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和牛仕入れの考え方

私は創業53年目になる焼肉店の2代目です。コロナ過で既存店の売上が低迷する現状に対応すべくツヨシ村上商店というオンラインショップを立ち上げました。

https://ktunity.thebase.in/

オンラインショップでは、一貫生産未経産黒毛和牛を枯らし熟成させた牛肉を主に取り扱わせていただいております。今回文末にありますお客様からのご質問の一助となりますよう当店の和牛仕入れの考え方をまとめてみました。

「一貫生産」
一貫生産とは、牛の出生から出荷まで同じ生産者が愛情をかけて育て上げる日本でも希少な肥育技術です。一般的な和牛生産者は「繁殖農家」「肥育農家」に分かれていて、肥育農家さんが繁殖農家さんから子牛を購入して育て出荷するという流れです。そのため1頭ごとの種牛も母牛も系統が異なる場合がほとんどで「特産松坂牛」のような徹底した系統管理がなされているものを除くと、生き物であるがゆえに1頭ごとの味わいが異なります。私自身焼肉店店主としてこの問題に長年頭を痛め解決法を模索していました。そして今から7年前に一貫生産農家さんの黒毛和牛を一頭買いするという一つの解に辿り着きました。一貫生産の農家さんでは、通常の場合より1頭ごとの系統管理(種牛と母牛の系統)が安定することでその味わいも安定しています。つまり「今回の牛は良かった(悪かった)」という事が少ないのが大きな特徴です。

「モモ抜けと小ザシ」                        黒毛和牛赤身肉(特にモモ部位)の旨味の正体は小ザシ(目に見えない粒子状の脂)にあります。私の選別する農家さんでは            ①小ザシの入る種牛を使用している                  ②生後10か月までの飼料はモモ抜けが良くなる与え方          ③牛を牛舎に繫がない事                       を行っています。モモの部位の味わいがあまりブレないのも当店の特徴です。

「未経産」
未経産とは、子供を一度も生んでいないメス牛の事です。肉質が柔らかく脂質が良く(オレイン酸値が高く)身体にやさしく食べ飽きない味わいが特徴です。当店のステーキ肉は未経産でなおかつ30ヶ月以上肥育されているものだけを使用しています。

「低融点の脂質」
肉牛の脂の融点は不飽和脂肪酸(血液に溶けない脂)の比率が高いほど低くなります。低融点脂質のお肉は味のキレが良く身体にも優しいことが科学的に証明されていて、そのような和牛肉は赤身部位がほんのり「あずき色」をしています。しかし、肉表面の色変わりが早い為スーパーやお肉屋さんのショーケースに並ぶことはあまりありません。当店ではそのような脂質の未経産牛だけを取り扱っております。さらに脂の融点を下げる取り組みとして牛の配合飼料のトウモロコシの質と種類に着目し日夜研究を重ねております。

「枝肉重量」                            当店では1頭の枝肉重量が400kg前後のものだけを取り扱っております。その理由として、牛は大きい個体も小さい個体も、細胞の数に変わりはありません。その為小さい個体の方が、キメが細かく旨味の濃い牛肉になるからです。この旨味の強さには肥育日数も関係するため月齢30ヶ月以上でより個体の小さい未経産牛を好んで仕入れております。

「黒毛和牛」
当店では現在但馬系統「安福」を取り扱っております。安福の特徴はフルーツのような和牛香にあります。通常の農家さんでは飼料中の成分の一つであるカルシウムは炭酸カルシウムを用いることがほとんどですが、私の購入する農家さんでは必ずリン酸カルシウムを用いております。リン酸カルシウムは炭酸カルシウムより高価ですが水溶性が高く尿石になりにくいのが特徴でこれにより和牛香が柔らかくなります。(強い⇔柔らかい)香りが柔らかいという事は肉表面の細菌数が少ない事を意味し、出荷時の牛の健康状態が良いことを証明しています。

「枯らし熟成」
枯らし熟成とは、冷暗所で2週間以上かけて枝肉のままゆっくり水分を抜く日本古来の熟成法です。欧米流のドライエイジングとの違いは、微生物やカビの力を借りずに、和牛肉そのものの力で酵素分解を起こさせる事により、肉の旨味や焼いたときの香ばしさが増し、和牛特有の香りも損なわないという黒毛和牛に最も適した熟成法です。また当店のヒレ以外の精肉はマイナス50度で冷凍したものをご提供させていただいております。その理由は、枯らし熟成を施すことで解凍時のドリップ(旨味の流出)も大幅に減り、お客様が「今日は牛肉が食べたい」と感じるときに解凍し、最適な熟成状態のものをお召し上がりいただきたいからです。

「どうして和牛肉は個体が違うだけで同じ味わいのものが少ないのか?」というお客様からのご質問の答えは                   ①系統管理、②肥育環境と肥育日数、③生産者の力量、④飼料と与え方、 ⑤熟成技術 この5項目にそのヒントがあるのでした。