見出し画像

【詩の森】618 目眩まし

目眩まし
 
それは彼らの
ちょっとした悪戯なのだろうか
それとも悪戯とも
思っていないのだろうか
例えば
原子力災害指針で使われている
横文字の言葉のことである
 
PAZ・UPZといわれて
ピンと来る人は少ないだろう
PAZがPrecautionary Action Zoneの略で
原発から5㌔圏内のこと
UPZがUrgent Protective action planning Zoneで
30㌔圏内のことだと知った後でも
やはり混同してしまうのだ
 
もっと端的に
5㌔圏・30㌔圏では何故いけないのだろう
解釈するのに2段階必要な理由がわからない
ほんとうに被曝を防ぎ
避難を円滑に進めたいのなら
誰でも直感的に分かる言葉の方がいいに決まっている
子供から老人までいるのだから―――
 
それだけではない
OILという油のような言葉もある
Operational Intervention Levelの略で
逃げる際の判断基準のことだそうだ
単に判断基準ではどうしていけないのだろう
それとも何だか分からぬ高い基準を設けて
逃がさないつもりだろうか
 
あるいは
国の指針の文言はそうであっても
住民に周知する県や市町村の段階では
せめて日本語にすべきではないだろうか
彼らにはほんとうに悪気はなかったのだろうか
僕にはPAZもUPZもOILも
目眩ましに思えてならないのである
 
2024.4.8

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?