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捕虜活用の限界?ー志願兵の重視

中共軍は人員の獲得源として、捕虜を活用していたことが知られている。
しかし、捕虜活用には問題があったようである
そのため、民衆を動員して正規軍兵士にしていく方針が強調された。

おそらく、捕虜の政治意識の低さに問題があったものと思われる。



捕虜で自軍を補充する

中共軍は兵員の獲得源として、捕虜を活用していたことが知られる。
中共軍の十大原則よれば、「わが軍の人力、物力の源はおもに前線にある」という(※)。

※「現在の情勢とわれわれの任務」1947年12月25日
(毛沢東選集翻訳会『毛沢東選集 第八巻』三一書房、1961年)


元捕虜から構成される中共軍

「党内の誤った思想の是正について」(1929年)では、毛沢東は当時の中共軍の問題を指摘した。

ここで毛沢東は、戦闘で中共軍の「俘虜となった兵隊が非常に多く」(146項)、彼らのよって「傭兵軍的な思想」が中共軍に流入していると主張している。
そして、「投降兵や反乱兵をかかえこむ」方針に対して、否定的な見解を示した(157項)。

一見したところ、先の十大原則と真逆の主張であるようにみえる。



捕虜ではなく志願兵

同論文によれば、軍の拡大には「地方赤衛隊や地方赤軍の拡大から主力赤軍の拡大への路線」(157項)を採用すべきだとある。
これは、具体的にはどのような路線なのだろうか。

同節には、以下のような指示も記載されている。
・「闘争の経験を持つ労働者、農民の積極分子をかくとくして、これを赤軍部隊に参加させ、赤軍の人的構成をかえること」
・「闘かう労働者、農民大衆のなかから新しい赤軍部隊を創り出すこと」

政治闘争の経験をもつ労働者・農民から、志願兵を募りたいのだろう。
そして、このような民衆を民兵組織(地方赤衛隊)や地方軍(地方赤軍)に参加させ、そのなかから正規軍(赤軍)の要員を抽出する方式だと思われる。


問題は政治意識の低さか

おそらく、投降兵では政治意識が低すぎるのだろう
俘虜に対して教育を実施する方針(157項)のようだが、それでも限界があったのではないか。

中共軍の「三大任務」の1つとして、政治工作がある。
民衆や敵軍に対して工作を行い、味方に変えていく「任務」である。
捕虜に教育して「三大規律八項注意」を厳守させることはできても、積極的な政治工作を行う将兵にはならないのではないだろうか


参考文献

毛沢東「党内の誤った思想の是正について」1929年12月
(毛沢東選集刊行会『毛沢東選集 第一巻』三一書房、1952年)


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