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相談事例と天風哲学(事例-19)24

(菓子製造業の例-19)
観光地に立地している当社は3代目と続く老舗の菓子製造・卸・小売業である。古くから土産品などの高級菓子なども扱い、品質、味、見た目とも優れた和菓子店である。この地に2店舗を構えていたが、観光地であるという立地条件から春先から秋頃までは安定しているが、冬場は客足が途絶える。この対応策のため卸売りを強化、売上拡大はできたものの利益が出ず、過去9年間のうち8年間が赤字となっている。
 
社長はM&Aや廃業も視野に入れての相談となった。しかし、社長の持病は悪化、相談後3ヶ月後に死去、そのあとを誰が担うのか、従業員は20数名、固定客や取引先もあり、破産を考えるが決断はできないでいる。そこで、元金返済の緩和であるリスケを実行し、その間に再建の手法等を検討することとした。できれば前社長の娘さんを社長にして再建を考えているが、スポンサー探しも含めて検討しているところである
 
当社の窮境原因は明確であり、製造原価が大きいこと、逆にみれば利益の取れない取引が続いていた結果である。しかも、売上高拡大のため卸売りに手を出し、結果的に薄利多売の経営体質となった。当社の歴史、信用力、ネームバリュー、味や品質などは申し分なく、リピーターは観光客や地元住民にも及び、かなりの固定客に支持されている。そのため安売りに走る必要はない会社であった。
 
当面の間は自力で乗り越えていこうと、社員を集め現状を説明、さらに問題点や課題を明確にして再建に取りかかった。この話が出てから約5ヶ月が経過、現在は業績もみるみる回復している。社員はまじめで実直、最近では前向きにとらえている。原因や課題が明確となれば、あとは実行するのみであるが、確実に成果が出ているのは的確な指摘とそれを素直に捉えて実行している従業員の動きである。
 
現在は活性化協議会に任せ口出しは控えているが、自力による再建も全く夢の話ではなくなっている。方向性さえ明確であれば、あとは全従業員が一丸となって取り組むだけである。
 
今回の事例を天風哲学の観点で振り返ると、第一に前社長の経営に対する考え方や取り組みに問題があったと思われる。天風氏は、「あなたの仕事が事業として成り立っているのなら、それは少なくとも現在は自分の利益を上げると同時に相手の利益にも役立っているのである」と明言している。最低でも自社の経営が成り立つ程度の利益を獲得することは会社経営の前提であると同時に当然のことである。

第二に、現在取り組んでいる改善策は、今回の失敗を糧に悔い改め、反省して新たな実行に移している。すなわち、天風氏は「たとえ事業がうまくいかない時でも、間違いがあったのを天が教えてくれてると考えなさい。例えば事業に失敗したときは、“俺は運が悪い”と思わないで、“事業する場合の心構えなり、方法なりに、大きな間違いがあったことを、天が教えてくれているんだなあ」と思うことと言っている。

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