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迫りくるインボイス制度 Tから始まる13桁と戦うために文具を作った話

なぜレシートをスマホでスキャンするために文房具を作ったんですか?

そんな質問をされることが増えた。
それは「レシートスキャンボード」などという、名前通りに「レシートをスマホのカメラできれいにスキャンする」ための道具をオリジナルで作って、販売していることが原因だ。

別に家計簿をつけたいわけでも、レシートをスキャンしてポイントを集めたいというわけでもない。
もちろんレシートを撮影して毎日眺める趣味もない。

どちらかというと仕事のため。
2023年の10月から始まるインボイス制度以降の日本において、どうやって経理業務を効率化出来るか……。
そんな業務改善のために昨年2022年に、まずは自分用に作った道具が、「レシートスキャンボード」だった。

ここで「インボイス制度」という単語を聞いた瞬間、自分には関係ないと思われた人もたくさんいるだろう。
声優さんやアニメーターさんが困っている様子をニュースなんかでご覧になられた方も多いのではないかと思うし、それもインボイス制度が起こす一つの大きな変化と言うのは間違いない。
自分自身も個人事業主として仕事をしているので、影響だって計り知れない。

けど、違うのだ。
インボイス制度が始まって、経理業務が大変になるのはどちらかといえば会社でサラリーマンとして働くあなただったりするのだ。

インボイス制度について調べていけばいくほど、「会社における経理業務の面倒さ」がイメージされたのは、私自身も会社で10年間働いてきたからだ。
インボイス制度開始まであとわずか3ヶ月足らず。
今回はそんな直近に近づいたからこそ実感を持って読んでもらえる「会社の経理業務どうなるねん」問題から、個人の文具屋がなぜオリジナルの文具を作ったのかを改めてご説明したい。

Tから始まる13桁

マジカルナンバー7±2なる言葉を聞いたことがあるだろうか。
ミラーの法則とも呼ばれるこの言葉は、アメリカのハーバード大学の心理学者、ジョージ・ミラー教授の論文「The Magical number seven, plus or minus two」で登場し、人間が短期記憶に保持できる情報の数は7を中心として±2。
つまり5~9であることを主張していると受け取られて、認知心理学の研究の先駆けとなったという。
携帯電話の番号は11桁だけど先頭の「090」や「080」といった部分はパターン化されているので、ちょうど短期間記憶できるギリギリとも言えると思う。

となると「13桁」の番号ともなると短期記憶では怪しい。
13桁を数字の単位にすれば「1〜9兆円」の位だ。
日本を代表する大企業でもなければ、日常的に目にする機会も少ない桁数と言える。

なんでこんなに「13桁」の話をするかといえば、インボイス制度が始まると一番わかりやすく始まる変化として、「13桁」の数字がレシートや請求書に表示されるようになるからだ。

イメージされるレシートは実際こんな感じだろうか。
インボイス制度に登録している事業者は、この13桁のインボイス登録番号を記載することで、領収書を受け取った側が消費税分を控除に使える証拠書類として使用できるようになる。

さて、この13桁。
だからどうしたの?
会社で働く自分には特に気になるものではないし、会社が勝手に取得して番号を記載すればいいんじゃないの……ぐらいに思うのではないか。

ところがどっこい。
インボイス制度はここからが大変なのである。
インボイス登録番号はただの13桁の番号だ。
あってはならないことではあるけれど、「適当な番号を表示」したり、「他社の番号を表示」している不正な事業者もいるかもしれない。
この13桁の番号。本物ですか??という確認作業を、領収書や請求書をもらった側がやらないといけないのである。

冗談のような話だし、聞いた瞬間自分もくらくらしたけれど、この記事を書いている制度スタート3ヶ月前を切った今でも、その基本姿勢は揺らがない。
じゃあどうやって確認するのか?
国税庁は「インボイス制度 適格請求書発行事業者公表サイト」を作っているので、そこから検索して確認することが出来るのである。

この通り、既に適格請求書発行事業者公表サイトは稼働していて、登録番号を検索することが可能となっている。
さすがにネットで1個ずつ検索するのが大変という場合には、前月末日時点までの全件データをダウンロードして確認するなネットでもできるし(個人情報で色々と前段階で問題もありました)、会計ソフトによってはインボイス番号の検索についても対応してくれていたりする。

例えばこれは自分の使用している「freee」というサービスの画面だけれど、このようにインボイス番号を入力すれば、インボイス登録番号について、登録されている情報を確認することができる。

あーこれなら確認も簡単だね。やっほー。

とはならないことを、経理に携わるみなさんならすぐにイメージしていただけるのではないか。

これまでの経理作業でさえ、レシートの内容をきちんと読み取って、勘定科目を分けて、消費税を10%と8%で分けて集計していくだけでも莫大な量になっていたのに、13桁の番号を手入力なんて想像もしたくない。

となれば、頼りになるのはOCR。
OCRは、Optical Character Reader(またはRecognition)の略。
平たく言えば画像データのテキスト部分を認識し、文字データに変換する光学文字認識機能のこと
ネットのサービス等でも撮影した写真から文字情報を抜き出したり、ここ数年で気軽に使える場面も増えてきた機能だ。

freeeでも既に自動で判別する機能は組み込まれており、この通り手書きでの番号だったとしても自動で13桁を正しく読み取ってくれる。
更にOCRを使えば、領収書の「日付」「金額」「税率」はもちろん、書かれている品目から「勘定科目の推測」といったところまで自動でやってくれる。

会計ソフトがこのように効率を上げてくれることで、なんとかインボイス登録番号の確認業務は効率的に処理できる可能性が出てくる。
もちろんインボイス制度によって、インボイス登録番号の確認という非効率極まりない業務が発生している訳だし、そのために会計ソフトを導入しなければならない企業の負担や会計事務所・税理士さんの制度対応に支払うコストは大変なものとお伺いしているので、すべて解決された訳でもない。
1万円未満の領収書等については、売上高1億円未満の個人事業主や会社はインボイス登録番号の有無に関わらずを仕入れ税額控除を受けられるという少額特例なる制度も生まれたりしているけれど、そういった制度の恩恵を受けられるのはどちらかといえば売上の小さな事業者だ。

他にもインボイス登録番号がない場合の税率への対応(数年は緩和措置があるため)や、電子帳簿保存法の2024年からの改正など、経理担当の方を襲う複雑な環境の変化は山ほどある。
ただひとまず、インボイス制度において「経理業務の手間」が襲いかかるのは、売上規模がしっかりとある会社のサラリーマンであることが少しでも伝わったかと思う。

レシートのスキャンは快適か?

レシートをデータとして取り込む。
そうなった時に真っ先に思い浮かぶのは「スキャナー」の存在だ。
古くは会社に1台は鎮座する大きな「複合機」
この頃で言えば小型のスキャナー専用機をオフィスに置いている企業もあるのではないか。

しかし、会社の業務を効率化するために社員1人1人に高価なスキャナーを配るのはなかなか余裕のある会社にしか出来ない。
そんな時に役に立つのが、既に誰もが1台は持っている「スマートフォン」だったりする。

誰もがスマートフォンのカメラで写真を気軽に取れるこの時代。
スマホのカメラの性能はどんどんと上がり、現在ではスマートフォンのカメラで撮影したレシートの画像でも、きちんと要件を満たしていれば領収書の原本の代わりとして意味を成す時代となっている。

スマートフォンに会計ソフトのアプリを入れておけば、社員が自分のタイミングでレシートを撮影し、OCR機能によってインボイス登録番号を始めとする情報を推測して入力。なんならそのまま電子帳簿保存法もきちんと基準を満たすことで、レシートはデータとして保存し、原本は保管するにも場所をとるので廃棄していく……といった時代が近づいてきている。

ただ、スマホカメラを使ったスキャンにも大変なところはある。
まず、余計な情報がうつらないようにデスクを片付けておく必要だってある。

そして、いざ撮影しようとすれば、レシートを持つ指が写ってしまったり、スマホの影がレシートにかかってしまったりと結構煩わしかったりする。

更にあるあるなのはレシートがぐちゃぐちゃになってしまった時。
後で必死になって伸ばしても、しわしわになったレシートは机に置いただけではでこぼこと起き上がってきれいに撮影できない。
じゃあ、クリアホルダーに挟んで撮影すればいい……と思って試してみると天井照明を反射してしまい、なかなかうまく撮影できなかったりする。

そんな煩わしさを解決するために昨年オリジナルで作ったのがこの「レシートスキャンボード」だ。
低反射素材のシートが天井照明の反射を防ぎつつ、レシートをきれいに伸ばし、どんどんと撮影が捗る。
その効果は、自分自身確定申告でも実感できたし、2023年上半期のレシート100枚近くも半日で撮影から登録まで完了できるぐらい役立っている。

ありがたいことにメディアにもとりあげていただき、既に紙ものの電子化に悩む多くの人々から、半年間で1000冊以上をご注文いただく形となった。

また、レシートスキャンボードの交換用パーツとして用意していた低反射シートは400円と安価で色々な用途に利用できると話題となり、こちらもたくさんのご注文をいただいている。
中には既に会社で電子化を進めている企業の備品として採用いただき、2000枚を一括導入いただくなど、日本の色々なところでお使いいただくことが出来ている。

ぜひレシートのスキャンに苛立ちを感じたら、レシートスキャンボードのことを思い出していただければ嬉しい。

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