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【詩の森】559 好き好き

好き好き
 
詩人の山尾三省さんは
アニミズムのカミについて
こんなふうにいっています
たとえば海が与えてくれる、善いもの、
広がりがあるもの、美しいもの、
なぐさめてくれるもの、
それらをほかに呼びようがないから
カミというのだと。
 
その言葉を
ずっとあたためているうちに
僕は好きもカミではないかと
思うようになりました
花が好き鳥が好き
あんぱんがすき
写真を撮るのが好き
好きなことに理由はありません
 
好きなものを
ずっと好きでいられるのは
なぜでしょうか
好きは僕らといつもいっしょで
変わることがないのです
僕はもう何十年も
好きを俳句に詠んで
暮らしてきました
 
あるとき
句会でこんな句に出会いました
「筑波山ながむる幸よ秋深む」
好きはやがて幸になるのかもしれません
三省さんがずっと夢見ていたように
僕らは好きどうし繋がるだけでいいのです
人は好き好き
幸もいろいろ―――
 
2023.10.22

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