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青い春〈改正版〉


高校2年生の夏休みが終わって間もない日曜日、僕は女の子の部屋にいた。
淡いベージュのカーテンが開かれ、純白のレースが風で揺れている。
彼女の広い部屋のまん中には白いピアノが置かれ、部屋の隅には白い木の枠のベッドと、同じく白く塗られた木製のタンス。
ベージュがかったピンク色のソファに二人並んで、彼女の作ったオムライスを食べている。柔らかい布製のソファと木製の低いテーブルで食べづらかった。

彼女に対して特別にスキという感情があるワケではないが、運良くこんな機会が訪れたので乗らない手はない。
っていうか、両親がいない自分の部屋に男を招くなんて、もうそういう事しか考えられないでしょ!

「玉子ちょっとやぶけちゃった。でも、おいしいよね?」
「うん。とってもおいしい」
「ほんと?! 良かった」

実際にはそれほどでもなく、ちょっとご飯に混ぜるケチャップの量が多すぎてベチャベチャしている。でもまあ食べられないというほどではない。それに僕だってそれくらいの礼儀は心得ている。初めて来た女の子の部屋で、初めて作ってもらった食事にケチなんてつけられない。どんなものであろうと、誉めておけば、その後のことがスムーズに進むはずだ。そう、僕は今日、大人への道をまた一歩踏み出すのだ。

オムライスを食べ終え、ウーロン茶を口に含む。
彼女が夢中になっているという女性アーティストの曲をスマホから流した。
「ねっ、ここの歌詞とっても良くない?」
スマホの画面を見せるために近づいた彼女の肩が密着する。髪の香りが僕の鼻腔をくすぐる。彼女の体温を感じ、僕のセンサーが反応する。控えめにルージュを塗ったその可愛らしいぷっくりとした唇から目を離せずにいた。

女性アーティストが7曲目を歌い始めた頃、僕は遂に我慢ができなくなった。隣に座る彼女に覆い被さり、彼女の唇に自分の唇を押しつけていた。
「んー、んー」と言いながら僕を押し戻そうと少し抵抗しているようだったが、それでも無理に引き剥がそうというほどではなく、僕は構わず彼女の口内に舌をねじ込み、左手で彼女の右胸をワンピースの上から掴み擦った。右手はワンピースの裾を捲り上げ、彼女の太股へ。
「哲太君たら、だめー、だめー、だめーっ!」
彼女が急に叫び声をあげたから、僕はびっくりして体を起こした。
「今日、私、生理なの」
今度はやさしく諭すような言い方だった。
「あっ、ああ~~」
僕は言うべき言葉がみつからず、頭の中で「生理なの」という言葉だけがずっとリフレインしていた。

彼女の家からの帰り道、ズボンの右ポケットの中で用意していたコンドームを弄びながら、だったらなぜ僕を家に招いたりしたんだろう?という疑問の答えを探した。

「おはよー」
月曜日、教室で会った彼女はいつも通りの元気な笑顔で僕に挨拶をした。複雑な心境ではあったが、僕も普通を装って挨拶を返した。
彼女とはそれ以上に親密になることはなく、誘われることも無かった。僕の初めてはお預けとなったままだった。あの日の「なぜ」に対する解答はずっとわからないままだ。

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