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お気に入りの美術館

私が参加しているメンバーシップ「オトナの美術研究会」で先々月から始まった執筆企画「月イチお題note」。
今月のお題は「お気に入りの美術館」です。

はじめに

私のお気に入りの美術館は静岡県静岡市にある静岡近代美術館です。

美術館の外観
(静岡近代美術館HPより)

静岡近代美術館と聞くと公立美術館のように思えますが、私と同じ世代の静岡県人なら誰もが知っているあの大村洋品店の社長で、この美術館の館長でもある大村明氏の個人コレクションを一般に開放することを目的に開設された個人美術館なのです。

美術館の名称については、個人美術館らしく「大村」の二文字を入れたかったようですが、ノーベル賞受賞者の大村智博士の個人コレクションを展示する韮崎大村美術館と名称が被っては申し訳ないと、ダメ元で静岡近代美術館と申請してみたら通ってしまったとのことです。

美術館の概要

静岡近代美術館は、かの徳川家康が晩年を過ごした駿府城(現在の駿府城公園)の近くにあり、JR静岡駅から徒歩で20分程と散歩するにはちょうどよい距離なのですが、幹線道路から少し入った住宅地の中にあるため最初は道に迷うかもしれません。

2016年新築された建物はコンクリートのボックス構造からなる2階建てで、なんと土足厳禁になります。
入口の中扉の前で靴からスリッパに履き替えるのですが、どう見ても取って付けた感があり、当初の計画にはなかったものと思われます。

室内に入ると1階が企画展、2階が常設展となりますが、元から大きな建物でないため、じっくり見ても1時間程で回れます。

基本的に個人コレクションなので大きな作品はありませんが、藤島武二、岡田三郎助、和田英作、梅原龍三郎、安井曽太郎、中川一政、林武、小山敬三、荻須高徳、熊谷守一、藤田嗣治、佐伯祐三といった近代日本洋画を中心に、コロー、ルノワール、マルケ、ユトリロ、シャガール、ヴラマンク、ビュッフェといった錚々たる面々の作品が並びます。
また、たとえ小さな作品であっても非常によく書き込みがされていて、どの作品もとにかく質が高いことがこの美術館の大きな特徴です。

展示室の様子
(静岡近代美術館HPより)

帰る際には、よほど混雑していない限りスタッフの方が見送りに出て来てくれ、ほぼ必ず「どの作品が気に入りましたか?」と聞かれますので、自分にとってのお気に入りの一枚を見つけておきましょう。

お気に入りの一枚

ちなみに、私のお気に入りの一枚は藤島武二の「朝熊山の日の出」です。
この作品は近くで見ると子供の落書きにしか見えないのですが、3m程離れて見ると手前の岩礁から水平線にかけての奥行きがすっと出て来て見事な作品に変わりますので、藤島は離れて見ると頭に入れておいて下さい。

あとがき

静岡近代美術館はオープンして6年経ちますが、ホームページが簡素だったり展示替えが少ないなど運営面であまり積極的な活動を行っていないことから、近代日本洋画が好きな人でもまだこの美術館の存在を知らない人が多いので、ちょうどよい機会と思って取り上げてみましたが、規模は小さくても本当に粒揃いの作品ばかりですので、ぜひ足を運んでみて下さい。


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