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音楽隊の描いたもの

はじめに。この記事はひいらぎさん主催の「おすすめCDアドベントカレンダー2022」10日目の記事となっております。他の方の作品はこちらよりご覧いただけますので合わせてどうぞ。

前日のひいらぎさんの記事は皆さん読みましたでしょうか。

わたしはFFに触れてこなかった人間、というよりRPGをほとんどやったことがないのでゲーム音楽の話はとても興味深かったです。それを聴いて場面が思い出される感覚を味わってみたいね~

まだ読んでないよって方は私の記事を読む前にぜひこちらから読んでいただきたいです。読もう。

動物の出てくる有名な童話を思い出させる名前が付けられたこのアルバムは、米津玄師が2016年にリリースした彼の3rdアルバムである。

白と黒のみで描かれたペン画のジャケットが特徴的な1stアルバム「diorama」、燃えるように鮮やかな赤とグレージュで塗り潰されていながら緻密に書き込まれているジャケットの2ndアルバム「YANKEE」を経て、樹海を思わせるような深い緑に金色とも取れるような彩度の低いくすんだ黄色で荒く描かれ、ところどころにバツのマークが隠されたハートマークのジャケットを持つ「Bremen」。どこか優しく寄り添ってくれるようなジャケットの通り、このアルバムには疲れてしまった心に潤いをもたらしてくれるような、あたたかなゆらめく炎でそっと照らしてくれるような、そんな曲ばかりだ。

今回の記事では、ジャケットイラストについて収録曲の雰囲気を交えながら書かせていただく所存だ。

それはそれとして、まずは収録曲に目を通していただきたい。

Bremen

1―アンビリーバーズ
2―フローライト
3―再上映
4―Flowerwall
5―あたしはゆうれい
6―ウィルオウィスプ
7―undercover
8―Neon Sign
9―メトロノーム
10―雨の街路に夜光蟲
11―シンデレラグレイ
12―ミラージュソング
13―ホープランド
14―Blue Jasmine

本題に入る前に、少し収録曲の話を。
先程私はこのアルバムに収録されている曲を「優しく寄り添ってくれる」と形容した。そうするといわゆるバラードのような落ち着いたテンポの曲を思い浮かべる人が多いと思うけれど、何もそんなに簡単な話ではない。

もちろん、そういった曲が他のアルバムに比べて多いように感じるのも確かだ。しかし、このアルバムの平均BPMは125となっており、1番速い曲である「フローライト」はなんとBPM200である(どのくらいか気になる人はメトロノームで計ってみてね)。なのに聴いているとそうは思えないのだから不思議だ。そもそも、BPMが100を超えない曲は「再上映」と「undercover」の2曲のみ。他のスローテンポに聴こえる曲は最低でも100は超えている、ということになる。

ここで私が言いたいのは「BPMが高いからといってアップテンポのノリやすい曲ではない」ということ(これは逆もそう)。もちろん場を盛り上げるための曲として作れば自然とBPMが高くなると思うけれど、BPMが低くたって16ビート(16符刻み?何て言うんだろう)にすればそれなりのポップさを出せる。音楽はそういう風にできている(と思っている)。だからBPMを高くしたところで4符刻みにすればそこまで早く聞こえなかったりする。
要するに、このアルバムでは後者のパターンが用いられている曲が多いという話である。



さて、本題であるジャケットイラストの話に移ろう。
冒頭でも多少説明はしたものの、文字だけではイメージが湧きにくいと思うのでBremenまでのジャケットイラストを参考までに。

1stアルバム diorama
2ndアルバム YANKEE
3rdアルバム Bremen


私は初めてこのアルバムのジャケットを見たとき、他と比べて「やけに弱そうだな」と感じたのを覚えている(めちゃくちゃ失礼)。

きちんと言葉を選ぶなら、「弱そう」と言うより「優しそう」「穏やかそう」と言うべきだろうと思う。

というのも私がこのアルバムに出会ったのはほんの数年前の話で、その頃には最新アルバムの「STRAY SHEEP」というこれまた緻密に描き込まれたジャケットをよく聴いていてそれを見ていたからだろうけれど、それにしたって比べると描き込みが少ないことが窺える(STRAY SHEEPのジャケットイラストは前回の私の記事をどうぞ)(露骨な宣伝である)。

でも確かに今見ても当時の感想と同じとまでは行かないにしろ、似たようなことを思うことがある。
それは「視覚に訴えてくる情報が少ないから」なのだろうと考えているが、では具体的にはどのくらい違ってくるのだろうか。





これら3枚を見比べると、3枚目のみに見られる変化というものがある。

1.イラストが前2枚と比べて抽象的である
2.アルバム名が表記されていない

大きく異なるのはこの2点。(1つ目に関しては4枚目も概ねそうだったりするけどその話は置いておく)


まず、1つ目の「前2枚と比べて抽象的である」という点。

私はこれに関して言うなら「収録曲がそもそも抽象的なものが多いから」と言ってしまいたくなる。完全なる私の憶測だけれど、このアルバムの収録曲はどれも抽象的なものについて歌われていて、分かりやすくはっきりとしたイメージを持たないものが多いと思っている。

あたしはゆうれい あなたにみえない
ひとひらの想いも伝わらない
それでも愛を あたしの名前を
教えてほしいの その口から

Tr.5 あたしはゆうれい

ソングフォーユー 覚えている?
僕らは初めましてじゃない
同じものを持って遠く繋がってる

Tr.13 ホープランド

私がこのアルバムで「抽象的」と言っているのは、「幽霊」であったり「同じもの」であったりという、「実体を伴わないもの」や「人によって捉え方が異なるもの」で、そういったものが多く出てくるアルバムという印象を受けた。

大抵の楽曲は誰が聴いてもテーマが一貫して分かりやすくなっている(と思う)ので、落ち込んでいるときにすごく明るい曲を聴いたり、逆にすごく調子のいいときに落ち込みそうな悲し気な曲を聴いたりはしないだろうけど、このアルバムの曲はいつどんなときに聴いてもそのときの心情に寄り添ってくれるような気がしている。これは「抽象的」であるからこその良さで、仮にしっかりとしたテーマ性を持つ楽曲であればそういう風に感じることはないだろう。(これは私が曲を聴いたら感情が引っ張られてしまうだけかもしれない)

ここまで話してしまうと2つ目の「アルバム名が表記されていない」についても、同じようなことが言えるので割愛する。
ちなみにアルバム名がジャケットイラストに表記されていないものは後にも先にもこれ1つである。



アルバムジャケットというのはそのアルバムの顔であり、どういったものかを端的に表したものだと私は思っている。

だからこそCDを買って、曲のみならずジャケットと向き合う時間が欲しいと思う。ジャケットにもそれぞれ意味が込められているだろうから、私がこのアルバムの曲を聴いたうえでジャケットイラストを見て「優しい」と感じたように、読んでくださっている皆様にもそういった想いをしていただきたい。それのきっかけになるような記事になっていたら幸いだ。


明日はろきさんの記事です。楽しみだね~

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