アマゾンの日本での消費税の納税について
この記事は2014年5月に書いたもので、現在では内容が古いものとなってしまっています。現在の状況を簡単に説明します。
2017年8月現在、amazon.co.jp の通販事業は、内国法人である、アマゾンジャパン合同会社が行っています。→ 特定商取引法に基づく表示
従って、消費税の扱いだけでなく、法人税法の扱いも、例えばヨドバシドットコムと全く同じであるという事になります。
ただし、消費税については下記の記事で説明した通りで、通販事業を米国法人の、 amazon.com が行っていた時も課税の有り方に何も違いは無く、普通に課税されていました。(2017年8月追記)
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アマゾン社の日本での消費税の納税について、多くの誤解がネット上で散見されます。誤解に基づいた議論は生産性が無いと思うので、実際はどうなのかをまとめてみました。
※下記の記事の中で触れている法改正は既に実現し、2015年10月からは、アマゾンの電子書籍や、出品手数料などについて日本の消費税が課されています。国内通販については元々課されていましたので、「アマゾンは日本の消費税払ってない」は全く的外れな批判です。(2015/12/16追記)
■Kindle の電子書籍の配信は消費税の課税対象外
Kindle 電子書籍の配信は、外国法人である、Amazon Services International, Inc. が行っているものですが、現在の日本の法令では国外の事業者が行うこれらのサービスは「国外取引」に該当するものとして最初から日本の消費税の課税対象ではありません。
電子書籍の配信は「役務の提供」に該当しますが、「役務の提供」が消費税の課税対象になるかは「その役務の提供が行われた場所が国内であるかどうか」によります。現在は電子書籍の役務の提供地は「役務の提供をする者の事務所等の所在地」で判定されることになっています。そのため、Kindle 電子書籍の配信は「国外取引」として日本の消費税の課税対象外なのです。
この「国外取引」ということですが、これは例えば、日本人がニューヨークでタクシーに乗っても日本の消費税は関係ないのと同じことです。米国法人であるアマゾン社が日本国内に対して行う電子書籍の配信(など)は、現在の日本の法令では、アマゾン社の所在地である、アメリカのシアトルで行われているものと扱われているわけです。
なお、今後の改正で、電子書籍の配信の提供地は「役務の提供を受ける者の住所・居所又は本店・主たる事務所等の所在地」により判定することが予定されています。この改正が行われればKindle 電子書籍の配信は「国内取引」になり、通常の課税対象となります。→ 税制調査会の資料参照
※この件について、よく「サーバーが国外だから」という説明がありますが、これは誤りです。例えば apple の音楽、アプリの配信はアメリカのサーバーから行われていると思われますが、提供者が内国法人の iTunes 株式会社なので国内取引となり通常の課税対象です。
Kindle 電子書籍でも、販売元が日本の出版社であるものについては、電子書籍であっても普通に消費税が課税されています。
→ 講談社が販売元のKindle 電子書籍の例 Kindle 価格 864円 (税込)となっています。
この例からも、「サーバーがどこにあるのか」ということは全く関係無いということが分かります。
※上記の説明の通り、この件では別にアマゾン社が日本の消費税逃れをしているわけでも何でもありません。現行法令下では課税対象では無いというだけのことです。また別にアマゾン社は「日本の消費税逃れをするために」電子書籍事業を各国の拠点からの提供とせずに、米国本社からの直接提供としているわけではないでしょう。
※同様に国外取引であるため課税対象外であるものには以下のようなものがあります。楽天kobo の電子書籍配信、Google AdWords の広告費、adobeのソフトウェアダウンロード購入及び、月額利用契約、Dropbox、Evernote、 Bitcasa などのネットサービスなど。
■通常の国内通販はアマゾンは消費税の納税義務者
現行の法令で、アマゾンは日本の消費税の納税義務者ですし、国内通販分についての申告納税を適切に行っているものと思われます。
アマゾンは外国法人だから日本の消費税は関係無いんだよという意見を見かけることがありますがこれは誤りです。日本の消費税の納税義務者は内国法人あるいは国内の個人事業者だけではありません。
外国法人も消費税の納税義務があります。→ 国税庁の説明参照
消費税法第五条で「事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等につき、この法律により、消費税を納める義務がある。 」と定められていますが、この「事業者」には外国法人、外資系企業、外国人も全て含みます。
実際、アマゾンのサイトのヘルプには、「消費税は、お届け先が日本国内の場合にのみ課税されます。」と言う説明があります。
また、アマゾン社のIR資料(投資家に対する報告書)の中には、下記のような記述があります。
"We also collect Japanese consumption tax for products that are ordered on www.amazon.co.jp and that are shipped into Japan."
「また我が社は、amazon.co.jpで注文されて、日本国内に出荷される商品について、消費税を徴収しています。」
→ アマゾン社のIR資料 04/18/02 の 2001 Annual Report の14ページ参照
この部分は、ビジネス上のリスク、つまり今後発生するかも知れない、新たな費用、損失負担について説明しているものの一部です。アメリカ国内でインターネット通販に対して売上税が課税されている州、あるいはイギリス、ドイツ、フランスのアマゾンサイトで EU 各国に出荷されるものと、日本においては既に付加価値税あるいは消費税の徴収をしているけれど、今後アメリカの他の州、また上記以外の他の国から、過去の売上げに対し新たに納税義務を課されるかも知れないと言う趣旨のものです。上記に具体的に掲げた州、国においては納税義務を果たしているので、問題は無いが、これ以外の州、国から納税義務の履行を求められることがリスクであると認識しているということですね。
「徴収している。」と書いてあっても「納税している。」とは書いてないという指摘を受けたことがありますが、上記部分全体の趣旨として、適切な納税は行っている(のでこれらの州、国については追加の納税を求められることは無い。)と読むのが妥当だろうと考えます。
また、現在の法令で課税対象外になっている、海外からの電子書籍の配信などについて、国内取引にすることで課税するということが具体化しており、早ければ2015年税制改正大綱に盛り込まれることになっています。電子書籍に関しては税調の資料でも、Kindle ストアが最もボリュームがあるものとされていることからも、「Kindle に課税する」ことが一つの焦点であることは間違いありません。「これまでの法の規定で課税できていないKindleに課税しようとしている」ことを考えれば、「これまでの法の規定で当然課税対象であるはずのアマゾンの国内通販は適正に課税されているはずだ」と考えることは当然の帰結です。
H26/8/1追記 アマゾン社のIR資料のリンク先が公開当初から誤っていたものを修正しました。
H27/3/27追記 Kindle 電子書籍の販売業者をM.Shostakov (m.sato)さんのツイートでご指摘を受け訂正しました。ありがとうございます。
消費税のことだけでなく、法人税がどうなっているか(こちらはアマゾンは日本の法人税等は負担していません)についてもいずれ書きたいと思っています。
この記事に関連して、「アマゾンは消費税を払ってない」という誤解の震源地の一つである、日本出版社協議会の副会長である竹内氏への反論記事を別に書きました。合わせてご参考になさって下さい。
「アマゾンで買った書籍の消費税は払い損?!」ではありません。
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