副乳の乳腺炎になった話

母乳を与える親が恐れるもの、乳腺炎。

よく聞くのは、「乳房がカッチカチに硬くなり、痛みやしこり、熱感を伴う」ということだと思う。

私もその一般的な乳腺炎症状も複数回経験しつつ、授乳と搾乳で乗り切って来たのだが、今回全く異なる乳腺炎を経験したので記しておきたい。

副乳とは?

まず副乳とはなんぞや。

副乳とは乳腺組織が通常の箇所以外に存在している状態、
つまり、乳頭や乳輪、または乳房のような膨らみが胸部以外にある状態のことである。

犬や猫など、哺乳類動物にはたくさんの乳房や乳首があるが、子供が何匹もおっぱいに群がり吸っている映像が思い浮かべられるだろうか。

同様に人も哺乳類の進化の名残として、「乳房や乳首が複数」みられることがある。これ、男性の1.5%、女性の5%に見られるもので、決して珍しいものではないらしい。

腋窩〜胸部〜腹部〜鼠蹊部にかけて、ミルクラインと呼ばれる箇所にできやすく、一番現れやすいのが脇とのこと。


副乳との邂逅

初めてその存在に気付いたのは、産後6日目のこと。

右脇下がなんか痛い。腫れてるし、しこりがある??
母乳が滞ってしまうと大変だから、これ絞った方がいいやつ??

…と、ここで患部をかなり触ったり揉んだりしてしまったのだが、これは良くなかったらしい。

ここから私は検索の鬼である。
オタクの検索力を舐めてはいけない。

これか、副乳というやつか、こいつは。

授乳をはじめた母体では、プロラクチンというホルモンが分泌され、母乳の産生がなされる訳だが、
副乳にある乳腺組織も「私も母乳つくる!」と張り切り始めてしまうという。なんてことだ。

ちなみに私は乳輪乳房などの組織は副乳には無く、脇下に乳腺組織が潜んでいるタイプだった。

そこから、検索の結果得た知識で、なるべく揉まぬよう、保冷剤をタオルでくるみ、患部を冷やした。
すると痛みもしこりも消えていくではないか。

お恥ずかしながら、薬剤師の私も、医学生の妹も、副乳についてまるで知らなかった。不勉強な立場で申し上げるのも恐縮だが、マイナーな部位である。

厄介な進化の落とし物を授かってしまったものだと思った。

それからしばらくは、副乳の症状は出ることがなく、忘れかけていた頃、劇的な再会を果たすのである。 (続)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?