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【近接戦闘】兵器としての槍5ー世界的な槍・白刃戦闘の役割低下
これまでの記事で、中共軍が槍を活用していた事例を紹介した。
しかし、世界的には銃剣の普及によって槍兵は消滅したとされる。
また、少なくとも17世紀の時点で、白刃戦闘の機会は少なかったものと思われる。
この時点で、戦闘の大部分は射撃戦によって行われていたのだろう。
アメリカ南北戦争、日露戦争でも、銃剣格闘は発生しずらかった可能性が高い。
(しかし、現在の軍隊が銃剣を依然として装備している点を考慮すると、戦闘での主力としては使用できなくても、銃剣には補助的な役割があるのだと思われる。)
このような状況下にあっても、20世紀初頭において、中共軍は槍を活用し、銃剣を重視した。日本陸軍も銃剣を重視していたことで知られる。
このような時代に逆行する現象はなぜ起きたのか。
今後はこれを検討する必要があるだろう。
世界的な槍兵の消滅
一般的には、銃剣の普及によって槍兵は消滅したとされる(※1)。
中共軍が槍を活用していた理由には、銃剣&小銃が不足していたことが大きな理由だと思われる。
つまり、十分な装備があれば、銃剣(着剣小銃)を使用したのではないか。
(そもそも十分な弾薬があれば、近接戦闘自体を実施しなかったかもしれない)
三十年戦争(17世紀)の時点で、白刃戦闘は頻度少ない?
三十年戦争(17世紀)には、すでに白刃戦闘が発生しずらくなっていることをうかがわせる証言もある。
『阿呆物語』のグリンメルスハウゼンは、あるところでこう書いている。「マスケット銃兵はたしかに苦しむところ多い哀れむべき人間だが、惨めな槍兵に比べればずっと幸せな生活をしている。(中略)要するに、私はこれまでに多くの作戦行動を見てきたが、槍兵が人を殺したのをめったに認めたことがない」
グリンメルスハウゼンは三十年戦争に従軍したとされ、そこでの実体験を語っているのだろう。
槍が主力兵器の座から転落しただけでなく、戦闘での活躍の場すら少なくなっているのがうかがえる。
南北戦争(19世紀)での銃剣格闘の「消滅」
以前の記事で紹介したように、南北戦争(19世紀)において「銃剣の役割が完全に消滅」したという主張もあるようだ。
日露戦争でも銃剣格闘は少なかった?
日露戦争の実体験をもとにしたとされる櫻井忠温『肉弾』(中公文庫)においても、銃剣使用の描写は少なかったように感じられる。
日露戦争における事例は、日本語史料が豊富にあると思われるため、より詳細に検討していきたい。
参考文献
※1 田村尚也『用兵思想史入門』作品社、2016年、87項。
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