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いまこそ問われるリーダーシップの形

いまスポーツにできること

新型コロナウィルスの感染拡大で世界的に経済活動に大きな影響を及ぼしています。僕が関わっている陸上競技ももちろん大きな影響を受け、オリンピックは2021年に延期、国内のレースも少なくとも秋以降の開催となっています。今後は、スポンサー離れ、陸上部の廃部などが出てくるでしょう。僕らも影響を受ける可能性は高く、職を失う可能性もあります。それでも僕らのチームは早い段階から試合に出場しない意向を表明しました。その背景は中日スポーツさんがまとめてくださったのでぜひ読んでいただけたらと思います。

今回の新型コロナウィルスの影響で、オリンピックスポーツの多くはオリンピックという文脈に依存しすぎていることが改めてよくわかりました。東京五輪が終わった後にもスポーツの価値が問われるタイミングがもう一度訪れます。やや手遅れ感はありますが、それに向けて、改めて陸上競技はどうあるべきなのか、それにともなってアスリートはどう行動すべきなのか今一度、考えなくてはいけません。タイミングよく、TWOLAPSのメンバーである蘭ちゃん(積水化学)は自身のnoteを昨日更新し、こう綴りました。


何が起こるか分からない未来は、ますます先が読めないものとなっています。そんなとき、自ら考え切り拓いていける力を身につけることが、未来を明るくする事に繋がっていくと信じています。

僕もその意見に賛同で、不確実性が高い世界(予想しないことがたくさん起こる世界)では、自ら考えて切り拓いていける力がより必要だと思っています。
#いまスポーツにできること
をアスリートが発信することはとても素晴らしいことだと思います。一方で、
#いまアスリートがすべきこと
は他にもあるのではないかと僕は思うのです。

変革型リーダーシップ論と相互性

前置きが長くなりましたが、今回紹介したいのは、「変革型リーダーシップ( transformational leadership)」という概念です。変革型リーダーシップは「不確実性が高い環境下でリーダーが取るべき行動」に着目したもので、70年代にBurnsという政治学者が提唱し以下のように定義しました。

Burns defined transformational leadership as a process where leaders and followers engage in a mutual process of 'raising one another to higher levels of morality and motivation
変革型リーダーシップはリーダーとフォロワーが相互に高め合い、お互いの道徳とモチベーションを高いレベルにあげるプロセスと定義する

ここで重要なのは、”相互性”だと思っています。何か変革を起こす時に一方の論理ではなにも変えることはできません。仮に陸上界を変えないといけないとしたときに、上司が陸連だとしたら部下がアスリートです。上司である陸連は明確なビジョンを示し、部下であるアスリートは過度に連盟に期待するのではなく相互に高められる"力"をつけないといけません。ちなみに、陸連はJAAF VISONを掲げています。とてもよくできていて、陸連が目指したいビジョンはとても明確ですし、わかりやすいです。ただ、アスリート視点で見ると、"国際競技力の向上"以外に僕らができることはなんなのだろうか。という思いが生まれる作りになっています。国際大会での活躍以外にアスリートができることはないのでしょうか。

変革型リーダーに求められる4つの資質

その後、1980年代にバーナード・バスは変革型リーダーシップは主に以下の4つの資質によって構成されているとしました。

①カリスマ性 ービジョンとミッションを明確に掲げ信用と尊敬をチーム内に醸成する
②インスピレーション ー感情に訴えかけモチベーションをあげる
③知的刺激 ー想像力、問題解決力などを育て信念や価値観に影響を与える
④個別性 ー1人1人と向き合いアドバイスやコーチングを行う

不確実性が高い環境下で起こるのは"僕らはどこへ向かえばいいのか"という迷いです。その迷いに対し、"僕らの向かうべき姿(ビジョン)"を明確に掲げ、それを達成するための知識や思考方法を提示する。そのモチベーションを維持するために感情に訴えかけ、1人1人に寄り添っていく。変革型リーダーには明確なビジョンを掲げるだけでなく、それを実行するメンバーの持続的なマネジメントも求められます。

アスリートはペンを持ち共に手をとろう

変革型リーダーシップとよく対比されるのが「取引型リーダーシップ(Transactional Leadership)」です。取引型リーダーシップは名前の通り、リーダーと部下の関係は取引と考えるもので、成功に対して報酬を与え、失敗には罰を与えるリーダーシップです。いわゆる「アメとムチ」をうまく使うのがこのスタイルの特徴です。日本のスポーツ界はこの取引型リーダーシップが主流で、むしろ取引があればまだマシなような状態だったと思います。リーダーシップは文脈や対象によって適した形が存在します。いまの環境下で求めらえるのは、取引型よりも変革型のリーダーシップでしょう。僕らはオリンピックという文脈から強制的に立ち止まらされています。そんな状況下で、僕らの存在意義をもう一度見つめ直し、僕らの進むべき道を自分たちで作りあげる必要があるのでないでしょうか。そのビジョンを構築するためには、学びが必要です。インプットの量を増やしましょう。スポーツのことだけでないたくさんの知識を得て、視野を広げましょう。そしてアウトプットの量も増やしましょう。学んだことやそれに紐づいたことを、"話し"、"書き "、仲間に伝えましょう。そしてできたビジョンを仲間と共有し、少しづつ行動を起こしていきましょう。小さな変革的リーダーを生んでいくことがいま僕らがやるべきことではないかと僕は思います。

おまけ①変革型リーダーシップとスポーツパフォーマンス

変革型リーダーシップとスポーツパフォーマンスは関連があるという研究もあります。考えてみれば当然ですよね。
*内発的動機とは誰かに与えられたものではなく自分の内側から湧き出るモチベーションのことを言います
Charbonneau, D., Barling, J., & Kelloway, E. K. (2001). Transformational leadership and sports performance: The mediating role of intrinsic motivation 1. Journal of applied social psychology, 31(7), 1521-1534.

おまけ②僕が思う変革型リーダーin陸上競技

東京マラソン 早野忠昭レースディレクター

青山学院大学陸上競技部 原晋監督


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