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『デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ』刊行について

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(このテキストは2022年の『デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ』発売時に用意したものの、なぜかうっかり公開し忘れたものです。現在においては「?」と思われる箇所もありますが、販売サイトURLを除き、あえてそのまま掲載しています。)

自著『デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ』(PRINT & BUILD)がようやく発売されつつあります。
https://printandbuild.square.site/product/-2-/3?cs=true

簡潔に言えば、世界各国の100組のデザイナーとのQ&Aをまとめた本。2011年から2019年末まで100回続いた月刊『商店建築』の連載「デザインの新定義」でインタビューした内容を本編として、2000年から現在、そしてこれからのコンテンポラリーデザインについてのテキストも追加しています。

約8年半の間にインタビューに協力いただいたデザイナーは下記の通り100組、欧米主要国のデザイナーが多いとはいえ東欧、南米、アジア、アフリカ出身のデザイナーもおり、また日本のデザイナーも各国のデザイナーと区別せずに、書籍の中で8つのセクションに分けて構成しました。また連載中は意図しなかったことですが男女比も1:1に近い。いろいろな意味で、デザインの現在をつかむ手がかりになる本ができたのでは、と自負したいところ。

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2001年からフリーランスで雑誌などに文章を書き始めた自分は、それ以前に編集やデザインに関する仕事をしていたわけではなかったけれど、当時の日本のメディアで「デザインについて書く」というのは割と小さな世界だったと思われ、よく行っていた家具店の知人のつてや、HTMLを打ち込んでつくったホームページなどのおかげで、いちおう当初から生計を立てることはできた。とはいえ大なり小なり失敗も多々あり、ようやく仕事に大きな不安を感じなくなって、またデザインというものが理解できたと思えたのは10年ほど経ってから。ちょうどその頃、始まったのが連載「デザインの新定義」だった。という意味で『デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ』は、この仕事をしてきた20年のうち比較的充実していた後半10年間のいろいろが詰まった本であり、今までの仕事の集大成と言えなくもない。

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ちなみに最初にミラノサローネ~ミラノ・デザインウィークに行ったのが確か2005年のこと。4月のミラノは世界各都市のデザインイベントの中で圧倒的に規模が大きく情報量も多いので、約1週間、朝から夜まで市内を移動して無数の展示に足を運ぶことになり、毎年そこで観たり触れたりしたものが、やがて自分にとっての「デザイン」の相当の部分を占めるようになった。ただしデザインやインテリアの仕事をする人の中にはミラノ・デザインウィークに否定的な声もしばしばある。あのようなイベントでは、目新しいもの、奇抜なもの、人を驚かせるものばかりがもてはやされ、本当に優れたものや未来に受け継がれるものには出会えない、というような。そういう意見は理解できるし一面において事実だが、表面的な新しさしかないものがあふれる一方で、意味ある更新をもたらすものも目を凝らせば見つかると思う。

ミラノ・デザインウィークはコンテンポラリーデザインこそが注目される場、というのが自分の見立て。コンテンポラリー=現代という言葉は時代区分を表すとともに、革新、前衛、独創と切り離せない。コンテンポラリーアート、現代建築、現代音楽などそれぞれにそんな面があり、同じことがデザインにも言えて、その価値観は必ずしもそのジャンル一般と相容れない。コンテンポラリーデザインはデザインの一部であるとともに、デザインという大きなジャンルが更新していくために一定の役割を果たしうる。

ただしコンテンポラリー=現代とつくものが万人受けしないこともまた否めない。少なくとも2010年代以降の日本では、コンテンポラリーデザインがコンテンポラリーデザインとして紹介される機会が少なかった。つまり革新的なもの、前衛的なもの、独創的なものを手がけるデザイナーの発想、表現、実践が、デザインの更新のために重要だと捉える言説があまり見られなかった。(「インテリアの最新トレンド!」として紹介されるケースはままあるとしても)。

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そんな中で連載「デザインの新定義」はコンテンポラリーデザインをコンテンポラリーデザインとして扱ったし、『デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ』という本は(新しく追加した序説などを通して)その点をいっそう明確にした。そしてコンテンポラリーデザインの概念をふまえると、ミラノ・デザインウィークのようなデザインイベントの意義や価値も明らになってくる。だからこの本は、一種のミラノ・デザインウィーク読本として位置づけることもできるし、実際にそこで出会ったデザイナーやこれからさらにミラノで注目されそうなデザイナーも数多く収録している。

そんな意味で強い思い入れもありますが、それはそれとしても、浅子佳英さんが始めた建築事務所兼出版社「PRINT & BUILD」の第1冊目として、また斧澤未知子さんがきわめて大胆なブックデザイン(と編集の大半)を担当してくれた初めての本として、何より現在~近い将来をリードするデザイナー100組のリアルな声が詰まった本として、ぜひとも手に取ってほしいものになりました。どうぞよろしくお願いします。
https://printandbuild.square.site/product/-2-/3?cs=true

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なおプレスリリースはこちら http://www.flooat.jp/.../20210630/cdi_tt_press_release.pdf

Photo :Masaaki Inoue

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