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長くまがりくねった道7

インターネットの黎明期
1900年代前半の時期、私はK社のキャンペーンで教育を受けたコンピュータを活用した仕事の改善にとりつかれていた。世の中ではまだまだ一般化していなかったが、インターネットという言葉が普及し始めていた。webサイトやホームページなどという言葉は一般化していない時期では、インターネットがビジネスになるなどということは考えもつかなかった時代である。
その時期に、これからはインターネットの時代が来るとして私のいた会社ではある危機感があった。それは、インターネットがどこまで発展するかはわからないけど、紙のダイレクトメールなんて無くなってしまうのではないかという心配である。そこで、当時先進的にインターネットの研究をしている方のところに質問に行った。その時言われたのは、インターネットといっても、所詮は通信手段でしかないので、すべての紙による通信手段に置き換わることは無いだろうという結論であった。
そんな時代ではあったが、私は外部の企画屋さんと共同で挑戦したことがあった。プレミアムキャンペーンの仕事をいくつか同時に受注していた当社にとって、今でいうポータルサイトが実現できないかという先進的な企画だ。その当時出始めていたホームページ制作会社に依頼して、自動車メーカーや化粧品メーカー、お菓子メーカーなど複数のプレミアムキャンペーンを掲載して、そのページから応募ができたり、商品の紹介ページに行けたりするものを、試作で作り当時はまだネットが普及していないので、CDに焼いて試作版を作成した。そして、会社にも提案するのと同時に広告代理店にも持ち込み提案を行った。
結果は、企画自体を受け入れるには時代がついてきておらず、実現はしなかったが、あの時本当に企画が実現していれば、一つの会社が作れるぐらいの斬新な企画であったと思う。
それから数年して1995年Windows95が発売されて、世の中は一気にインターネット時代に突入するのである。あの時なぜ会社を飛び出してその世界に行かなかったのかと、あとになって後悔してもしかたがなかった。その当時の世相を表す言葉は、その当時の会社の社長から言われた、「インターネットは金にならない」という言葉だ。その言葉から数年後ネットビジネスが全盛を迎える時代が来たというのに。先見性がないことの恐ろしさであった。
同じ時期私は19年間務めた営業部門からシステム部門へ異動となった。当時はまだPCが普及しておらず、コンピュータといえば汎用機かオフコンと呼ばれる機械しかなかった。システム部門といっても、ほとんどが外注での処理を行う部署で、専門的な知識などない人間が担当していた。この手の仕事はどこに依頼すればよいかを知っていれば、仕事が流れていた時代である。その後、1995年にWindows95が発売される頃になると、PCを使って処理をするようになってきた。あわせて、業務用プリンターを導入して出力業務を内製化するようになった。これらのコンピュータ処理の内製化は、正式に教育を受けたわけではなく、個人的に独学でコンピュータ処理を学んでいくというのが実情だった。
PCのアプリケーションを使えば、自分でプログラムを組まなくても仕事はできる。アプリケーションをどのくらい勉強したかによって、仕事の効率は格段に上がっていく。すると、独学でどれだけ多くのアプリケーションを勉強したかが、その人の実力になるのである。
この状態は、組織的にコンピュータの教育をしてこなかったつけであることはあきらかだが、それだけPCによる業務革命がすごいスピードで進んだということだ。
システムなどというにはおこがましいが、いわゆる「データ処理」と呼ぶような業務部隊が出来上がっていたのである。本格的なシステム構築が必要な場合は外注の専門会社に頼まなくてはいけないが、日常的なダイレクトメールで使う宛名を処理して出力するような仕事がほとんどであった当時は、このような半素人集団で毎日の仕事をこなしていた。PCといえどもコンピュータなので、命令したことしか処理はできない。人間のように「この部分は常識的に考えて」などということはコンピュータはやってくれない。たとえば、宛名を出力するのに、住所と会社名、個人名を出力しようとしたら、その人の役職も当然出力しなければならないが、自分が気づかなければ役職は抜けてしまう。こんな初歩的なことでもコンピュータへの命令をひとつもらせば、「常識的にわかる」ようなこともできない。この頃、私は部下を見ていてこの人たちは特殊な人種だと思うようになってきた。たとえば、ミスが起こっても、自分たちの手から離れてしまえばだれも気付かずにダイレクトメールは発送されてしまい、あとになってミスが発覚することになる。そこで、なぜこのような事が起こったのかを調査すると、コンピュータへの命令で抜けていたことがわかる。私が違和感を覚えたのは、その理由が判明したことで「なるほど」と言って済ませてしまうこの人たちの考え方だった。

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