Bd.4: うた浴び、憩い、陽 与う。

「ほんやのほ」の回文読書会 “よむうたうむよ” に参加した。
私が参加するのは今回が5回目。
毎回、あししげく通っていることに気づく。

この“よむうたうむよ”こそ、幡﨑が回文に魅了され、引き込まれ、
幡﨑を回文愛好家たらしめた、名実ともにルーツといえるイベントだ。

“よむうたうむよ”に参加するまで、
私は回文の存在すら意識していなかったのだけれども、
作ってみるとこれが面白い。

言葉をひっくり返してみて(逆から書いてみて)も
意味がつながるか、試行錯誤を繰り返してみたり。

取り掛かりに考えていた方向性とは全く違う文ができあがっていたり。

そして何といっても、
「回文をこしらえている間は回文とだけ向き合える」
ことが、非常に大きなメリットだと感じている。
何物(何者)にも邪魔されることなく、
ひとつのことに没頭できる時間を持てるのが
この上なく快く、心地よい。

文字通り、全身で回文を「浴び」た私は、
気がつけばすっかりとりこになっていた。


“よむうたうむよ”では、毎回のお題に合わせて、
おのおの持ち寄ったキーワードを出し合って
回文=“よむうた”を生み出していく。
他の人のキーワードから、自分にしっくりくる回文が
できあがることもある。
もちろん、自分の持ち寄ったキーワードが
他の人の手によって素敵な回文になることもある。

生み出し方は人によってさまざまで、
個人のくせだったり、志向だったりがはっきりと現れる。
ふだん気づいていない意外な志向が、回文に現れたりするのも面白い。

今回私が生み出した回文はふたつ。
行きの電車の中で作りかけたものがひとつと、
その場が作らせてくれたものがひとつ。

雪にひっそり友なき問い 嘆きし訊けない 時な戻りそ 遂に消ゆ
(ゆきにひつそりともなきといなけきしきけないときなもとりそつひにきゆ)

低い部屋よ 時刻表買うべく 古書屋へ行く日
(ひくいへやよしこくへうかうへくこしよやへいくひ)

濁音・半濁音はひっくり返したときに取り外してもいいし、
歴史的仮名遣いを混ぜて柔軟によんでもいい。
あえて厳密に運用して難易度を高めてもいいらしい。

ちょうど、辛さを調節できるカレーのような塩梅。
このへんの寛容さも、回文の心地よさだと思う。


そんなわけで、最後にもう一つよんで終わる。

歌浴び、憩い、陽 与う。(うたあひいこいひあたう)

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