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中距離の王者たちの物語はMDCで動いたのか

MDC兵庫が終わり、今年のTWOLAPS MIDDLE DISTANCE CIRCUIT は幕を閉じました!大会を支えてくださったスポンサーの方々、大会を笑顔にしてくれたボランティアの方々、開催を受け入れてくださった陸協の方々、出場したアスリートの方々、よくわかんない大会に応援にきてくださったファンの方々、本当にありがとうございました!Twitterではいろいろ振り返らせてもらっていますが、ミドルディスタンスの王者を決める大会としては王者の話をしないといけませんよね!

すべての人の物語を動かしたい

その前に。今大会のレースディレクターの髙橋ひなが兵庫大会への想いをプログラムで語ったときに、この大会を通じて「すべての人の物語を動かしたい」と語っていました。僕は、彼女本人の口からこれを聞いたわけでもありません。MDC兵庫新聞を事務所で読んだ時に知り、一人涙しました。僕がMDCを通して一番届けたい人に大事なメッセージが届いていたことに。そして、僕はこの切り口でMDC兵庫を伝えることにしました。

男子王者・薄田健太郎

ファーストパートナーズ presents MDC FINAL 男子 1000m。オーディションから選出されたドーナツニキ(藤谷選手)が引っ張る形で始まったこのレース。かなりのハイペースにも臆することなく全員が集団でくらいついていきました。その中でもラスト200から先頭に立った薄田選手のラストは素晴らしかった。日本記録と100万円のダブル獲得。他の選手とは違った想いでMDCを迎えていたと思います。

俺に競技を続けさせてくれ

薄田くんとは、MDC東京くらいから連絡をとり始めました。競技を続ける環境がないため、所属探しを手伝うことにしました。自分が見てる選手でもないし、TWOLAPSに入るわけでもないのですが、こんなスケールの選手を辞めさせたら中距離はなにも変わらないと思いお手伝いをすることにしました。

最初は、「横田さん、お願いします!」って感じであんまり主体性がないので、いいやつだけど人任せだしダメかなと思ってました(ここだけの話、笑)

人が気づくきっかけを、意図しながら、たまには意図しない形で与え続けるというのがTWOLAPSのコーチングのスタイルです。薄田くんとも少しずつ話したり、ラジオ出てもらったり、とりあえず僕が動きまくる姿勢を見せたりと、コミュニケーションをとり続けました。僕らが結束したのはとある企業に提案の際に起きた出来事でした。「絶対に見返してやろう」という謎の絆が僕と薄田くんに生まれました。これは意図しない刺激でしたが、そこを受け取れる感受性が薄田くんには備わっていたのだと思います。

僕は彼に明確にこれとこれが必要と伝えた記憶はないですが、おそらく彼が受け取ったのは。

数字に残る結果を残すこと(タイムとか順位)
数字に残らない結果を残すこと(ファンを満足させる)

だと思います。明らかに目つきも振る舞いも変わりました。

僕が前エリート選手に対して「ファンを楽しませよう!」という話をしたときの薄田

大学四年生の自分を見てるようでした。所属が決まらない四年の秋、日体大記録会でひっそりと出した必死の日本記録。

僕の日本記録と一つ違うのは、MDCという舞台でファンの皆様の前で走らせてあげられたこと。応援してくださる方の存在があったからこそ出せた日本記録だと思います。

そして、出した後のファン対応も明らかに違いました。

こいつの影響もあるのだと思います。

アスリートとして、お金をもらうということはどういうことなのかを考えて結果につなげた薄田くん。

プロのアスリートとしての薄田健太郎の物語は間違いなくMDC兵庫で動き出したと思います。

女子王者 田中希実

結果を出す人間には結果を出す人間にしかわからない苦悩があります。人から見たら結果でも本人が結果ではないと言ったら結果ではないからです。「自分の中のなにかを動かさないといけない。」ずっとずっと挑戦しては、結果を出してきた。と周りには見える。けれどそのアクションは自分にとっては結果ではない。僕も近くで似てる人を見てるからなんとなくわかるのです。

自分への挑戦として、自分のためだけのレースを彼女は設定しました。8分40秒を切るためのペースも、2.53-2.57-2.49と中盤でタメをつくってラスト1000であげる設定にし、ペースメーカーも西脇工業の先輩で日本選手権にも出陣している加藤選手(住友電工)が担いました。また、彼女のスポンサーであるNew Balance もバックアップ。フラッグを用意して会場の応援を彩りました。言い訳はできない自分だけのレース。日本選手権とも、世界陸上とも違う、言い訳のできないレース、New Balance 3000m NON0840 "ジブンヘノチョウセン"。田中希実だけを見にきている。

そうでもしないと越えられない、彼女が抱えていたものはなんだったのでしょうか。きっと誰にもわからないのだと思います。だからこそ、記録が公認されるかされないかではなく、自分が納得できるかどうかが大事なのです。

8分40秒切りは果たせなかったものの、”ジブンゴエ”を果たした田中選手。その90分後には1000m。「常識的」には、かなりしんどいチャレンジだが彼女は、危なげなく勝利を収め2年連続でMDCのチャンピオンになりました。彼女はレース後のインタビューの中で、「3000mで非公認ですが自己ベストが出たことで1000mはのびのびと走れました」と語っています。3000mを自己ベストで走った後の体の重みより、自分に与え続けてきたプレッシャーという心の重みのほうがずっと重いのです。またインタビューで印象的だったのは「日本記録」というワードではなく「自己ベスト」というワードを使ったことです。誰かに認められるのではなく、自分自身を認められるかどうか。田中さんの自分自身との戦いの物語。MDCが彼女の物語の一部であって、それを高校の先輩の髙橋ひなが少しでも動かせたとしたら。そんな素敵な物語はありません。

レースディレクターの役割

レースディレクターの仕事というのは、多岐に渡ります。選手の招聘、演出の管理、チケット販売、スポンサー営業、配信の管理などなど細かいことをあげていくとキリがありません。ただ、僕が思うレースディレクターの1番の仕事は、

大会に命を吹き込むことだと思っています。

「未来のこどもたちへ」「あらゆる垣根を取り払いたい」「すべての人の物語を動かしたい」

コーチングをしたこともない僕を信じてついてきてくれた、田母神と卜部と髙橋の出身地でやったMDC2022。彼らがレースディレクターとなり、想いを言葉にし大会に命を吹き込んでくれました。そしてそれを形にするためにあらゆる施策を練り上げて実行する。

僕はこれからも選手の想いをカタチにしていきたいと思っています。ある人から見たら競技結果から逃げてるように見えるかもしれません。競技結果も競技結果にあるアスリートの想いも両方カタチにしていく。それがTWOLAPS TCのミッションだからです。

「未来のこどもたちへ」
「あらゆる垣根を取り払いたい」
すべての人の物語を動かしたい
TWOLAPS

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