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D2Cブランドがコロナ禍に1年をかけて実行した唯一無二の打ち手

⓪はじめに
ちまたのスタートアップでは、「透明化」がトレンドになっている。自社のブランド戦略や打ち手、売り上げといった情報を、つまびらかに公開している企業が脚光を浴びる。そこで明らかにされる波瀾万丈なサクセスストーリーに、人は共感する。等身大のブランドにはファンがつき、いいねやリツイートは駆け出しのブランドにとってのエールとなる。

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(テレビ朝日「グッド!モーニング」)

今回のnoteでは、先日反響のあった「1年間山の中で穴を掘って映画館を作る」ことのノウハウを余すことなく公開することにする。正直に言うと、ここまでの情報を公開をしていいのかという迷いもある。

だが、今後、穴を掘る人にとっての不安を少しでも解消できるようにしたいという思いから、そのノウハウをD2C(Digging to Consumer)ブランドとして初めて公開することにした。有料noteとして出しても十分な内容であると自負しているが、方法論はシェアをして広めていくほうが業界のためである、という観点から無料で公開をすることにしている。

体系立てて内容をまとめたため、ファッションブランドをこれから立ち上げたい、もっと直接的に言うと、穴を掘って自らのビジネスにつなげたいと考えている人には、きっと役立つ情報になるだろう。

① メンバーの合意形成

そもそも「今、穴掘りがブランドの成長になるか」という点を最初に検討する必要がある。何事もタイミングが重要だ。もしブランドにとって穴掘りが必要がないという結論が出るのであれば、それは穴掘りが必要でないというよりは、時期が適切なタイミングではないと考えた方が良い。

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これはベンチャーキャピタルによる出資とも近い考えかもしれない。お金はいつか必要にはなるものだが、必要ではない時期に出資を受けてしまっても負担になるだけだ。ましてや、穴掘りは体力的にも時間的にも多くの労力が割かれるため、自社にそのリソースがあるか、適切な時期かを認識する必要がある。

私の場合は、信頼のおけるチームメンバーの3人に「そろそろブランドとして穴を掘り始める時期ではないか」と相談をした。幸いなことに、他メンバーも「今」が適切なタイミングだと考えていたようで、満場一致で穴掘りに舵をきることができた。メンバー全員でビジョンを共有することができたら、ゴールまでの80%の道のりは到達したとも言える。

② 戦術の整理・実行

チーム内でビジョンの共有ができたら、それを具体的なアクションに落とし込むことが必要だ。つまり、戦略を立てた後に戦術を実行するということだ。どれほど良い戦略を立てたとしても、お粗末な戦術が続くようでは成功はしない。『キングダム』や『三国無双』からもわかる通り、それは何千年も前から存在する鉄則であることは間違いない。

今回のnoteでは、それらの戦術については項目のみを各フェーズごとに書くのみに留め、詳細には記載しない。個人の体験によるところがあるため、全てのブランドに再現性があるわけではないことをご容赦いただきたい。反響があれば追加で(もしかしたら有料になるかもしれない)、それぞれを紹介することにする。

ー原始期ー
1. 草の除去
2. 土の層掘り出し
3. 粘土の層掘り出し
※クワの先端を土に取られるため腰への負荷増
※一方、この辺りから穴掘り自体が快楽に変わる

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ー没頭期ー
4. 穴を横に拡大する必要が出てくる
※同じ場所を掘り続けていると深くなりすぎて上からではクワが届かなくなる。体がすっぽり入れる状態にするため横展開が必要。
5. 人一人が横になれる状態の穴(深さ2m)

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ールネサンス期ー
6. 腰痛によりエンタメコンテンツへ傾倒
⑴ 穴でのセレブ暮らし
⑵ アンダーグラウンド
⑶ 穴チャーハン
7. 雨の日の掘削で穴掘り終了

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ーコペルニクス的転換期ー
8. 人が暮らせるくらいの空間にできるとひらめき穴を拡大
9. 水糸を使って壁を直角に削る
10. 建築士のコンサルティング
11. 壁に板を張っていく
12. 床をパレットで底上げして水が床にあふれないように張る
13. 竹を30本切り取り、炙って油抜き
14. 土を盛り、ブロックなどを使って土台を固定
15. 竹をのせて屋根を作る
16. ガルバリウム波板を屋根に固定

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ー成熟期ー
17. 土、腐葉土、パーライトなどで芝の生息可能な土作り
18. 17を巻き、さらに目土を入れる
19. 芝を張る
20. 内装飾り付け
21. 外装準備
22. 映画関連備品(プロジェクター、ポップコーン、ビール)の準備
23. 開演

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③ PDCAを回す

これを読んでいる皆さんには釈迦に説法かもしれないが、PDCAを回すことは重要だ。自分の頭の中やイメージで穴を掘り、それを実際に行動に移す。私の場合は、頭の中にあるイメージや作戦を全て書き出すことから始めたが、そのイメージ通りにうまくいくディガー(穴掘り人)はいない。

なぜなら、実際には土の層を超えると次は粘土の層、さらには岩の層が待っているからだ。それらのことは手を動かしてみないとわからないことであり、想像の中ではぶつからない壁だ。そのような中でも諦めずに継続できるか否かが、ディガーとしての成功を左右する。

成功する人と失敗する人の差を表すイラストとして有名なイラストがある。ディガーとして過ごす毎日はまさにこの絵の通りで、掘り続けることに意味があることは自明だろう。

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私はこのイラストのようにもっと深く、大きく穴を掘り続ければ、必ず宝を掘り当て、売り上げは上がるはずだと自分に言い聞かせてクワを振り続けることにし、映画館を作る羽目になってしまった。(まだ宝は掘り当てていない模様)

④ おわりに

途中で愛想をつかすことなくここまで読んでいただきありがとうございました。長々と冗談のようなものを書き連ねてしまいましたが、最後に本音をお伝えします。

目に見えない敵と闘った一年は、目に見える形で日常を変えました。

行き馴染みのお店やお世話になっている工場の方、海外で戦う友人も全員が歯を食いしばり、ギリギリのところで闘っている姿を目にしてきました。

”人を歩かせる”ジーンズを販売するブランドである私たちにとって、自分たちが伝えたいメッセージまでもが誰かにとって迷惑になってしまうことは想像もしていませんでした。

この一年、苦しかったです。
でも、この一年、不幸ではなかったです。
僕は、心の底から幸せを噛み締めていました。

一見すると無意味なことに没頭し続けたこの1年間。

「穴掘り」と「ジーンズを売る」ことは全く関係がないと思えるかもしれません。普通に考えると、アパレルブランドがやることではありません。それでも、Rockwell Japanの製品である"JOURNEY ARMOUR"と「穴掘り」は切っても切り離せないものでした。

”JOURNEY ARMOUR”とは、”人を歩かせる”ジーンズ。

私たちはそれを「誰かの挑戦の一歩目を後押しする」ジーンズだと自負しています。歩くことでしか柔らかくならない超極厚のジーンズを、自分だけの一着に変えていくという思いで一歩を踏み出す。そんな人が増えることを願って作った製品です。

この”JOURNEY ARMOUR”の色落ちを進めるために思いついたことが「穴掘り」でした。続けるうちに、いつしかジーンズの色落ちが目的ではなくなり、穴を掘ることに夢中になっていました。

「ああ、この感覚を届けたいのか」と、自分で製品を作っておきながらやっと腹落ちがしたのです。

ジーンズをきっかけに始めたことが、気づかぬうちに没頭を生み出すこと。意味や理由、生産性などがいちいち求められる少々窮屈な今の社会の中で、本人にしかわからない没頭感。

誰にも理解されなくてもいい。
自分だけが楽しいと思えるものであればそれでいい。

一歩踏み出した先にあった「没頭」を感じられた瞬間こそ、自分にとっての豊かさや幸せを産むのだと、今なら思えるのです。

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自分の世界に没頭した先に、”JOURNEY ARMOUR”は自分だけの一着となり、ようやく完成品となります。

あなたの行動、挑戦、記憶が、”JOURNEY ARMOUR”には刻み込まれていきます。ただの服じゃない、「挑戦を刻む記憶装置」をお届けできたら嬉しく思います。

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↓製品を気になった方はぜひホームページをご覧ください↓
https://www.rockwelljapan.com/about

最後までお読みいただきありがとうございます。今後ともジーンズブランドRockwell Japanをよろしくお願い致します。