ショクナイって何?!他局でレギュラーって何?ローリングストーンズの凄腕マネージャーから信頼を得たライブ撮影の裏側とは?!日本一の音楽ディレクター秘話満載!
土屋:なんでテレビだったんですか?
棚次:やっぱりクリエーティブなことが好きだったんで、このまま一生、あと30年も40年も、総務とかそういうとこで数字見たりするのが嫌だなと思ったんで。
土屋:でも(その頃)テレビは人気があったっていうか、テレビ時代にはなって。
棚次:そうです。テレビ時代になるぞというのはすごくあった。
土屋:例えば、大体、受験する時に聞かれますけど「どんな番組やってみたいんだね?」みたいなことを言われたとしたら?
棚次:言われなかったですね。
土屋:言われなかったんですか? でも内心は?
棚次:内心やっぱり音楽好きだったし、結構耳がよかったんで。コーラスとかやっていたけれども、音、レコードの曲聴いても、すぐ譜面に起こしたりできたんですね。
土屋:ああ~。コーラスやってたんですか?
棚次:はい。
土屋:バンドじゃなくて?
棚次:バンドじゃなくて。クラシックが、ガイキチぐらい好きだったんで。
土屋:あ、そうなんですか?
棚次:音楽は、その時、ポップスとか歌謡曲とか全然知らなかったんです。
土屋:そうなんですか?
棚次:はい。
土屋:へえ~!
棚次:入った時、最初に就いたADは『レ・ガールズ』です。
土屋:『レ・ガールズ』か。見てました。
棚次:西野バレエがやってたの。
土屋:あれが最初に就いたAD?
棚次:はい。
土屋:あれは音楽バラエティー?
棚次:あれは音楽バラエティーだけども、その頃は、ただ「音楽番組」としか言ってなかったです。それも終わってから、日曜日の12時15分かな? 12時かなんかに『こんにちわバラエティ』っていう番組ができて。
土屋:それはどんな番組だったんですか?
棚次:『レ・ガールズ』の出演者の枠を広げて、安いギャラでも来てくれる人を増やして。で、音楽は必ずあって、コント的なもの、そういうような、ちょっと笑いをとるようなコーナーがある、そういうような番組が『こんにちわバラエティ』です。っていうのがありましたね。
土屋:『こんにちわバラエティ』っていうことは、バラエティーってものがまだ確定していない時代に、こういうのがバラエティーだよっていうことを……。
棚次:多分そうなんじゃないかなと思います。
土屋:みたいな感じの?
棚次:僕は企画書は、それは出していないんで。
土屋:ああ~。
棚次:その後は、白井荘也がやっていた、あれは完全にバラエティーですね。
土屋:ああ、『カックラキン』?
棚次:『カックラキン』その前から。
土屋:ああ、その前に?
棚次:『ドリフ』もレギュラー番組をやりましたからね、
土屋:なるほど。
棚次:だからバラエティーの、音楽班が作るバラエティーっていうのは、白井荘也さんが、やっぱり創成期というか、先頭を切ってというか、陣頭指揮でしたね。
『コント55号のなんでそうなるの?』とか。
土屋:『なんでそうなるの?』の歌部分?
棚次:歌部分っていうか。
土屋:あれ、歌部分ってどこで撮ってた? スタジオ?
棚次:スタジオ、スタジオ。
土屋:ああ、そうか、そうか。
棚次:それをだから「なんでそうなるの?」っていうような面白い撮り方にしてくれっていうPからの(リクエスト)。
土屋:はあ~! 齋藤さん?
棚次:だったかな?
土屋:じゃないのか、仁科さんか?
棚次:仁科さんかな? あの時はな。
土屋:仁科さんからの発注で、じゃあちょっと面白い撮り方の……。
棚次:うん。『なんでそうなるの?』に……。
土屋:かかるように?
棚次:歌が終わったところで、音楽シーンが終わったところで「なんでそ~なるの! イヒヒヒヒッ!」っていうふうに入れたいから、それが不自然にならないように。坂上二郎さんが、学校の教員の歌みたいのを、懐かしがって作ったような歌を歌ったんですよ。レコードを出したんですよ。
土屋:はいはい。
棚次:それは教室のシーンで、正面に黒板があって、生徒がいっぱい入ってて、聞いてる人、ちょっと泣いてるような子どもたちがいたり。それで3番が終わって、二郎さんからずっと引いてくると、生徒たちに、その数十人ですが、全部逆、こっちに向いている。
土屋:逆を向いてる?
棚次:うん。チルトダウンしながらローになってくると、全部こっちを向いてると。で、もう歌が終わって「なんでそうなるの?」とか、例えばそういうような。
土屋:なるほど。生徒はだから、正面、二郎さんを見ていなかったということになるんですね?
棚次:いや、その間に変えたということなんですね。
土屋:あ、変えたってことなのか。
棚次:うん。だから、それと別で撮っておいて。今のだから「いうことになるんですね?」っていうのは、そういう質問は受け付けないんですよ(笑)。
土屋:なるほど、なるほどね(笑)。でも、寄りで、要するに目線合わして、こっちでカットワーク、こっちでカットワークってやっといて、で、引いてくと、こっち見てるっていう。で、それは「なんでそうなるの?」って。
棚次:当然、黒板は向こうにあって、なんか書いてるから生徒は向こう向いてると思い込んでるわけですよね。
土屋:なるほど。
じゃあ「今夜は最高!」っていう番組に関して、ちょっとお聞きします。やっぱりあれもテレビ史に残る番組ですけど、土曜日の夜ってこともあって、ちょっと大人なバラエティーを作ってみようっていうことなんですか?
棚次:そうですね。
土屋:それは、テレビ全体がちょっと子どもっぽいっていうか、だから、大人向けバラエティーっていうジャンル自体がなかったんですよね、きっと。
棚次:なかったですね。だから、そこで扱う音楽もね、バラエティーで音楽扱うっていっても、そこで持ち歌を歌うとか、そういうのばっかりだったじゃないですか。それで音楽番組と称してたけども、いわゆる音楽のショーの要素を備えたバラエティーっていうのはなかったですよね。音楽番組って偉そうに言ってるけども、持ち歌を歌ってるだけじゃないかって。
土屋:それまで、その後も含めてかもしれないですけど、ないですよね、あの感じっていうか。
棚次:ないですね。だから、一番近いところでは、『ミュージックフェア』でさえ、あれ、持ち歌ですからね。
例えばね、マイケル・ジャクソン。
土屋:マイケル・ジャクソンやりましたよね。マイケル・ジャクソンは、向こうから指名ですか? それとも一応、日本テレビから?
棚次:マイケルさんは、こっちからです。
土屋:じゃあ日本テレビからやる、と。だったらもう、うちは棚次しかいないぞっていって。
棚次:「うちは」じゃなくて「日本には」(笑)。
土屋:っていう感じですよね? で、棚次さんがやった。
棚次:はい。
土屋:あとはストーンズ?
棚次:ストーンズ。例えば、ストーンズなんかもね、ストーンズは、結構、ちょっと鼻持ちならない、自慢話になって嫌なんですよね。
土屋:いや、全然、全然。今日は「テレビ史の内側」ってタイトルなんですよ。だからテレビ史、外側ではいろいろあるでしょうけど、その中の内側の話を聞きたいので、今日は教えてください。全然鼻持ちならなくないですから。
棚次:ああ、そうですか。
土屋:はい。ストーンズは、だから、指名ですよね?
棚次:いや、もともとは指名ではなくて、大推薦はあったんですけれども、それまでに、僕はフジテレビにもレギュラーがあったぐらい、外タレの番組を撮ってたんですよ。
土屋:フジテレビでレギュラーやってたんですか?
棚次:はい。
土屋:外タレの? えっ! いつ頃?
棚次:外タレの番組を月1。
土屋:それはショクナイ?
棚次:ショクナイ。はい。
土屋:(笑)。
棚次:ショクナイだから、名前はもちろん変えてね。
土屋:ああ、そうですね。
棚次:普通はだから、ショクナイっていうと「おまえ、日テレの看板持ってるからできるんだぞ」って言うんだけども、もちろん名前も変えてあるし。
土屋:だからショクナイですよね、力ですよね。
棚次:そうです、そうです。これです。
土屋:え、それ『うわさのチャンネル!!』の後ぐらい?
棚次:『うわさのチャンネル!!』の後ぐらいからですね。
土屋:はあ~! で、そんなこともあって、割と余裕のある時期があって、フジテレビのレギュラーをやった?
棚次:その時にレギュラーをやって。
土屋:それはどのぐらい知られているんですか? 日本テレビ的には。
棚次:代理店が2社知っていたんですね。アサツーの人と電通かな。
土屋:じゃあ日本テレビは完全にもう、全く内緒?
棚次:うん。
土屋:内緒(笑)。
棚次:ショナイってやつ。
土屋:で、その番組はフジテレビの?
棚次:そういうのをやっていて、自分の中でいいシーンとかそういうの、アーカイブを持ってたんですよね、外タレのね、いろいろ。
土屋:それは基本的に、外タレが来て撮って。
棚次:そうです。
土屋:日本でスタジオで歌って撮ってっていう感じの?
棚次:スタジオじゃない、ライブです。
土屋:はあ~! はいはい。そういう番組やって、いいシーンも、そういうのを添えて?
棚次:そう。それで、そういうのもあって、ローリング・ストーンズの時に、自分のヒストリーを書いて、こんなのやってる、こういうのをやってる。マイケル・ジャクソンも、5年前か6年前に撮りました。それをその頃のVHSですよね、それに粗編して作品集として、マネジャーっていうか、向こうの人に。
土屋:ストーンズのね。
棚次:ストーンズのマネージャーに。
土屋:送ったんだ。そこにはだから、フジテレビの他のやつも入れて?
棚次:もちろん、もちろん。それで間に事業部が入ってたから、事業部のナカニシさんっていう人なんですけど。
土屋:はいはい、いました。
棚次:ナカニシさんにだけは、そのリストも渡したからね。「これ、日本テレビじゃない番組もあるけども、実はこうこう、しかじかで……」。ナカニシさんにだけは言っておいたんですよ。
土屋:なるほど。
棚次:「ショクナイだから」。これはちょっと、また鼻持ちならないな。
土屋:いや、いいです、いいです。ぜひ今日だけは。
棚次:はい。で、東京ドームの最初の年かな?
土屋:ストーンズ。
棚次:それで来て、偉そうなマイケルとかいう人がいて。
土屋:ストーンズのマネジャー。
棚次:マネジャーがいて、その全部を取り仕切っていて、明日から本番が始まるって日ですよ。で、最終日に撮ろうと思ってたからね、日にちはまだ1週間以上あったんですよ。どこにカメラを置きたいとか、ステージにドリーいっぱい立ってるじゃないですか。
土屋:はいはい。
棚次:イントレがここで、そのやぐらは、ここにあるのは、全部照明。舞台の照明がイントレにありますから。カメラは完全に舞台の正面に欲しいんで、できたら違う所にこちらで立てたいって。
ここのとこにレールを敷いてとか全部説明して、自分の作品集を渡して、リストを渡して、したらその翌日に会ったら「見た」と。その頃、英語もあんまりだったから、いわゆる「見直した」みたいなことを言ってくれて、それで握手されて。
土屋:ああ~。信頼を得て。
棚次:信頼を得て。で、その翌日は下見で行ったわけですよ。カット割りのメモを持って。そしたらね、にこにこ笑ってね。
土屋:そのマネジャーっていうかプロデューサーが?
棚次:うん。「見ろ」つって。イントレが正面に立ってるんですよ。
土屋:ああ~!
棚次:彼たちは、カーペンター(作業員)を連れてきてるから。
土屋:だから、照明イントレをちょっとずらしてくれて、カメライントレを正面に立ててくれて、こういう画を撮ってくれるやつだったらってことですよね。
棚次:そうそうそう。それもこっちでお伺いを立てたのに、翌日行ったら、もう立ってたんですよ、もうイントレが。
「始まる前の楽屋もいいぞ」って言われて。僕はライブの楽屋を撮るのが嫌いだったんですよ。見てる人の、観客席の人の目線からいくと、あんなの邪魔でしょうがない。先に内蔵を見ちゃうのはね。だけど、もう本当にすげーうれしかったけども、「いや、それはいい」って「俺の趣味だから」って言って。
土屋:なるほど。撮れるって言ったのに、遠慮したってことですね。
棚次:遠慮したっていうか、そう。まあ、まあ。
土屋:まあ、要りませんよ、と。だから、ものすごい信頼を得たってことですね。
棚次:そうです、そうです。
土屋:そのマネジャー、プロデューサーっていうか、あれが。
棚次:そうです。
土屋:はあ~!
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