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オープンエンド質問とクローズドエンド質問の使い分け

プリセールスエンジニアのセールス入門、今回は、プリセールスが商談にて活用できる質問テクニックの話をしたいと思います。これまでの記事はこちらをご参照ください。

プリセールスエンジニアとして提案書を書こうとした時に、「この部分、もうちょっと詳しい情報が欲しいんだけどな。仕方ないから想定で書くか。」と思ったことはありませんか。

効果的な質問を行うことにより、お客さんとの信頼関係を深め、当初はわからなかった真の課題や真のビジョンをお聞きすることができるようになり、ひいては最適な提案、最適なソリューション提供が可能になります。

今回は、その中でも、オープンエンド質問とクローズドエンド質問の違いと、ヒアリングにおける王道の使い分け方を説明します。

オープンエンド質問(オープンクエスチョン)とは、相手がどのようにでも答えられる質問です。例としては「新しいシステムの導入で見込む効果はどのようなものですか」「今回現行システムを刷新される理由についてお聞かせいただけますか」のようなものです。

一方、クローズドエンド質問(クローズドクエスチョン)は、答えが「はい」か「いいえ」になる質問や、質問の中に選択肢を提示して、答える人がその中の一つを選ぶなど、回答する内容が基本的に限定されている質問です。例としては「新しいシステムの導入では、分析力の強化や使い勝手の検討などに期待されていますか」「今回現行システムを刷新されるのは、現行システムの老朽化が理由なのでしょうか」といったものです。

ここで、今回の記事の中で、ここだけ覚えてもらいたいということを書きます。

何かについてヒアリングをする時、最初は常にオープンエンド質問をするよう心がけましょう。

オープンエンド質問の活用により、お客様が、聞かれた内容だけでなく、より詳細な情報を提供してくれる可能性が増します。返答にもとづいてさらに質疑をしていくことで、顧客の真のニーズ、懸念やビジネス目標を明らかにしていくこともできるようになっていきます。

オープンエンド質問は、お客さんが自身の言葉で語ることができるので、その流れでやり取りをすることで、こちらがお客さんのニーズに真剣に取り組んでいると受け取られ、お客さんとの信頼関係を築く手助けとなります。

先ほどのオープンエンド質問の例を続けてみたいと思います。「新しいシステムの導入で見込む効果はどのようなものですか」といった質問をすることで、お客さんからは例えば「現行システムは、分析力が弱くて、分析方法も限定されているし、すごく時間も掛かって、結局使っていない人が多いんですよ。それから、機能は多いみたいなんですが、使っていてわからない部分があってサポートに質問をしてもなかなか返答がなくて、使いこなせないんですよね。なので、新しいシステムでは、色んなユーザーに分析や機能を使いこなしてもらいたいですね。」のような回答が返ってくるかも知れません。
これは「効果」としてはゆるい回答ですが、「大体どのくらいのユーザーがアクティブに使っていると思われますか?」のような追加の質問が自然にできますので、お客さんの課題感や成功指標をつかむこともできますし、現行システムの課題を色々お話いただいたことで、提案への盛り込み方のバリエーションも広くなることに気づくのではないでしょうか。

一方、同じ部分をクローズドエンド質問「新しいシステムの導入では、分析力の強化や使い勝手の向上などに期待されていますか」から始めた場合も考えてみましょう。お客さんから、先ほどの例と同様な回答が返ってくる場合もありますが、「はい、仰るとおりですね」だけの回答、あるいは「はい、そうですね。ちなみに御社のシステムでは分析方法にはどういったものがありますか」と言った、課題感をあまり把握できていない状態でこちらの説明をする必要に迫られるケースがあります。
この場合、かなり質問を重ねないと先ほどのような掘り下げが難しいという問題のほか、質問の重ね方を工夫しないと、詰問調になってしまいお客様が抵抗を感じる恐れがある、という問題もあります。「現行システムのサポート体制については満足していらっしゃいますか」「○○についてはご不満はありませんか」といったクローズドエンド質問を重ねるのはなかなか話として盛り上がりにくいでしょう。

ちなみに、オープンエンド質問をした時に、お客さんがすぐに答えず、考えてしまう場合もあります。この時は、沈黙を恐れず、答えてくださるまで待ちましょう。十秒くらい待っても全く問題ありません。むしろ、「自分の話したいことだけ話すのではなく、こちらがうまく答えられなくても待ってくれた」と好印象を持たれる場合も多いと思います。

もちろん、お客様の性格や商談のタイミングによっては、オープンエンド質問に対してあまり回答いただけない可能性もあります。その時は、ある程度あたりをつけてクローズドエンド質問を行う必要があります。しかし、まずオープンエンド質問を試みて、その後クローズドエンド質問を行う、という順番で進めるようにすることで、お客様の状況をよりよく理解でき、お客様の満足度も高まる可能性が高い、ということを頭に置いておきましょう。

そうしてヒアリングを進め、お客様の状況を理解していればいるほど、提案の幅が広がる、というのはプリセールスの皆様でしたら想像できると思います。例えば、先ほどの例ならば、単に新システムの使い勝手をデモや提案でアピールできるだけでなく、サポート体制に自信があればサポートの話もできますし、有償トレーニングを提供していれば提案オプションに含めて契約金額を上げられる可能性もあります。単に使い勝手をアピールするだけでなく、ユーザーの利用率が高い既存事例の紹介により受注確度を高めることもできそうです。

効果的な質問を行うには、繰り返しの練習が大切です。オープンエンド質問を使いこなして、お客さんに色々お話しいただきましょう。それと同時に、オープンエンド質問ばかりでは話が発散してしまいますので、クローズドエンド質問をうまく織り交ぜて、会話をコントロールしていきましょう。

今回の記事はいかがだったでしょうか。記事に「スキ♥」を押してくださったり、私をフォローしてくださると励みになります。


追記:「営業の科学」の書評記事に、オープンエンド質問とクローズエンド質問に加えて、特定質問を交えた記述をしました。また、営業フレームワークMEDDICCの各項目をヒアリングする場合の、オープンエンド質問とクローズエンド質問、そして特定質問での質問例を記載しました。よろしければこちらの記事もご覧ください。

MEDDPICCと質問パターン



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