見出し画像

漫才師・ミキSPECIAL TALK【無料記事】

老若男女に愛される漫才師・ミキ。
“いつでもどこでもふたりがいれば漫才できる”をテーマに
彼らの魅力を余すことなく伝えるべく、インタビューを決行した。
※「OWARAI Bros. -TV Bros.別冊お笑いブロス-」Vol.1(2019年12月16日発売)に掲載されたインタビューの一部を加筆修正したものです。長編は本誌でご覧ください。

取材・文=高本亜紀 撮影=大槻志穂 企画・構成=竹村真奈


兄弟漫才師最大の武器は呼吸

――兄弟漫才師として最大の武器はなんだと思いますか?

昴生 漫才がうまいと言われるところですかね。でも、僕は褒め言葉やと思ってない。みんな練習したらうまくなるもんやろうし、僕らはほとんど練習もしない。寸分の狂いもなく、この間でやってくれとかでもないんですけど、観てる人がうまいなぁと思ってくれるのは兄弟ならではの呼吸があるから。31年間、一緒にいるからこそのもんやと思います。

亜生 呼吸は、確かにありますねぇ。なんも言わなくても、お互いの気持ちがわかるのも兄弟ならではやとも思います。楽屋にいるとき、“あぁ、今日はなんかキレてんなぁ”とか、なんかで怒ってるぞ”とか言わなくても感じることがめっちゃありますから。例えば、先輩にふたりでご飯を食べに連れて行ってもらったとき、僕が食べれへんものはお兄ちゃんが(先輩に)内緒で食べてくれるし、お兄ちゃんが食べれへんもんは僕が内緒で食べるんです。そういうのも呼吸が合うからこそできることやと思っていて。

昴生 けど、(博多)華丸さんに中華料理屋さんへ連れて行ってもらったときは助けてくれんかった。華丸さんがたくあんのチャーハンを頼みはったんですけど、亜生は僕がたくあん食べられへんの知ってんのに知らん顔してたんです。

亜生 たくあんじゃなくて、しば漬けのチャーハンね。いつもなら先輩が向こう見てはるときにテーブルの角を使ってサッと変えられるんですけど、あのときは円卓やったんでできなくて。お兄ちゃんには「食べてみぃや」って言いました(笑)。

昴生 華丸さんに言うてくれたらええのに、「お兄ちゃん、食べられへんから」って。

亜生 自分で言えや!

昴生 俺からは言われへんやん。先輩がせっかく頼んでくれてるんやから。

亜生 自分で食べなあかんってわかったときのお兄ちゃん、マジか……っていう目で僕を見てて。泣きそうになりながら鼻膨らまして食べてたんで、爆笑しそうになりました。

昴生 あんときのおまえ、ほんまに意地悪やったわぁ。いい店やから、店員さんが盛ってくれるんですよ。自分でやれるならカモフラージュもできたんですけど、均等に盛るから。

亜生 お兄ちゃん、太ってるからちょっと多めに盛られてたし(笑)。

昴生 そうそう。あなた、たくさん食べるんでしょっていう感じでね。もちろん全部、食べましたよ。

亜生 ほとんど噛まずに飲んでたけどな。

画像1

兄弟には踏み越えてはいけない境界線がない

――昴生さんはミキ結成以前に何人かとのコンビを経験されてますけど、やはり亜生さんが一番しっくり来たんですか?

昴生 組む前から、亜生が一番合うやろうなとはわかってました。僕、相方に結構きつく言っちゃうんですよ。嫁は歴代の相方全員知ってるんですけど、「なんであんなに厳しく言うんかわからんかった。見てられんかった」って言ってました。

亜生 僕も見たことあるんですけど、ほんまに鬼のような言い方をする。とにかく冷たい!

昴生 いやぁ……(笑)。お笑いやるんやったら多少の努力はせえよという意味で言うてただけです。せっかく好きなことやってるからこそ自分の意思を見せてほしいのに、そういうのがないから言うてただけです。

亜生 他人同士やから、相方さんはきつく言われることで余計にやりたいことができへんくなったんでしょうね。お兄ちゃんより先輩やった相方もいたんですけど、敬語使ってましたもん。

昴生 その人はメールで解散したいって言うてきましたし。

亜生 お兄ちゃんと会って喋るんのが怖かったんやろうなぁ。しかも、お兄ちゃんはそれまでの過程では何も言わんと、突然キレるんですよ。

昴生 僕の中での当たり前がみんなにとっても当たり前やと思ってる節があるんです。やから、なんでこれがわからんねんってすぐ思ってしまうところがあるんですよね。嫁にも「言わんとわからんで」って言われます。

――ただ、亜生さんだと感じ取れるものもあるし、きつい言い方をしても理解してくれるところがあると。
昴生 そうですね。他人同士のコンビやとこれ以上踏み込んじゃったら一線を越えてまうなっていうのがありますけど、兄弟は何を言ってもそういう境界線がない。31年間一緒にいてお互いのことを知ってるからこそ、こんなん言うてもしゃあないなって諦めがついてるところも多少ありますしね。

亜生 お互いにね!

昴生 今の言い方、おかんにそっくりでした。

亜生 おかんをイメージして言いました!

昴生 ははは! 亜生が静岡の大学に行くってわかったとき、もうここからは離れ離れの人生になるんやなと思ったらめっちゃ寂しかったんですよ。今後はほとんど会わんようになるんやろうな、あと何回会えるんかなって(回数を)数えました。それを考えたら、今一緒に漫才やれてるんやから幸せ。ほんまにラッキーですね。

――一緒に漫才できていることはラッキーだという感覚なんですね。

昴生 はい、面白い人はほかにもいっぱいいるのに、一緒に漫才してご飯食べさせてもらえるなんて最高。僕らは運がいいです。

画像2

ミキが目指す、兄弟漫才師として最大のライバルは?

――兄弟漫才師といわれて、真っ先に誰を思い浮かべますか?

昴生 いとこいさん(夢路いとし・喜味こいし)ですね、やっぱり。

亜生 お兄ちゃん、なんかのインタビューのとき、“いとこい先生”って言うてたもんなぁ。

昴生 (笑)。初めて見たとき、これがプロの漫才師なんやと思いました。ひとつひとつの言葉に重みがあるじゃないですか。けど、それは今すぐ身に付くもんじゃない。何十年もやってきてできていくことなので、僕らもあの歳になるまで頑張らなあかんなって思います。いとこいさんの若い頃の漫才って見たことがないんですよね。映像が残ってないっていうのもあるんでしょうけど、僕らはおじいちゃんになってからのいとこいさんしか知らないんです。

亜生 見たかったですよね。若い頃の漫才。

昴生 けど、きっと若い頃はあんなふうではなかったと思うんです。漫才師って歳を取れば取るほどよくなるし、(ネタに)説得力も出てくる。師匠方の漫才を見させてもらうと、この人が言うてるからそうなんやって納得できることってあるじゃないですか。けど、若いヤツが言うても受け入れられないことが多い。やから、早くあの域までいきたいです。そのために今頑張って、説得力を付けていかなあかんのやろうなと思います。

――もしタイムスリップできるなら、その目で昔の漫才ブームを見てみたいですか?

昴生 めちゃくちゃ見てみたいですね。そこに入ってみたいという気持ちもあります。見てもらったらわかりますけど、あの頃の漫才ってテンポが今の何倍も速いんですよ。

亜生 リズムで笑いとってはるもんな?

昴生 うん。紳竜さん(島田紳助・松本竜介)とかB&Bさんとか、ほんまに速い。今は僕らで速いといわれますけど、あの人らの中に入ったら付いていかれへんやろうと思います。

――一方、亜生さんは兄弟漫才師と言われて誰を思い浮かべましたか?

亜生 僕は中川家さんですね。お世話になってますし、兄弟漫才師の中で一番近い存在の人たちです。

昴生 僕は漫才での意見が、礼二さんと食い違わないんです。失礼ながら僕の意見を伝えるんですけど、そうしたら礼二さんも「俺も全く同じことを思う」っていつも言ってくれるんです。

亜生 お兄ちゃんと礼二さんは漫才の話をしてるんです。で、僕は剛さんといつもゴシップ話をしてます。

――おふたりにとって、中川家さんはおこがましくもライバルであり、目指すべき存在といったところなんですかね。

昴生 ほんまにそうですね。今のところ100対0で負けてますけど、いつか勝ちたいです。

――中川家さんに勝つために、これから身につけなければいけないことはなんですか? 先ほど、漫才の経験を積み重ねて説得力を増さないといけないとも話されていましたが。

昴生 説得力もそうですけど、経験と人間性ですね。やから、他の人の漫才を見るのも勉強になるんです。若手の漫才とか見ててなんでこんなに面白いのにウケてないんやろうって思うことあるんですよ。それは、お客さんと呼吸が合ってないから。漫才がうまくても面白くなければウケないし、漫才が下手やと面白くてもウケないことがある。技術もあって面白くもないとダメってことなんでしょうね。

画像3

向かうところ敵なし、になれたら

――では、漫才師として一番の理想は?

昴生 NGK(なんばグランド花月)でもどこでも爆笑が取れることかな。それができたら最高です。

亜生 お客さんも笑って、僕らも笑ってるんが一番の理想ですよね。

昴生 そうやなぁ。向かうところ敵なしになれたらいいですよね。漫才師として説得力を増すためには、亜生が結婚したり、僕に子どもができたりとかいう変化も必要なんやろうなと思います。生活が変われば、いろいろと変わることがあるでしょうからね。もちろん、テレビにも出なあかん。めちゃくちゃ出たいと思ってるわけではないですけど、ミキっていう漫才師がいますよっていうことは常にアピールしておきたいですね。……嫁が言うんですよ、「前までテレビに出てたあの人、今は何してんの?」って。一般の人ってそういう感覚なんやろうなって思うから。

亜生 テレビに出させてもらってるからこそ、地方の人も毎年やってる全国ツアーを見に来てもらえるわけじゃないですか。テレビを見て僕らのことを知ってくれて、しかも僕らの漫才を笑ってくれる人も増える。そう考えると、テレビに出るってほんまに大事なことなんですよ。

昴生 もちろん、雑誌で表紙をやらせてもらえるのもめちゃくちゃ大事。めちゃくちゃありがたいことですね。メディアにコンスタントに出させてもらいつつ、漫才に集中できる環境をちゃんと作って、これからも漫才をやっていきたいですね。

画像4

PROFILE
ミキ
兄・昴生と弟・亜生によって2012年に結成された漫才コンビ。2016年『第46回NHK上方漫才コンテスト』優勝。2019年『第54回上方漫才大賞』新人賞受賞。『おはスタ』(テレビ東京系)などにレギュラー出演中。新型コロナウイルスの影響を受け、現在、毎日後6時にインスタライブで新作漫才の配信を行っている。

【2020年6月中は新規登録で初月無料キャンペーン開催中!(※キャリア決済を除く)】
豪華連載陣によるコラムや様々な特集、テレビ、音楽、映画のレビュー情報などが月額500円でお楽しみいただけるTVBros.note版購読はこちら!

※最新情報を更新して参りますので是非、TV Bros.note版のフォローもお願いいたします。




みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

TV Bros.note版では毎月40以上のコラム、レビューを更新中!入会初月は無料です。(※キャリア決済は除く)