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「アイデアとかデザインとか」を読んで、地道な試行錯誤を繰り返そうと思った話

「山下さんの好きそうな、かっこいい突っ張り棒が展示会に出てましたよ」

そんな声をかけられたのは、まだ会社勤めだったころだ。
黒くてかっこいい突っ張り棒が、いろんなパーツと組み合わさって家具のように使えてしまう。しかも天井と床を突っ張るという発想には度肝を抜かれた。

その後も雑貨屋さんで気になったアイテムや、ネットで見つけたかっこいいものを見ていると、ひとつの共通点が浮かび上がってきた。
どうも「TENT」という名前のクリエイティブユニットがデザインをしているらしい……と。

そこで得た興味は、自分自身が独立してお店を始めたことによって、ぜひTENTさんのデザインされている商品を販売してみたい!という想いにつながったのは自然なことで、特にTENTさんのデザインされたアイテムの中でも「SLIT」というクリアホルダーの発展版のようなアイテムは、定期的にずっと売れ続けている。

そんな「TENT」さんが「アイデアとかデザインとか」という書籍を出されることになった。

しかもありがたいことに献本という形で一冊いただいたので、今回はその内容を読ませていただいた上で、自分のお店運営も振り返りながら感じたことをご紹介させていただきたい。

オリジナル商品を世に出したいと思ったら

「こういう商品があれば買うのに! なんでどこのメーカーも出してないんだろう?」

そんな風に思うことが一度や二度、誰しもあるのではないだろうか。
アイデアというのは確かに大切で、既に大量のモノが溢れた現代において新しくモノを作るには、なにかこれまでにない視点が必要になることは間違いない。

でも、なんの経験もない状態でメーカーが「そのアイデアとってもいいですね! 採用!」と言ってアイデアを形にしてくれるかといえばもちろん難しい。
そんな状況を打破する一歩として、この本では「見積もりをとる」大切さが紹介されていて、思わず本を読みながら「うんうん」と頷いてしまった。

うちのお店でも二年前からオリジナル商品を作り始めた。
最初の商品を作る時は試行錯誤の連続で、大変なことはもちろんいくらでもあった。
でも乗り越えなければならないハードルの高さは「見積もり」に大きく関係する。

価格はどのくらいに設定できるかも、見積もりの金額次第。
もし見積もりの金額が高くても、一度に作る量を増やせば原価が下げられるかもしれないけれど、数千個の商品を作るとすればどこでそれを売るのか? どれくらいの期間で売り切れるのか? そもそもどこに保管しておくのか?といった様々な問題が浮かび上がってくる。

クラウドファンディングを活用すればなんとかなる!と思いがちだけど、クラウドファンディングをするにしても商品写真撮影や情報の発信など、超えなければならないハードルはたくさん出てくる。
うちのお店でもクラウドファンディングは「実現ができるかわからない夢を叶えるため」ではなく、「ある程度実現可能性が見えている商品の需要を確認しつつ初回生産数を見極めるため」にやっている側面が大きい。
更にはクラウドファンディングには通常20%弱の手数料もかかってくる。更に超早割で定価の◯◯%安く……とか、送料無料にするかどうかといったことも考えなければならず、結局は数字とにらめっこしておかないと痛い目を見る。

そういった自分自身が体験してきた現実にズバッと斬り込んで、TENTさん自身の経験も知ることができるというのが、この本の面白さの一つだと言えると思う。

デザインからお店まで、お店からデザインまで

TENTさんが下北沢にお店を出したときには本当にビックリした。
それまでもオリジナルアイテムをネットで直接販売されたりしているだけでもすごいな……と思っていたのに、リアル店舗を出されたのだ。
しかも、お店にも時折実際にTENTのみなさんが立たれるという、なんとなくなコンセプトショップみたいなものとは全然違う場を持たれたことに衝撃を受けた。

別にそれでうちのお店の売上が……みたいなことはもちろん影響があったりするわけではない(東京と大阪で離れているし)
しかしながらなんだか無性に悔しいというか、「やられた!」という気持ちになった。

その具体的に説明できない「やられた!」という感覚は、今回書籍を読んでようやく言葉になってきたように思う。
デザイナー3.0という言葉で、企画・デザイン、そして販売まで行う、ある意味根源的な「商売」のありかたに触れられているのだけど、分業で効率的になった近代の役割分担した仕事でなくて、小さな個人や会社でも主体性を持って企画から販売まで全てに携わる。そういったありかたの面白さや強さを、思えばTENTさんのリアル店舗から感じ取って「くやしい」と直感的に思ってしまったのだと今は思っている。
デザイナー3.0あたりの詳しい話はぜひぜひ書籍を読んでみてほしい。

さて、TENTさんとうちのような小さなお店を比べることはおこがましいけれど、うちもじっとしていられない!と新しい試みを始めた。
それは「文具と雑貨の移動販売車」を作るということ。

正直今からデザインを学んで、デザイナーさんレベルの力を得ることは難しいのではないかと思っている。けれども「販売」に関することなら、10年近く携わってきているしまだまだできることはある。

いろんな雑貨を車に積んで、北海道から地元関西へ移動しながらいろんな人と出会い商品を売る。
販売の後の「物流」にも少しタッチするような試みにしていけたらと考えている。
こういったチャレンジも、デザイナーという既存のイメージの枠を飛び出して活躍するTENTさんを見てきたからこそ「やってみよう」と思えたわけで、改めて感謝しかない。

アイデア「とか」デザイン「とか」

あの商品が成功したのは「このアイデアが素晴らしかったからだ」とか、「このデザインが良かったからだよね」という話はよくきく。
でも、その話はきっと後からだから言えることで、キレイすぎるようにも思う。

過去に読んだバルミューダさんのトースター開発秘話の説明を、「きれいにつながりすぎている」と糸井重里さんが突っ込んでいたことを思い出す。
あとから結果を見て話せば、あの時のこのひらめきが!みたいなきれいな話に落ち着くのだけど、アイデア「とか」デザイン「とか」の「とか」の部分がなければ、そもそもそのアイデアたちは形になっていないかもしれない。

一見無駄にも見えた「とか」の重要性が、TENTさんの書籍ではたっぷりと含まれて書かれているし、多種多様な実践を踏まえた引き出しの多さで語られているので、ぜひデザイナーを目指す人も、お店を開きたいと思っている人も、どちらもやろうとしていたり、既にやっていたりする人にも、幅広く読んでもらいたい本だと感じました。
そして、このnoteがTENTさんの書籍を手に取る一助となれば嬉しく思います。

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