なんでもない日の特別なホットケーキ

--俺と同居人--1

天気、普通。
気温、普通。
特にやることのない休日、気分も普通。
平和なのは喜ばしいことだけど、刺激がないのもつまらない。


未だカーテンを閉めたままの寝室に、隙間から僅かな光が差し込んでくる。
寝起きの頭が覚めてくると、突然鳴り出す俺の腹。
外で鳴く鳥の声と、隣で眠る同居人の寝息以外聞こえない静かな空間では思いのほか音が大きくて、一人で恥ずかしくなってしまった。
音を立てないようにベッドから降り、寝室から出る。

リビング全てのカーテンを開け放ち、薄暗かった部屋に光を取り入れてキッチンへ。

「サラダと、ウィンナーにベーコン…そうだ、今日は少し豪華なホットケーキを作ろうか」

なんでもない日だからこそ、ちょっとした刺激が欲しい。
幸い冷蔵庫には、結構色々な食材が揃っている。
卵に牛乳、マヨネーズも入れるとふんわりする。
味に支障はない。
それに今日は、生クリームと苺にブルーベリー、ラズベリーを添えてやろう。

高揚する気持ちと比例するように、材料をボウルに入れていく手つきは軽い。
水分を含み、重さを増した生地をかき混ぜるのも心なしか疲れない。

「おはよう、良い匂いだ。今日はホットケーキか」

「あぁ、おはよう。今日のは少し豪華なやつだよ」

「最高だね、ありがとう。僕はコーヒーを淹れるよ」

そう言って俺の額に口付け、コーヒーの用意をする同居人。
こいつの、こういうところ…少しくすぐったい。

少ししてホットケーキの甘い匂いとコーヒーの深く香ばしい匂いが合わさって、尚更空っぽの腹が刺激される。
すると同時に鳴る腹の虫。俺は本日二回目。
思わず二人で顔を見合わせ、朝っぱらから爆笑してしまった。

艶のある小麦色に焼けたホットケーキを皿に盛り、生クリームとベリー三種を丁寧に盛り付けて完成。
テーブルにコーヒーと一緒に並べて席につき、二人で手を合わせる。

『いただきます』

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