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みーちゃんとママ② 公園

みーちゃんの家族は、築二十五年のマンションに住んでいる。
このマンションはママのパパ、つまり、みーちゃんのおじいちゃんが新築の時に買ったマンションだ。おじいちゃんとおばあちゃん、そしてママはここで暮らしていた。ママが結婚したとき、おじいちゃんとおばあちゃんは田舎の家に帰ることにした。それから、ママとパパ、そしてみーちゃんと弟が暮らしている。
マンションの隣には大きな公園がある。
公園の外周にはぐるりと桜の木が植えてあり、春になると近所の人のお花見でにぎわう。
公園内にはドングリの木がある。みーちゃんは歩き始めた一才の頃、ドングリを拾うのに夢中になり、クッキーの空き缶にたくさんのドングリを入れた。そのドングリは今でも取ってある。
さらに大きな公園が、歩いて十分くらいのところにある。
この公園にはテニスコートや野球グラウンド、遊歩道や巨大遊具がある。公園の真ん中には小さな川が流れている。
みーちゃんはこの公園が大好きで、休みの日にはおやつや水筒、レジャーシートを持ってママの自転車でこの公園に来る。そして、巨大遊具で遊んだり、シートの上でおやつを食べたり、シャボン玉をしたり、川に亀を探したりする。
巨大遊具は十年くらい前に建ったものだ。それまでそこは芝の広場だった。ママは子どものころ、そこで体育のマット運動の練習をした。
みーちゃんがお腹にいるとき、ママはお医者さんによく歩くように言われ、この公園の遊歩道を毎日歩いた。三月の終わりにみーちゃんが生まれるまで、大きなお腹を抱えたママは、枯れた草木が冷たい風に吹かれる、曇り空の川辺を歩いた。そのときママが見た風景はとても寂しいものだったのに、みーちゃんと過ごす公園は、緑が青々として家族連れでにぎわい、明るい。
公園の脇には路面電車の小さな駅があり、操車場がある。操車場には今はもう線路を走らない古い電車が数台、静かに停まっている。古い電車はえんじ色、深い緑色。車体が丸く、部品は茶色く錆びついている。
みーちゃんの弟は電車が大好きなので、そこを通ると、
「でんしゃ!」
 と叫んで立ち止まる。ときには弟のために駅まで行って、一駅分乗車して帰ることもある。みーちゃんと弟は電車に乗ると窓側を向いて座り、開いた窓から入る風に吹かれながら、流れていく風景を眺める。

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