Evernote から Dropbox(内にファイルを作成)に乗り換えた話

数年前という過去の話になりますが、 Evernote を止めて Dropbox にファイルとしてテキストファイルや PDF を保存するようになった経緯を note に残しておきたいと思います。
大した話ではないのですが、当時のモヤモヤとした気持ちを吐き出したいという思いです。

Evernote の「割とヘビーユーザ」でした

2011 年ごろから Evernote の Premium 版を利用しておりました。当時

  • 片っ端のものを PDF にして保存する

  • ウェブクリッパーでウェブページを保存する

という使い方に加え、

  • "Inbox" というノートブックに一つだけノートが作られており、やることリストだったりメモだったり、その時の心情を吐露したポエムなど全て記載する

という使い方をしておりました。

「Evernote は第二の脳」という言葉がありましたが、私の第二の脳の全ては、このたった一つのノートにほぼ集約されていたのでした。 MacBook Pro の画面にずっと開きっぱなしになっており、とりあえずなんかあったらそこを見たり書いたりする、という感じです。
GTD 的な使い方ではなく、本当にただのメモとしての使い方でした。しかし以前 note に掲載しました以下の記事の通り「すぐにメモ帳や付箋に書くこと」は、このノートで実践はできていたかと思います。

ウェブページや PDF を全部つっこんでおく、という使い方もしておりましたが、これは本当に便利でした。
検索から欲しい内容をすぐに取り出せるので(特に料理のレシピ)、整理整頓を諦めていた割には「片付いている人と同じくらい、情報の引き出しが速かった」と自負しておりました。タグはあまり使わずノートブックはたった 5 つほど。

  • Inbox(前述通り、たった一つしかノートがありませんでしたが、第二の脳でした)

  • 料理

  • 勉強用(プログラミングや Linux のコマンドなどのウェブページが保存されてました)

  • PDF

  • その他(ほぼゴミ箱。捨てるのはしのびないが、いつか使うかもしれない、と思っていたノートの安置場所)

Evernote のとても良いところの一つが「検索がかなり優秀」ということです。 Gmail っぽい感じだったと思います。「とりあえず保存して、整理整頓もせず、後で検索して取り出す」、この使い方においては Evernote は現在も他のツールよりも利点があるかなと思います。
「PDF」のノートブック内には ScanSnap でスキャンした領収書や契約書類など、紙からスキャンしたものを全部ここに入れてました。以外と後から必要になることって多いんですよね。二回くらい、携帯電話屋さんで Evernote から以前の契約書関連の書類を探した記憶があります。

こんな感じで、使い方は稚拙でしたが、なくてはならないツールの一つでした。

使うのを止めた理由

いくつかあるのですが、一番の理由は「自分の第二の脳のデータベースが、一企業のプロプライエタリである特殊な形式として保存されている」ということでした。

一番重要だったノートは前述の "Inbox" 内にあるノートでしたが、これがある日(2015 年ごろ)正常に他のデバイスと同期できないことがありました。

MacBook Pro の Evernote で編集したところ iPhone の Evernote で更新アイコンがぐるぐると回るだけで一向に内容が表示されなくなり、挙句の果てには正常だった MacBook Pro の Evernote においても同期エラーが出続け、ノートの表示もできなくなってしまう」という状態になりました。

このノートは相当な量のテキストや画像ファイルが添付されており、これが見られなくなってしまったり、万が一ロストしてしまうということは生活に支障が出てしまう可能性もありました。たった一つのノートのせいで、冷や汗が出ていたことは今でも覚えております。
結局は、ウェブ版の Evernote 上では正常に表示ができていることからクラウド上のデータそのものは無事と考え、MacBook Pro と iPhone の Evernote を一度完全にアンインストールし、再度インストール・同期をすることでまた使えるようになりました。

この一件は「重要なデータをオープン(非プロプライエタリ)ではないものに保存する、ということを止めるべきでは」ということを考える機会となり、 Evernote を止める結果となりました。

例えばこれが単純なテキストファイルであれば Evernote ではない他のツールでも読み込むことができますし、バックアップも容易です。テキストではなくても SQLite などオープンな形式であれば万が一の復旧も可能だったかもしれません。しかし、 Evernote のファイルはローカルに独自形式で保存されております。

そうしていつしか、私は Evernote のノートに書いていた内容を Dropbox にテキストファイルとして保存するようになりました。そこそこ表現力の高い Evernote のリッチテキストが書けなくなった分、不便になりましたが、完全にコントロールができている状態になりました。
PDF はせっせとローカルに保存する作業をしましたが、ウェブクリップの半分は破棄しました。破棄したものはあまり困らなかったというのも事実です。
積読」ならぬ「ウェブクリップ」ですね。残ったものの大半は料理のレシピでした。

結局のところ Dropbox も一つの私企業が提供する製品ですが、 Dropbox が提供してくれるのは「同期」の機能のみであり、そこに保存されるファイルはフォーマットをを選びません。ファイルシステムからファイルとして保存されている状態である以上、そのファイルは「オープンなもの」であり自由です。自由に別ディレクトリにバックアップも取れますし、 Dropbox を止めるとしても適当に他のディレクトリに移動させるだけで完了です。

移行した後の Dropbox の構造

Dropbox 内の適当なディレクトリ内にノートブックのようにディレクトリを作成し、そこにファイルを放り込んでおります。ディレクトリのネストはファイルシステムや Dropbox の限界を越えなければ無制限です。(つまり、制限はほぼ無いに等しいかと思います)
Evernote はノートブックのネストができませんでしたが、ファイルシステムですからいくらでも自由が効きます。

[root]
- 00_Inbox
- 10_料理
    - 夕食向き
	- パスタ
	- ...
- 20_PDFs
    - 請求書
	- 契約書
	- 子ども関連
	- ...
- 30_プログラミングなど
- ...
- 99_その他

検索

ディレクトリ構造を自由にできるようになったため、 Evernote におけるノートブックのネストの制限がなくなったことから、細かくファイルをディレクトリ分けすることが多くなり、結果検索の重要度は減りました。直接ディレクトリ内のファイルを見てしまったほうが速いので。 GTD の整理に近くなったと言えます。

それでも検索したい場合、ディレクトリに潜って grep コマンドで検索してしまうか、エディタに付属の grep ツールで検索してしまうことが殆どです。 PDF の中身を検索することができないのが難点ですが……。また、ウェブリクップの内容も検索もできなくなりましたが、ファイル名の検索で事足りることが分かりました。

大きな難点とすれば Evernote の「タグ」の機能は使用できないことです。こればっかりはどうしようもないので、きちんとディレクトリを分けて整理整頓することでタグが使用できないことを諦めております。

保存したドキュメントが「オープン」であること

すなわち、エディタを選ばないということです。
Evernote は外部エディタをサポートしておらず内蔵のエディタを使用しなければなりませんでした。キーバインドが vi/Emacs ライクにできない、やや動作が重かったり不安定とストレスを感じることがありました。
しかし、ファイルとしてテキストが保存されているということは、好きなエディタで編集ができます。(移行した当時はターミナルの CUI 版 Vim でした)

またリッチテキストとして保存することも Markdown 形式にすることもできます。フォーマットを任意にできる自由も手に入れました。

Dropbox に直接保存できるアプリは多い

特に iPhone 環境から画像や PDF を直接 Dropbox に置けるアプリはそこそこあります。

私が特に使用しているツールは Scanner Pro ですが、これも直接 Dropbox に保存が可能です。

その他 Evernote に対する感想

やはり Evernote アプリ自体がやや不安定で重かったと記憶してます。
同期エラーは割と頻繁におこっており、ノートの切り替えが瞬時にできなかったりもっさりしていたことも、しばしばありました。

また、特に Windows 版でしたが、アプリケーションの外観は悪く、常に「違和感」を覚えていました。一時 MacBook Pro から Windows PC に乗り換えておりましたが、その時は外観のやぼったさが非常に嫌でした。 MacOSX 版のアプリを無理やり Windows に移植したような感じです。
仕事では Onenote を愛用しておりますが、流石に Microsoft 純正と言いますか、 OS のルック・フィールと調和しており使用において違和感などは感じたことはありません。(Onenote もプロプライエタリなファイル形式で保存されますが、会社が認めているツールだし Office 製品だから大丈夫と割り切って使おう、と思っております)
ヘビーに使うツールだからこそ「違和感」がなく、すっきりとした気持ちで使いたかったです。

また、時代や風潮が Evernote と合わなくなってきたようにも思います。
時は Markdown でドキュメントを書く時代、ヘビーに文章を書く人ほど Evernote のリッチテキストは時代遅れに感じたのではないでしょうか。

プランについては何とも言えません。
Evernote 以外のツールでも月 1000 円ほど支払うメモアプリはありますし、今現在も Evernote は強力なツールかと思いますので値段相応なんじゃないかなと思っております。ただし、 PERSONAL プランでも検索に制限があるのは後ろ指を差してもいいんじゃないかなと思っております。 Evernote の一番良いところはやはり検索だと思ってます。そこに制限を加えることは Evernote の魅力を大きく損わせてしまうのではないかと思います。

https://help.evernote.com/hc/ja/articles/4405520390291

最後に

皆さんも、大事なデータについて「重要なデータをオープン(非プロプライエタリ)ではないものに保存する」ということを一度考えてもいいかもしれません。個人的に Evernote を止めたことは、その後のツール選定にも大きく影響を与えました。ロックインされることは「楽や便利にはなるかもしれないが逃げられなくなってしまう」という危険性があるのでは、と考えるようになりました。

もちろん、本当にプロプライエタリなものを避けるとすると Windows や MacOS/iPhone ではなく Linux などを使用するなど、どこまで徹底をするか悩ましいものです。私の場合、 OS は妥協しております。
その塩梅は難しいものですが、ご自身が納得でき「これなら安心してデータを扱えるという状態」を目指すことは大切であると思います。

老後、奥さんと世界一周のための費用にします。