【緩急のつけどころ】Champions League Group A MD1 マンチェスター・シティvsRBライプツィヒ

 さて、だいぶ間が空いてしまいましたが、CLアーカイブ企画の第二回になります!本当は週中に仕上げるつもりだったんですが、FIFA22(サッカーゲーム)のアーリーアクセスに夢中になっていたらいつの間にか週末が来ていました。おっかしいな……。


 (※注意※この段落は読む必要ないです)そして本当はやるつもりなかったんですが結局FIFA Ultimate Team(※お金を出して強いカードを引いたら勝てるゲームモード)をやってしまっています。本当はやるつもりなかったんですが、今年中にPS5を買う可能性が高い → PS4とPS5両方でプレーできるのは「Ultimate Edition」のみ → 「Ultimate Edition」にはいっぱいFIFA Ultimate Teamの特典がついてる → もったいないのでプレイする → 面白いのでのめりこむ → あれ……?時間とお金が……? → 終 了 まあ、FUTやってたら流行の選手とかに聡くなるので実際便利な側面もあるんですよね注目の若手選手とかにも詳しくなれますしね(オタク特有の早口)。もしFUTやってる人がおられましたら一緒に遊びましょう~。




ニチャァ…




 はい、では気を取り直してここから本題の方に移っていきますね。


メンバー

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 シティはリーグ戦からの大きな変更として挙げられるのがDFライン。ウォーカー・ラポルテがベンチに下がり、ジンチェンコ、アケ、ディアス、カンセロという組み合わせになっています。かなり攻撃的な組み合わせと言えそうですね。また右サイドがリーグ戦ではジェズス-ギュンドアンの組み合わせだったのがデ・ブライネ-マフレズとなっています。

 一方のライプツィヒはリーグ戦から3名の変更。ショボスライ→フォルスベリ、カンプル→アダムス、シマカン→クロスターマンとなりました。特に気になるのはカンプル。バイエルン戦では食いついて真ん中を空けるシーンが多かったため、シティに対してはリスクととった可能性もあります。



緩急のつけどころ→シティの「7対6」

 この試合で注目したいのは、やはりシティの攻撃です。キックオフ以降、シティがボールを持ち、ライプツィヒがボールを持たせる展開となりました。キックオフ直後のシティの攻撃配置を図示すると、以下のようになると思います。

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 キックオフ直後は、やや左右非対称の配置を取っていたシティ。両サイドバックは、ジンチェンコがインサイドに入る所謂偽SBのポジションを取り、カンセロが幅を取る時間が多かったです。

 この違いは左右でどういう攻めを指向するかによって決まっていたとみられます。シティの右サイドにおいては、カンセロ・マフレズ・デブライネの3人が旋回しながら相手のマークを外して崩そうとするのに対して、左サイドはグリーリッシュとシルバの2人でのポジション変更がメインで、ジンチェンコが旋回に加わるシーンは比較的少なかった印象です。

 アンカーは封鎖されているので中央は迂回して前進→左右に振ってビルドアップの出口を探り、崩しの局面に移行→旋回やポジション変更の動きで最終ラインを攻略してフィニッシュ。最序盤、ある種「手癖」とも呼べそうなシティの攻撃が続きます。

 このままやり続けても得点できそうな雰囲気はありましたが、「手癖」であるがゆえに、ライプツィヒの守備のプランとかみ合う部分もあったと思います。そこで10分ごろから、シティはひとつの変化を加えます。それが「2人の偽サイドバック化」でした。

 ライプツィヒの守備の狙いは、センターフォワードとトップ下でアンカーを封鎖しつつシティの攻撃サイドを限定し、限定したサイドで圧縮、潰してカウンター、という形だったと思います。シティの攻撃フェーズを「前進→崩し→フィニッシュ」と表現するなら、対応するライプツィヒの守備フェーズは「誘導→圧縮→奪取(→カウンター)」

 しかし、シティが双方の偽サイドバック化を行ったことで、ライプツィヒの守備の狙いが空転するようになります。図示すると以下の通り。

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 カンセロが偽SB化して中央のパス回しに参加した結果、シティのビルドアップ局面において、中央エリアで7対6が成立します。この狭いエリアでのパス交換によって、ライプツィヒはジンチェンコとカンセロをどう捕まえるかが定まらず、そうなればロドリの捕まえ方も定まらなくなり、シティは中央で前を向いて大外に張ったウイングを使えるようになります。

 先ほどのライプツィヒの守備プロセス「誘導→圧縮→奪取(→カウンター)」と照らし合わせると、中央でパスを回されるので片方のサイドに誘導できない、一気に運ばれるので圧縮できない、当然相手に余裕があるので奪取できない、と苦しい状況に追い込まれることとなります。

 シティの攻撃プロセス「前進→崩し→フィニッシュ」でいくと、「前進と崩し」をこの7対6で一挙に成立させることができ、広いスペースをウイングがフィニッシュで使う、といった形に持ち込むことができていました。

 シティの先制点はCKからアケーのヘッドによるものでしたが、そのCK獲得につながったのは上述の形によってロドリが前を向き一気にマフレズにロングボールを送って加速させたことで作ったチャンスからでした。

 さて、ライプツィヒがこのシティの2人の偽サイドバック化への対応を定められなかったことでこの試合の趨勢はほぼほぼ決してしまうこととなります。「7対6」と、「手癖」とを織り交ぜながら柔軟に攻め手を作っていくシティ。またしてもいい形で投入されたクロスによってムキエレのオウンゴールを呼び込み前半30分までにシティが2点先行。


「ペップの怒り」の理由

 シティに隙があるとすれば、それは攻撃ではなく守備においてでした。序盤のシティは、守備においてはインサイドハーフが前に出てウイングが下がって4-4-2のスリーラインを形成する形が多くなっていました(下図)。

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 この形での守備に大きな綻びは見えなかったのですが、途中からライプツィヒがGKのグラーチを含めた自陣深くでのビルドアップを開始するとシティの守備がかみ合わなくなっていきます。

 シティはハイプレスの際は4-3-3のまま前から詰めていきます。中央のトーレスは主にアンカーの位置に入るライマーかアダムスへのパスラインを消すタスクをこなしていたため、プレスをのスイッチを入れるのは左右にボールが動いた時のマフレズとグリーリッシュ。しかしこの2人のプレスがどうにもうまくいきません。

 マフレズは対面のCB(オルバン)がボールを持った際にプレスのスイッチを入れるのですが、正面からふわっと詰めていくため相手の選択肢を限定できていない状態になることが多かった印象です。

 こうなるとその後ろをカバーするデブライネが「サイドをカバーすべきか?中央をカバーすべきか?」で迷ってしまい動けなくなる。危険な中央を優先した結果、アンヘリーニョが上がったライプツィヒの左サイドが常時数的優位の状態になっており、ここをきっかけに攻め込まれるシーンが多くなっていました。エンクンクの1点目もこの流れの中から生まれています。

 逆サイドのグリーリッシュも決していいプレスのスイッチを入れられている訳ではありませんでした。こちらはGKのグラーチがボールを持っている際にCBをふわっと捕まえにいくことで、背中に立つムキエレがフリーの状態。グラーチからムキエレへの浮き球パスが通り前進、というシーンについても再現性があるものでした。

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 この2人に対してペップがブチキレているシーンは中継映像でも抜かれており話題になっていましたが、恐らくこの守り方のことについて怒っていたのだと思われます。


 とまあ、シティにも「隙」はあったと思いますが、あくまで「隙」というだけで局面のクオリティで圧倒的に優位だったため、シティがモメンタムを譲ることはありませんでした。ライプツィヒはシティのミスを起点に追いすがりますが、そのたびにクオリティで突き放します。グリーリッシュの突破からのコントロールシュートも見事でしたが、カンセロのミドルシュートはまさにワールドクラス。

 一方のライプツィヒは、アンドレ・シルバの使い方についてあまりチームでコンセンサスが取れているように見えませんでした。先述のビルドアップの形から相手を引き込んでロングボールで一気にチャンスメイクしたい気持ちは見えましたが、彼が列を降りてボールを引き受けるのか、裏に蹴り込んでラインブレイクするのかがかみ合っていなかった印象です。アンドレ・シルバが交代したあと、より地上戦をベースに戦っていく方向性が明らかになった時の方が相手を脅かせていた気がします。エンクンクの3点目は地上戦へのこだわりによって奪ったものでした。

 ルーズボールへの目測を誤ったアンヘリーニョが二枚目のイエローカードで退場したこともあり、最終的にはシティが6点を奪って快勝。ただ快勝とはいったものの、3点を取られているのも事実。今回の攻撃に振り切ったスタメンは力の差がある相手では有効だと思いますが、同格以上の相手に対して送り込むのは難しくなったかもしれません。


 グループAはこれでシティが勝ち点3、PSGとクルブ・ブルッヘが勝ち点1、ライプツィヒは勝ち点0の立ち上がりとなりました。内容面で先行しているのはシティでしょう。PSG・ライプツィヒはチーム状態を上げながらグループリーグをこなしていく必要があるため、チームとして統率の取れていたクルブ・ブルッヘに食われる可能性も十分にあります。彼らのチームビルディングの進捗がこのグループの命運を決することとなりそうです。


 しかし、やはりチャンピオンズリーグ。どちらの試合も見るべきところが多く、レビューを書いていてとても楽しかったです。次節も楽しい試合が観れそうで今から楽しみ!



ちくわ(@ckwisb

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