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みーちゃんとママ9 ひいおじいちゃんの死

ある朝、ママがスマホを見て
「あら」
と言った。
みーちゃんたちがママを見ると、ママは
「ひいおじいちゃんが昨夜死んだって」
と言った。
ひいおじいちゃんは肺炎で入院していた。ひいおじいちゃんが肺炎になるのは珍しいことではなかった。でも今回はなかなか退院にならず、最近は食べることもできないのだとおばあちゃんが話していた。
その日、ママは仕事を休み、葬儀の打ち合わせや親族に連絡をするおばあちゃんの手伝いに行った。みーちゃんと弟は、いつもどおりパパの自転車で保育園に行った。
夕方、パパが車で迎えに来て、車に二十分くらい乗って、きれいな建物に行った。
おばあちゃんやママが黒い服を着ていた。
「おばあさんは来ないんですか」
とパパが聞くと、
「来たがったけどね。無理するから」
とおばあちゃんが言った。
小学生になる従兄のお兄ちゃんもいた。みーちゃんと弟は大喜びしてふざけ始めた。
大きな部屋にはひいおじいちゃんの写真があって、花がたくさん飾ってあった。その前に白い大きな箱が置いてあり、みんながのぞいていた。みーちゃんと弟もパパとママに抱っこされて見に行った。
そこには、ひいおじいちゃんが寝ていた。
「みーちゃん、ひいおじいちゃんだよ」
ママが言った。
「ひいおじいちゃんどうしたの」
みーちゃんは聞いた。
「ひいおじいちゃんはね、死んじゃったのよ」
とママは言った。
その後、みんなイスに座った。お坊さんがお経をあげた。みんな順番に立ち上がって、ひいおじいちゃんの前で手を合わせた。みーちゃんもママと一緒にそうした。
別の部屋に行くと、ジュースやお菓子が置いてあった。
みーちゃんと弟はジュースやお菓子を食べ、従兄のお兄ちゃんと走り回って怒られた。パパはビールを飲んで顔が赤くなった。
次の日は保育園には行かず、みんなでまた昨日のところに行った。同じお坊さんがお経をあげて帰っていった。その後、みんなでひいおじいちゃんの寝ている白い箱の中にお花を入れた。
それから車で移動することになった。三十分ほど車に乗っている間に、みーちゃんは退屈してしまった。お腹もすいていた。ママは簡単なお弁当を車の中でみーちゃんたちに食べさせた。
大きな建物の中に入り、みんなについて行くと、ひいおじいちゃんを入れた白い箱があった。それから銀色の壁の中に、ひいおじいちゃんが入れられた。
「ひいおじいちゃん、どうするの」
「焼くのよ」
ママは言った。
おばあちゃんが、赤いボタンを押した。
その後、みーちゃんたちは外庭で遊んだ。おばあちゃんは知らないおばさんたちとお茶を飲みながらおしゃべりしていた。
しばらくするとみんなが移動した。
みーちゃんたちもついて行くと、みんなが立っている前に大きな台があって、そこには白い乾いた石のようなものが並んでいた。
「怖かったらあっちにいてもいいのよ」
おばあちゃんが言った。
みーちゃんと弟はママとパパに抱っこされて見た。
「ひいおじいちゃんなの。ホネホネになったの」
ママは言った。
「どうして」
「焼いたから。焼いたら骨になっちゃうのよ」
とママは言った。
それからみんなで順番におじいちゃんの骨を大きなおはしで取って、壷の中に入れた。
帰る車の中で、みーちゃんと弟は寝た。気がついたら家のソファの上にいた。
夜眠るとき、みーちゃんはママに聞いた。
「どうしてひいおじいちゃん焼いたの」
「焼かないと臭くなっちゃうからよ」
 ママは答えた。
「ひいおじいちゃんもういないの」
「もういない」
「ママも死んじゃうの」
「ママも死ぬよ。いつかね」
「ママもホネホネになるの」
「うん。ママもホネホネになる」
「みーちゃんも死ぬの」
「みーちゃんもまあ、いつかは死ぬね」
みーちゃんは怖くなった。ママの腕をぎゅっとつかみ、つねった。
「痛い」
ママが言った。
みーちゃんはママの腕をつねりながら、ひいおじいちゃんのこと、ひいおじいちゃんのホネホネのこと、ママが死ぬこと、自分がいつか死ぬことを考えた。

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