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天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 19

社長の経営におけるける意思決定は重要(19)
「経営が行き詰る」、「経営悪化に陥る」という事象は、売上高や利益が少ない、あるいは経費や返済金が多い・・・など資金繰り悪化が要因となっている。特に売上高と経費とのアンバランスから必要利益が得られないなどによる。
 
では、売上高の多寡に影響する原因はどこにあるのか。例えば商店であれば、商品、品ぞろえ、価格、接客、立地、競合、売り方などが要因として挙げられる。この要因のどれかに致命的な原因がある場合と、いくつも要因が重なり合って起きる場合もある。また、競合する同業者の存在や生活様式など時代の変化が買い物行動などに影響する場合もある。
 
仮に商品に問題があれば商品を代え、価格に問題があれば売価を下げるなどの処方箋を施すことで改善の道につながる。しかし、一つずつ各要因を改善しても窮境状態から脱皮できない場合がある。
それは当社(当店)の存在価値が失われた時に起きる。当社がいくら努力しても、適正利益で商売したとしても経営が成り立たないという事象が起きるのである。これは当社の役割が終了したことを意味し、当社を利用していた人たちが当社以外のところで満足できる状態に陥ったからである。極論すれば、現在の役割や機能提供では利用者にとって満足を与えることができないからである。
 
提供する商品やサービスの機能変化、そして提供を受ける利用者の価値観などの変化などに対し、企業側は適正かつタイムリーに変化していかねばならない。従来の提供物やサービス、あるいは提供のやり方、価格などが変化についていけず、徐々にじり貧に陥ることは多々起きるものである。
問題は社長がこれらの現状を的確につかみ、対応策を打ち続けていくことが必要であるが、タイミングを失い、あるいは対応策に問題があったりすることもある。
 
いくら努力しても、自社以外の外部からの大きな波によって影響される事象が起きている。例えば、大型店の郊外進出、インターネットの進展や宅配便による購買パターンの変化などに的確に対応することは難しくなってきた…などである。
 
これら窮境原因の引き金は自社以外の外部環境の変化で起きことが多いが、例え直接な要因が外部環境にあったとしても、その外部環境に的確に適応できなかった自社(社長)に問題があったと考える必要がある。最高の意思決定者である社長の判断は、常に時勢を読み取り、判断し、意思決定を行わなければならないからである。
 
そして社長は窮境状態に気づいたときの対応が重要なのである。時には社長たる自分の能力、適応力に問題があると自覚すれば、他の者の力を借りるとか自ら潔く退くか、あるいは企業としての役割を終えるかなどの判断ができるかどうかである。
私の経験から言えば、残念ながら「何とかなる」との判断からソフトランディングなどの好条件のタイミングを失しなってしまった例が少なくなかった。
 
時代の変化とともに、社長自身の変化も必要なるが、この見極めを良く自覚することが重要な時代に入った。社長の立場としては経営の続行のみに目を奪われ、目先の状態のみに没頭しているが、やり直しは何回でもできるので早期の”気づき“が必要である。
一旦廃業を決し、改めて出直すこともできるし、また他の職業に就くとかの方法もある。重要なのは社長自身が現在の状況をよく見直し、経営の継続以外の方向にも目を向ける余裕が必要なのである。
事業転換、M&A、廃業などの意思決定は、決して後ろ向きだけの対応ではない。社長の持つ資質や考え方、そして技術や経験などが、現在の市場にうまく活かされない状態を招いただけであり、改善策が見当たらないと判断したなら潔く撤退するのも重要なのである。 
 
経営とはゴーイングコンサーンでなければならないといわれているが、将来を見据えたとき、時には正しい終結(廃業)の判断も必要なのである。
判断が遅かったり、悪い判断に陥ってしまうと、今以上の経営悪化を招き、多くの方に迷惑をかけることになる。今なら、従業員や取引先、顧客など、他人への迷惑を最小限に抑え、廃業などの道を選ぶのも、社長の立派な意思決定であると評価できるのだが…。
 

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