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おとり物件からイロイロ学んだ

三鷹で賃貸を探していても、希望条件を満たす部屋がいつまでも見つからないため昨夜、不動産検索アプリの範囲を国立までに広げてみたら、珍しく私の理想に近い物件Aが引っかかって興奮した。33平米の1DK(キッチン6、寝室8畳)、南東角部屋、脱衣所(独立洗面台・洗濯機・風呂・バストイレ別)、2階以上、徒歩10分圏内、駐輪場、6.2万。

翌朝に早速、内見のアポを取るために不動産屋Aに内見の希望を伝えると、明日の13時から可能とのこと。「現地集合でいいですか?」と聞くと、営業マンAは「ついでに他の物件も見てもらいたいので、事務所に来てください」と言った。物件Aほど条件の揃った部屋はそうそうないので、私は内心、他の物件を紹介してもらう必要はないだろうと思ったが、角が立たないようにこう答えた。万が一、物件A以上の条件の物件があったら、事前にメールで紹介してくださいと。

電話を切った後、物件Aのような掘り出しモノが本当に実在するんだと改めて驚くと同時に胸が躍った。明日まで大人しく待てる訳もなく、早速、周辺の環境を確認するために、自宅を出発。

アプリには住所が丁目までしか記載がないので、建物名を聞こうとメールを開いたら、営業マンAからメールが届いていて、明日の13時はアポが入っているから別の営業が担当するというメッセージが届いていた。予定変更に関して詫びる文もなかったので、一瞬、理解に困った。そして別の営業マンになるなら、朝一に内見したいと旨と、建物名を教えてほしいと返信した。

賃貸検索アプリの地図によると物件Aは、JR中央線国立駅南口から歩いて徒歩8分、閑静な住宅街の中にある。はず、だが、ない。代わりに外観の写真と異なる一軒家が建っている。不動産Aからの返信もまだない。そのため、近くにある地場の不動産Bに入店して問い合わせてみたら、建物名が書かれた地図を確認しながら、わからないので不動産Aに問い合わせてみるように言われた。

不動産Aに電話し、あるはずの場所に物件Aがないと説明。すると、「お客様が現地に行かないようにしていた」と言われた。え?と耳を疑ったが「周辺の環境を確認したいので建物名か住所を教えてほしい」と説明すると、「周辺の住所でいいですか?」と聞かれ、私が仕方なく「はい」と答えると、ある住所を伝えられた。

地図で見ると、それは別の建物の住所であり、中央線沿いに位置していた。道理で、好条件の物件にも関わらず、家賃が6.2万円と相場より安いわけだ。条件が揃っているのに破格の賃貸は大概、大通りや線路沿いにあるのは、あるあるだ。事前に知っていたら、わざわざ内見のアポを取ろうと私は思わなかった。

しかし、モヤモヤは募る一方だった。内見する前に、周辺の環境を確認するために現地に行こうとすることは、そんなに不動産屋に嫌がられるようなことなのか?そうしないように不動産屋が虚偽の情報を客に伝えるということは通常営業?会う前から嘘の情報を何度も伝えられる不動産屋を信用できないという自分のモヤモヤを晴らそうと、また別の地場の不動産を見つけたが、奥の方で4人互いに机を向き合わせながらパソコンと睨めっこしている雰囲気の暗い事務所で、入りずらさを感じた。グーグルレビューを見ると評価も低い。なるべく、地場の不動産屋を利用しようと思っていたのだが、不動産屋を選んでいる場合じゃなかった。そこで、以前から接客が丁寧だと感じていた大手の不動産屋の支店Cに行ってみた。

入店すると、デスクが客に向かっている明るい店内。営業マンCに住所不明の物件Aと不動産屋Aの対応について説明したら、眉間にシワを寄せながら、理解に苦しんでいた。

私が、内見前に現地に足を運ぶことはいけないことなのか?と聞いたら、「そんなことはない」と言う。不動産屋が情報を開示してくれないのは普通か?という疑問に対しても「うちではそういうことはしていない」という。そして快く、物件Aの名前と正しい住所を教えてくれた。不動産屋Aから伝えられた住所とは別の住所で、やはり線路沿いだった。

コレが所謂「おとり物件」かと悟った。この場合、物件自体は存在するが、掲載された場所にない。それは「存在しない」と等しい。

営業マンCによると、営業マンAの「明日なら内見可能」というのも本当かどうかわからない(営業マンの都合かもしれない)と言う。そして物件Aのオーナーから直接、内見の許可を取るために電話してくれた。結局、繋がらなかったが、試してみてくれたことが私は嬉しかった。

営業マンCは、私に時間に余裕があるかを聞いた上で、希望条件に近い物件を探す提案をしてくれた。その際も、私の条件を丁寧に聞き取りしてくれたので、安心感を覚えた。営業マンAは、私が知りたい情報は伏せる一方で、私の条件を最後まで聞く前に「他の物件も見せたい」と要求してきたので対照的だった。

結局、営業マンCから提案された数々の物件はどれも一長一短で、内見をしたいと思うほどのものではなかったが、それほど物件Aができすぎた話だったということが改めて裏付けられるようだった。

気になる物件があれば資料を渡してくれると言ってくれたので、最後に見せてくれた2DKの物件を指差した。当初希望していた駅、間取り、家賃からも全べて外れていたけど、彼氏と老後にしたいと思う生活のヒントになるような物件だった。各々ベランダ付きの2部屋の中間にキッチンと風呂などの共同スペースがある間取り。これなら、お互い自由な時間を過ごせそう。

同棲した方が経済的な負担も軽減されるのはわかっているが、今はまだ別居した方がいいと思っていた私の考えが少し、揺らいだ。二人で暮らすのは理想的ではありつつ、私が彼に精神的に依存してしまうのが不安だという要素が一重にあるが、その問題をこの間取りが解消してくれるかもしれない、と。

不動産屋Cを後にし、国立から西国分寺まで歩いて喫茶の名店「クルミドコーヒー」で一服した。くるみ割り人形に出迎えられ、子ども心をくすぐる空間に足を踏み入れただけでホッと落ち着く、その場にいるだけでも贅沢なのに、スイーツも紅茶も抜かりない、心地よい時間を過ごせた。

売り物として置かれていて読んでもいい本棚から選んだのは『あしたも、こはるびより』。80代の老夫婦の自足自給の丁寧な暮らしを多めの写真と文章で追う一冊。私も彼氏と一緒にこんな老後を過ごしたいんだよなと改めて思った。私は終の家を求めているのだ。だから、仮住まいであっても適当に選んだりできない。住む場所は生き方に直接関係する。そして私はそれをまだ模索している最中だから、なかなかピンとくる部屋が見つからないのかもしれない。

反対に生き方をもっと明確にしたら、住まう家が見つかるかもしれない。理想的な空間で、理想的なカップルの本を読みながら、今日も理想に少し近づいた気がしたと思っては、近づけなかったりして、モドカシイ自分を俯瞰しながら、この過程を楽しみながら進もうと心を新たにした。

帰ったら、不動産Aからメールが届いていて、3軒の物件が提案されていたが、私の希望条件を最後まで聞いていないだけに、外しまくりだった。もちろん私の質問への回答はスルーしたままである。

明日の不動産屋Aでの内見は中止してもらい、その時間を使って不動産屋Cにお礼のメールを書くことにした。

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