人海戦術の原因について

朝鮮戦争や中越戦争において、中共軍は「人海戦術」を採用したとされる。
ここでは、「人海戦術」を採用するに至った原因について検討する。



人海戦術の定義

まず、「人海戦術」という用語の意味を再確認する。
おそらく、以下の2つの意味を含んでいるものと思われる。

①敵に対して優勢な兵力の投入
②拙劣な戦法(敵に対して正面から突撃するなど)



①敵に対して優勢な兵力の投入

①について検討する。
以下の記事で述べたように、中共軍は数的優位の確保・兵力集中を重視していた。

また、①に関しては、戦略の常識的な問題であり、何ら批判されるべきことでもない。
そして、これを達成できたのは、政治戦略・師団レベル以上での作戦指揮が適切であったということだと思われる。


②拙劣な戦法(敵に対して正面から突撃するなど)

では問題となるのが、②であろう。

幹部教育体制の問題

まず、下級幹部の教育に問題があった可能性が指摘できる。
上級幹部が適切に集中した兵力を、下級幹部が不適切に運用してしまった可能性である。
十分な軍事知識をもたない下級幹部が多数存在したのではないだろうか
おそらく、幹部教育の体制が十分に構築できなかったことに原因があるように思われる。

また、内戦期は人的資源の供給も「鹵獲」(敵からの獲得、つまり捕虜)に頼っていたため、自分たちで人材を養成するモチベーション自体が低かった可能性も指摘できる。

将官クラスの人材(朱徳、彭徳懐、林彪など)は豊富な印象があるが、彼らは中共軍が養成した人材ではないだろう。
すでに教育を終えていた人材が、中共の理念に共感して結集したものだと考えられる。

現代的兵器(重火器)の不足

また、現代的兵器(重火器)の不足も原因として挙げられる。
航空機との連携、砲兵・戦車との協同など、現代的な戦闘を実施したくても、中共軍には十分な数の現代的兵器が不足していたのである。
そのため、「敵に対して大兵力で突撃する」という一見して拙劣な戦闘法しか採用できなかったのではないだろうか。


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