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【スペランカー考古学】スペランカーの音楽にまつわる2つの新発見

こんにちは。寺悠迅と申します。かれこれ数十年、スペランカーというゲームの追っかけをやっております。

しかしながら所謂『やり込み勢』ではなく、スペランカーというキャラクターを愛し、データ蒐集をライフワークとしております。

オモコロさんとこでこういう記事も出させてもらっています。ゲームメディアでやれ。


ごく最近、スペランカーの音楽にまつわる2つの新発見がありましたので、ネット上に明文化し、情報・文化の継承をしてゆきたい所存です。よろしくお願いいたします。


そもそも本当に『新発見』なのか?

初めから言い訳じみた話になりますが、ネットは広大です。新発見と言いつつ「それ◯◯ってサイトに載ってたよ」ということもあると思われます。

その際はお気軽にこの記事のコメント欄や、Xで直接お教えください。正中線さえ外していただければ矢文でも結構です。

https://x.com/The_U_JINE


●ATARI版スペランカーのオープニングの展覧会の絵『プロムナード』は、"第1"ではなく"第2"である

よろしければ上の検証動画をご覧ください。聞いてもらったほうがたぶん早い。


まず前提知識として、1983年発売のATARI版スペランカーのオープニングには、クラシック曲が使われていました。

モデスト・ムソルグスキー「展覧会の絵」より『プロムナード』です。

クラシックに明るい方であれば、上記の動画ですぐわかるのかもしれません。OPで使われているプロムナードは"第1"ではなく"第2"です。

クラシックに疎い方であれば「そもそも第1とか第2とか何の話だよ」と思われるでしょう。かく言う私もそうでした。

かる~くWikipediaから引用しておきます。

『展覧会の絵』はムソルグスキーが、友人であったヴィクトル・ハルトマンの遺作展を歩きながら、そこで見た10枚の絵[1]の印象を音楽に仕立てたものである。ロシアにとどまらずフランス、ローマ、ポーランドなどさまざまな国の風物が描かれている。また、これらの10枚の絵がただ無秩序に並ぶのではなく、「プロムナード」という短い前奏曲あるいは間奏曲[2]が5回繰り返して挿入されるのが特徴的で、この「プロムナード」は展覧会の巡回者、すなわちムソルグスキー自身の歩く姿を表現している(使われるごとに曲想が変わるので、次の曲の雰囲気と調性とを的確に感じて弾くことが大切である[3])といわれる。

Wikipedia-『展覧会の絵』より

「展覧会の絵」は絵画を巡回する様子を表現するために、類似するフレーズの曲を『プロムナード』と銘打ち、合間に挟む構成となっているわけです。そういうワケで、展覧会の絵には5種類のプロムナードがあります。

Wikipedia-『展覧会の絵』より

……では、なぜATARI版スペランカーでは、わざわざ第2を使っているのでしょうか。


仮説1,制作者たちにとって、スペランカーが2作目のゲーム制作だったから

だとしたら洒落てますね。まあ、当時スペランカーを作ったマイクログラフィックイメージ社としてはリリース1作目だったんですけれども。

可能性としては、結社以前に作ったタイトルがあったりして、本人たち的には実質2作目……的な……?


仮説2,第2プロムナードの後にくる「Il vecchio castello(古城)」のイメージを、古びた洞窟に重ねていたから

これもホントだったら洒落てますが、この仮説には問題があります。

第1プロムナードの後にくるのが「Gnomus(小人)」であり、Gnomusとはファンタジー世界でおなじみ「ノーム」のことです。

ノームは土の精霊なので、地中で暮らしており、地底に眠る財宝や鉱脈を守っているそうです。じゃあ第1のほうがイメージにピッタリじゃねえか!!!


仮説3,第1より第2の方が区切りが良いから

個人的には有力説です。第2プロムナードは第1プロムナードに比べおよそ半分の尺で済みます。OPに採用しやすい長さだったのではないでしょうか。


仮説4,メロディが打ち込みやすかったから

これも有力説です。

国際楽譜ライブラリープロジェクト(IMSLP)でパブリックドメインの楽譜が確認できます。

検証動画用に楽譜を見ながらMIDI作ってて気づきました。第2は繰り返しが多かったり、作りが幾分か単純です。当時は音楽も全て打ち込み(プログラム)だったことも鑑みてかなり有り得る話。


仮説5,第1より第2の方が好きだったから

これも有りうるな……


仮説6、手元に第2の楽譜しかなかった

得てしてこんなものだったりもする。


●スペランカーの幽霊の登場BGMの元ネタは『Mysterioso Pizzicato』である

よろしければ上の検証動画をご覧ください。30秒で済みます。


スペランカーの幽霊の登場BGMといえばコレです。単品が見つからなかったのでピアノの動画を貼り付けました。


この曲はATARI版から使われ始め、ファミコン版を経て、現在もなおアレンジされて使われ続けております。


さて、幽霊の登場BGMの元ネタといえば、2012年頃にRunner's High!さんの所の「スペランカー」の幽霊BGMの元ネタという記事で判明していた『幽霊城のドボチョン一家(原題:Groovie Goolies)』が通説(?)でした。

こちらがGroovie Goolies(1970)のオープニング『One, Two, Three』。イントロが完全に幽霊の登場BGMです。

僕自身、十年以上これを元ネタとして認識していたのですが……その後、日夜スペランカーの情報を集め続けていたところ、The Venturesの『Scrooge』(1965)という曲に出会いました。

この曲の17秒辺り。完全に幽霊のBGMです。先述の幽霊城のドボチョン一家のOPより5年も昔のアルバムに収録されている曲です。

このことから、幽霊城のドボチョン一家元ネタ説には疑問の余地ありとして観察を続けていました。そしてつい先日


Groovie Gooliesのオープニング動画を漁っていたところ、こちらの動画のコメント欄に……

That stock music (Mysterioso Pizzicato (1914)) at the beginning of the song was also used in The Trial of Mister Wolf (1941), Baseball Bugs (1946), The Great Piggy Bank Robbery (1946), Beany's Beany Cap Copter (1962), Hot Soup (1969), Enchanted Voyage (1972), Catzan of the Apes (1975), Spelunker (1983), Ghost Hunters (1986), The Three Stooges (1987), Wizards and Warriors (1987) and Tiny Toon Spring Break (1994).

曲の冒頭のストックミュージック (Mysterioso Pizzicato (1914)) は、『ミスター・ウルフの裁判』 (1941 年)、『ベースボール・バグズ』 (1946 年)、『貯金箱強盗』 (1946 年)、『ビーニーのビーニー・キャップ・コプター』 (1962 年) でも使用されました。 )、ホットスープ(1969)、魅惑の航海(1972)、猿のカッツァン(1975)、スペランカー(1983)、ゴーストハンターズ(1986)、三ばか大将(1987)、魔法使いと戦士(1987)およびタイニートゥーンスプリングブレイク (1994)。

(Googleによる翻訳)

なんか凄いこと書いてない?


『Mysterioso Pizzicato』。その歴史は100年以上前の無声映画の時代まで遡り、別名『The Villain's Theme(悪役のテーマ)』とも呼ばれるほどお馴染みのフレーズらしいです。

そのまんま、悪役が登場するときや、悪巧みをしたりコッソリ行動するシーンに用いられるお約束フレーズとのことですが……


Wikimediaコモンズより

これじゃん。

これじゃん!!!

再生したとき思わず笑ってしまいました。


YouTubeに解説動画もありました。ず、ずっとお馴染みのフレーズが聞こえる……!

有名なはずなのですが、なにぶん海外の文化(それも古い伝統)なので日本語で言及している資料がまるでなく、スペランカー史においても今日まで日の目を浴びなかったのだと思われます。


おわりに

インターネットには全てがある……なんてことは勿論ない。けれども、調べて、書き留める人間がいる限り、全てに限りなく近づくはずです。

少なくとも僕はスペランカーのそれが出来るので、やっておきました。キミもやれ


ウン十年前のゲームでも、日々ネットをうろうろしているとこうして新情報(?)にたどり着いたりするものなんですね。これだから堪らねえぜインターネットってヤツはよぉ。

特に、幽霊のBGMの元ネタはRunner's High!さんのところで言及されていたのが最後だとすると、およそ12年ぶりの情報更新ということになります。インターネット様々ですね。


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