第二十八回 ウクライナ戦争と野球の未来 政治編 (2022年4月1日)

前回に引き続き中高生を想定した、ウクライナ戦争と野球の未来 政治編です。この戦争には、政治経済の様々な要素が凝縮していて大変興味深いのですが、基本的な地政学や経済に関してだけでも、ここで全て説明するのは無理なので、興味を持ってもらう事を目標に淡々と要点を述べて、参考文献と参考動画のリンクを貼り付けるスタイルにしたいと思います。

ウクライナ戦争における政治的、経済的ハイライトは、ロシアが欧州に対して、ロシア産の天然ガスをルーブルで売ると通告した時でしょう。これによりルーブルはロシアの天然ガスに価値を裏付けられたことから、暴落しかけていたルーブルは、即日回復に向かいました。
これは米国のドル覇権の終わりを告げるもので、歴史的な出来事です。

武器や石油などは、米国の軍事力や経済力に裏付けされたドルでしか取引ができませんでした。ドル以外の通貨で石油を取引しようとしたフセインやカダフィといった指導者らは、全て米国の武力によって消されてきた歴史があります。しかし核大国のロシアに対して、米国は戦争を仕掛けることができません。
またここに至るまでのプロセスが絶妙で、政府組織の様な顔をして実は民間の個人銀行家らに保有されている各国中央銀行が、米国と歩調を合わす(?)タイミングで、ロシアの保有する外貨を凍結するという驚くほど強い制裁措置を講じました。そのためロシア側にも「生存の為やむを得ずそうしました」という言い訳が自然にできたのです。

こうした経緯や誰が得をしたかを考えると、この取り引きには、ロシアのエネルギー依存度の高い欧州各国政府と、中央銀行を統括する国際決済銀行(BIS)も一枚嚙んでいたに違いありません。
実際にこれを書いている間に、欧州はルーブルでの支払いは拒否。そのかわりユーロで決済することで妥協するという情報がでてきました。欧州はユーロを刷るだけで、あるいはバチバチと数字を入力するだけでロシアの天然ガスを買えるというわけで、欧州にとって都合の良い話であるのに妥協するとは良くいったものです。こうして欧州は、欧州のエネルギー取引からドルを排除していましました。欧州では、言う事とやる事が違う事が多いのです。
近い将来、ロシアからは天然ガスだけではなく、ロシアの原油や穀物、鉱物なども、ユーロやルーブルで決済されるようになり、米国のドル支配は衰えるでしょう。

これを妄想と言う人もいるでしょう。しかしこの様に理解しておくと、駐日ロシア大使館が、まるで勝利宣言のように発表した下記コメントの意味がわかります。

「今日、世界の経済・政治に決定的な影響を及ぼす主権国家すべてで協議し、合意に至ることが必要になる。新たな現実が形成されつつある。一極世界は不可逆的に過去へと消え去り、多極世界が生まれる。この現実において「支配する」のは、大国一国ではない。」

これはアメリカとドル覇権の終わりについて話をしているので、これからブレトンウッズ3と言われるような、原油、穀物、鉱物などのコモディティに裏付けされた通貨による金融システムへの移行が現実になりそうです。
ブレトンウッズ3について、及川幸久氏からわかりやすい動画がでているのでご紹介します。2022.3.19【米国】誰でもわかる❗️バイデンの対ロシア経済制裁ー【及川幸久−BREAKING−】

こうした動きについて次に注意して見るところは、ブレトンウッズ3への展開が、米国と欧州の金融資本家の合意の基に進められているのか、米国と欧州の金融資本家らの対立によって引き起こされたのかというところでしょう。
私は一連の経緯は、米国政府が欧州のオフショアマーケット(タックスヘイブンと言われ、アングラマネーのロンダリングに寄与していた歴史的金融利権)をテロ資金潰しの名目で次々と潰す一方で、自分たちの米国系タックスヘイブンを温存してきたことに対する欧州金融からの倍返しだと判断しているので、後者の見方をしています。

ここで一つ地図を見てみましょう。これはロシアへ経済制裁を行った国を示した地図です。

制裁国 1

この地図とブレトンウッズ3を結び付けて考えるには、多少の地政学の知識があると楽なので、茂木誠先生の動画リンクを貼っておきます。茂木先生は地政学の本も出されているので探してみると良いでしょう。
地政学の基本的な考え方世界の覇権争いと東アジアの今後茂木誠

地政学についてかなり乱暴に説明すると、次の様になるでしょう。

・大陸国(ロシア、中国、イランなど)は、陸路の要所を抑えながら通商路を確保して派遣を伸ばそうとする。(ウクライナは超要所)
・海洋国(日本、米国、イギリス、奥州、台湾など)は、海路の要所を抑えながら通商路を確保し派遣を伸ばそうとする。
・半島(欧州、韓国、インドなど)は、大陸国と島国で取り合いになる。
・隣り合った国同士は仲が悪い。

この地図からは、ウクライナ戦争は、半島である欧州を中心に海洋国と大陸国の争いに見てとれます。欧州金融がロシア側につき、コモディティ(原油、天然ガス、鉱物、穀物など)を裏付けとした通貨で、ユーラシア経済圏を作ろうとした場合、海洋国にはかなり旗色が悪くなりそうです。
次の経済編で述べますが、コモディティに対してコストプッシュインフレの形で西側通貨の価値は下がり(特に円)、しばらくは制裁をした国も逆に制裁される形になると思います。

これをもって「米国は衰退するから大陸国と関係を深めた方がよい」という意見が出てくるかもしれませんが、注意しなければいけないと思います。
なぜなら日本、米国、欧州の国民性には、非常に特徴的な共通点があって親和性がある一方で、大陸国とはこの共通点は乏しく同盟を組み相手としては適切ではないと考えるからです。
その共通点とは歴史的なもので、国民が「封建制度を経験したことがあるか」というものです。

ロシア人と欧州人を比べてみましょう。ロシアでは組織のトップが皇帝となり、その指示が末端まで行きわたります。例えその指示がとんでもない指示であっても末端から反対意見がでることはなく実行され、拒否するものは追放されてしまいます。
ですからロシア人個人は良い人が多くても組織としては残酷にふるまったり、市場の要求と違う製品が上市されてみたりすることになるわけです。

一方で封建制度を経験した国々、日本や欧州、欧州からの移民である米国では、組織の末端に属するものでも自分で考える傾向があり、トップからの指示が間違っている場合は反対意見を述べたり、あるいは現場で勝手に微調整して組織全体として形になるものが出てくる傾向があります。
常に新しい技術やシステム、高品質な製造業が日本や欧米から出てくるのは、歴史的文化的な要素が強いのです。

私は米国人ともロシア人ともビジネスの経験がありますが、米国人と組んだ時が最高でした。ロジックが通れば意見が通じることも多く、まともな同盟関係が構築できれば、日米同盟が世界最強だと思っているので、日本にとっては、新しい技術を生み出すことのできる海洋国同盟+欧州で、ユーラシア経済圏と対峙するのが良いと思います。

しかし問題は、米国金融をバックにした左翼グローバリストらの活動により、まともな同盟関係が築けなかったことで、その意味では今回のウクライナ戦争をきっかけに、欧州金融とロシアがドル覇権に一発かましたのは、日本としては歓迎すべき側面もあると思います。(ロシアの天然ガスを円で買いましょうか?)

グローバリズムとナショナリズム、国際金融の役割については、ロシア革命まで遡らなければならないので、馬渕睦夫大使の本と最新の動画リンクを貼っておきます。
『ひとりがたり馬渕睦夫 #73』ウクライナ情勢―歴史の教訓

また桜無門関で良い対談があったのでリンクを貼っておきます。
興味ある中高生には、日本の知的劣化が明らかになった様子を見ておいて欲しいと思います。もはやテレビ・新聞は捨ててしまった方が良いかもしれません。
【桜無門関】馬渕睦夫×水島総 第37回「ロシアとソ連を同一視する人々の限界、ウクライナの命運は天然ガス利権と米中間選挙に翻弄される」

学校でもこうした話をしてくれたら、歴史や経済の授業が面白くなるでしょうに。また国際金融の成り立ちや働きについて、具体的な反証をせずに陰謀論とレッテル貼りをする人たちの言う事は放っておきましょう。
「1+1=2です」という発言に対して陰謀論と言われたら、反論のしようがありません。陰謀がどうかは自分で判断すれば良い事です。

画像2

さて、いったいこんな話が野球の未来とどう関係があるのか。
次回の「経済編」に続きます。
ドラえもんの「危うしライオン仮面」の様な展開になってきました。

ところで中日ドラゴンズの選手たちのバッティングフォームが、昨年とは違い「前を向き始めた」ように思います。
また日ハムの清宮選手の動作も捻りモデルに近づいてきました。体重移動をもう少ししっかりしても良いと思います。

(2022年4月19日 追記)
ドラゴンズの本塁打が増えているという記事があったのでリンクを貼って追記します。4/18(月) 20:32配信のFull-Count編集部の記事です。

【中日に“本塁打5倍増”のうれしい異変 補強ゼロなのに…立浪監督の戦略が早速ズバリ】
昨季は開幕から17試合でわずか3本塁打も…オフは目立った補強せず
 昨季12球団ワーストの69本塁打だった中日に、うれしい“異変”が起きている。今季ここまで17試合を終え10勝7敗で3位につけているのはもちろん、すでにリーグ3位の14本塁打も放っている。オフには目立った補強せず不安の声もあった中、期待の若手たちが存在感を発揮。早くも立浪和義監督の“采配の妙”が出ている。」

日々忙しく詳細にチェックできていないのですが、スワローズやベイスターズなども良いようです。今年は、体重移動、バットの軌道、グリップなどの違いが、より成績(打率や長打率)に影響するかもしれません。

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