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【ストーリー】きんまんが忘れられない1日。

きんまんにとって最も忘れられない1日。


あれは去年の1月くらいでしょうか。

恵比寿の会員制バーに呼ばれました。

発信者つながりで恋仲だった女の子。
(仮にミヨコとする。)

夜にその子から突然連絡がきて、親友を紹介したいと言われた。



僕はJRに乗ってそこにサッと行った。

いたのは芸能人だった。

Instagramのフォロワーも50万人くらい?

の同い年の女性だ。




そのバーに入ったとき
僕はとっても気圧された。

完全なるアウェー。

これから僕は「品定め」される。

この親友からバッテン評価を貰えば
僕とミヨコの関係は終わる。

そんな予感があった。



席につく。

横の席にミヨコがついた。
目の前にはその芸能人が座った。

ハイボールを注文する。
グラスを傾ける。 

ツーとグラスを水滴が伝わった。

一挙手一投足まで見られてる?

そんな気がした。



「ふーん。お金持ちだって聞いてたけど。意外と”私達”と同じだね。」



服をみたミヨコの友達。

のっけにこう言われたように記憶している。

とりあえず”モブ男判定”からは
遠ざかったようだった。

そこからミヨコとの仲について聞かれた。




何を言ったかは覚えてない。


とにかく堂々と話すことを心がけた。

話し相手がさも芸能人ではないかのように。

さも一般人かのように。





でも、、、。

狼狽していたのだろう。

ボロは直ぐに出た。





「占おっか?」

ツイツイ言ってしまった。

人は弱気になったときに
得意な会話パターンに頼る。




「ふぅん。じゃ、やってみて。」





高圧的な態度で返された。

焦りもあったのだろうか。

ミヨコを気にして、面目もあったのだろうか。






凄まじいプレッシャーを感じた。

占いがはじまった。






僕は第一声でこういった。

「君の事が視えたよ。君の魂はミラーボールみたいだよね。」

「多面的だ。キラキラ輝いてるけど、中身は見えない。」

その女性が目を見開いたのに気付いた。









どうだ?

図星をつけたか?

効いたか?




「きんまんくん。だっけ?キミもっと本読んだほうがいいよ。」






彼女がこう返してきた。

噛み合わない会話。



でも…。

僕は頭の中で何かが切れる音が聞こえた。

プッツン。

そう、これは堪忍袋だ。





そんなこと言わないでくれ…。

本なら読んできたんだ。

金持ち父さんは10歳で読んだ。司馬遼太郎はほぼ制覇した。ローマ人の物語も読んだ。シェークスピアも引用できるし。老師も孫氏も直ぐにソラで暗唱できる。
太宰も芥川も谷崎も中島敦も何周もした。江戸川乱歩だってドグラ・マグラだって読んだ。





なのに…。

この俺に本を読めと?

この小娘め。



メロスは激怒した。




「少なくとも君よりは読んでるよ」


大声で言ってやった。

子供じみたこと言ってるのは分かってる。

引っ込みはつかない。

……。

………。

あぁ。

言っちゃった。





その後は何を言ったか覚えてない。

額を突き合わせるくらい
ガンを飛ばして
何かを言い合っていた。





ミヨコのことは
いつしかサッパリ忘れていた。




最悪の気分で泣きそうだ。

酔に酔って全て忘れたかった。

自分が、恥ずかしい。




翌朝。

ミヨコのベットで起きた。

「なんであんなに言い合ってたの?私のこと奪い合ってた?」

ミヨコは笑いながら聞いてくれた。

こいつはズレてるのかズレてないのか…。

よく分からないところがあった。





「いや。本を読んだら?って言われたから。お前より読んでるって返して…」

「そっから喧嘩腰になったんだよね。」




唖然とされた。




「それは駄目だよ。だって著者だよ。本出してるんだよ。あの子以上に本を読んでる子はいないよ。」

「あぁ。悪かったよ。」

こう謝るのが精一杯だった。





分かってる。

本を読めといったあの子は

「本を深く読みなさい」

と言ったんだ。





彼女は日夜ドラマの台本を読み込んでいるんだろう。

毎日毎日。

読み込んでいるんだろう。




その努力量と熱量は並々ならぬものがあるはずだ。

そんなことは分かってた。

そんな彼女が本を読めといった。




それは情緒や演技や意図や経験値など、

そういった何かがあなたには欠けている。

だから”深く”読み込みなさい。

ということだったんだと思う。




くそ。

渋々ながら彼女の言うとおりだった。





帰り道。

温かい風と二日酔いの頭を振りながら東京の坂を登る。

どうやったら太刀打ちできる?

そう問うてみても、答えは無かった。

余裕。
自信。
覇気。

あの芸能にかぶれた小娘の全てを唾棄したかった。

でもはねのけられなかった。

頭にネバネバしたものが巻き付いたのを感じる。

道のりは長そうだ。

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