。

 日本以外のルーツを持っていると、割と幼い段階で「自分は何者であるか」という問いにぶち当たると思う。私にその葛藤は分からないが、違いというものが存在してもそれが壁や障害にならない時代が来てほしい。
(嵐莉菜ちゃんが芸名を日本語名にしたのも何らかの色々があったのだろうし…)

 悪い人間なんてパパ活のクソくらいで(ああいう輩は死ななくていいから死んだ方がマシだと思うくらい苦しむといい)、みんな良い人というか普通の人で、その人それぞれの善意が絶妙に苦しい。私は昔から他人の善意が苦手だったので、善意が他者を苦しめることがあるという描写はかなりメンタルに来た。笑
  あと担任の教師の「視野を広くポジティブにさ!」みたいなやつはかなり腹が立ったな…ポジティブと問題から目を逸らすことを一緒にするな…これが elephant in the room か…と思った。

 聡太は良いやつだった…踏み込みすぎず、でも他人事にはしない距離感。これは母子家庭で培われたバランスなのか…?それは偏見か…?キャラそのものというより奥平君の演じ方が良かったのかな。クルドというワードを聞いても調べたりしないんだ…とそこはちょっと引っかかりがあったが。
 個人的にサーリャが「大阪に一緒に行く」と言った時の「…ウス👍」みたいなリアクションが男子高校生でよかった。笑 役が良いのか奥平くんが良い役者なのか分からないけど、また良い映画で出会いたいと思った…どうか量産ラブコメとかには出ないでくれ…。
 パパ活の場面の後に聡太が金を持ってきたのがすごくしんどくて良かった。メンタルめちゃくちゃな時に同じ「金を渡す」という行為よ…聡太がいい奴である&サーリャも憎からず思っているが故のしんどさ。
 あとすごくどうでもいいんだけど、サーリャと聡太が河辺で遊んでる場面で「蚊に刺されそう…」と思ってたら後の場面で奥平くんがずっと腕を掻いていて「絶対刺されてんじゃん…」と思った(サーリャが大事なカミングアウトしてる時に私は何を考えてるんだ)。
 あとサヘル・ローズ氏のドキュメンタリーを見たことがあったので彼女が出てて嬉しかった。

 弟のロビンの拾った家族の石、自分の石が一番大きいのは笑ったけど真ん中の姉さんの石がめちゃ小さいのが地味に気になった…。笑

 日本で難民申請が認められるのは0.7%。移民が増えることによって治安が悪くなることを危惧する人も多いが、それは受け皿の制度に問題がある(治安が悪くなるような受け入れ体制である)ということかもしれない。特に日本は異質なものに対する警戒心が強いが、日本よりずっと移民受け入れが進んでいる国でも似たような問題が起きている。誰もが望むような解決策は存在しないのだろうけれど、もっとなんとかできないものかな…。

 ちょっと前に入国管理センターに収容された難民たちのドキュメンタリー『牛久』をやっていたが、それも観ればよかったとすごく思った。

#movie #film #cinema #kino #映画 #マイスモールランド

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?