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宮城県美術館「リニューアル直前!宮城県美術館の名品ぞろい!」

先日、宮城県美術館で開催されている令和5年度コレクション展示「リニューアル直前!宮城県美術館の名品ぞろい!」に行ってきました。

はじめに

宮城県美術館について

宮城県美術館

宮城県美術館は、仙台のシンボル 伊達政宗公騎馬像がある青葉山公園(仙台城跡)の麓に位置し、1986年に開館しました。
本館は、フランスでル・コルビジェに師事し、日本のモダニズム建築の巨匠である前川國男によるもので、宮城県出身の彫刻家 佐藤忠良の記念館となっている別館と併せて7300点ほどの作品を収蔵しています。
2019年に突如県が建物の老朽化を理由に県民会館との移転集約案を発表しましたが、多くの人の反対にあい撤回を余儀なくされ、現在の建物を改修し存続させることになった経緯があり、今回がその改修工事前の最後の展覧会になります。

今回訪れた理由

私が近代日本洋画に興味を持ってほどなく、美術エッセイ「気まぐれ美術館」の著者で画商の洲之内徹の存在と出会い、この「絵を売らない画商」と呼ばれた洲之内が最後まで手放さなかった作品を、彼の没後に宮城県美術館が一括収蔵したことを知りました。
それからというもの、彼が遺した146点の
「洲之内コレクション」が全点展示されることがあれば必ず見に行こうと心に決めていたのですが、その機会が訪れないうちに前述した改修工事によって2025年度まで休館になることを知り、いても経ってもいられず出掛けた次第です。

展覧会概要

今回のコレクション展示は大きく分けて5つのパートで構成されています。

ありがとう山脇百合子さん

絵本《ぐりとぐら》の作画者であり、昨年急逝された山脇百合子の絵本原画が12タイトル約200点展示されています。

《ぐりとぐら》は1963年に第1作が発表され私もお世話になった世代ですが、今では第7話まであることを初めて知りました。

山脇百合子《ぐりとぐらとすみれちゃん》2000年

その第7話《ぐりとぐらとすみれちゃん》では、脳腫瘍により4才で亡くなった実在の女の子がモデルになっているそうです。

日本の近現代美術名作展

明治の高橋由一から昭和は吉原治良に至る、近現代の多彩なコレクションから選りすぐりの作品約40点が展示されています。

その中でも特に目を惹いたのは小山正太郎の《風景》なのですが、ぱっと見で印象派の作品に見えませんか?

小山正太郎《風景》1876-78年

正直、小山のことはよく知らなかったのですが、学生の頃は工部美術学校でバルビゾン派の流れを汲むフォンタネージから指導を受けたようです。
そのため、技法的にも写実主義に分類される作品かなと思いますが、制作年からするとちょうど印象派が台頭してきた時期でもあるので、小山がその影響を受けたのかは分かりませんが、いずれにしてもこの時期にこのような作品を描ける日本人がいたことに驚きました。

洲之内コレクション 絵のなかの散歩、気まぐれ美術館の代表作から

「洲之内コレクション」の中から、今回は彼の著書「絵のなかの散歩」や「気まぐれ美術館」に登場した作品を中心に約25点が展示されています。

そして、コレクションの中でも代表的な作品として扱われることの多い海老原喜之助の《ポアソニエール》にようやく会うことが出来ました。

海老原喜之助《ポアソニエール》1934年

洲之内が、戦時中は軍属となって中国での諜報活動に従事し様々な葛藤とも日々戦っている中で、「《ポアソニエール》を眺めているひと時は私の救いであった」と述べているように、私の第一印象も実は「マリア様?」でした。後日、頭の上にある笊は光輪をイメージしたものとすれば合点がいくと気付いたのですが、このような解釈はないのでしょうか?

ドイツ表現主義美術の名作 クレーとカンディンスキー

宮城県美術館は、開館当初からパウル・クレーとヴァシリー・カンディンスキーを収集方針に掲げて多くの作品をコレクションしてきましたが、今回はその中から選りすぐりの代表作を始めとして約20点が展示されています。

この2人の名前はもちろん知っていますが、それぞれの作品の特徴を述べなさいと言われたら、正直分かりません。
そんな私の目に留まったのはカンディンスキーの《夕暮》です。

ヴァシリー・カンディンスキー《夕暮》1904年

この作品はカンディンスキーがまだ30歳台、抽象表現を始める前に描いたもので、この頃は後期印象派の影響を受けていたそうです。
一見切り絵のようですが、黒い紙に水彩絵具をひとつひとつ置いていく手法で、本当に少ない描数ながら、手前の人物の立体感や後ろの人物との遠近感を見事に表現しています。

佐藤忠良の彫刻の代表作/素描の世界

別館の佐藤忠良記念館では、佐藤本人から寄贈された作品の中から、彫刻の代表作を中心に初期から晩年までの約50点と、人物デッサンや日常的なスケッチなど約35点が展示されています。

この展示での私の一推しは彫刻作品の《たつろう》です。

佐藤忠良《たつろう》1950年

この作品を見ていると、何故か頭をペシッとしたくなりませんか?また、作品タイトルが《たつろう》(平仮名がツボ)と知って、もう一度ペシッとしたくなりました。今の時代にそんなことをしたら児童虐待だと大騒ぎになりますが、私が子供の頃は日常茶飯事でした。そんなことを思い起こさせてくれるこの作品は、やはりリアルなのだと思いました。

あとがき

前々から宮城県美術館に行ったら絶対にしたいと思っていたことがありました。
それは、洲之内コレクションがどういう経緯で縁もゆかりもない宮城県美術館に一括収蔵されることになったのか聞くことでした。
本当は学芸員さんから話を聞きたかったのですが、ひとまず展示室にいた監視員さんに聞いてみたところ、「洲之内の没後、散逸の危機にあったところに宮城県美術館が一括購入を申し入れ、ここに来ることになったと聞いています」と、自信なさげに話してくれました。
私も私で「あっ、そういうことですね」と妙に納得してしまい、そのまま帰ってきてしまったのですが、今になってちょっと後悔しています。
どなたか、もっと詳しく経緯をご存知でしたら、ぜひ私に教えて下さい。



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