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【詩の森】608 言葉の衣

言葉の衣
 
人は言葉を覚えるとき
社会の規範や価値観をそのまま受け入れる
何故なら言葉は
丸ごと覚えるものだからだ
そうでないなら
言葉を覚えることなど不可能だ
 
「和をもって尊しとなす」
という言葉は知らなくても
みんな仲良くとしつこくいわれただろう
「働かざるもの食うべからず」
という言葉は知らなくても
食っていけるのかと諭されたことだろう
 
日本語で仲良しは友達のことだが
英語ではフレンドといい
韓国語でチングという
しかしそれらはみな同じ友達なのだろうか
仲良しになるために
僕らはほんの少し自分を押し殺す
 
教育学者の太田尭さんは 人の特性は
「違う、関わる、変わる」ことだといった
人はもともと違うのだから
違いを前提にしない関わりはあり得ないだろう
自分を押し出し
違いを乗り越えてこその友達なのだ
 
がんばるも身を粉にして働くも
着古した衣服のように
僕らの体に纏わりついている
いくら否定してみても
僕らの身上書は
そんなふうにできているのだ
 
だから君が
ほんの少し自覚的になるだけで
君の言葉を 君自身を
見つけ出すことができるだろう
無自覚に着ていた言葉の衣を
脱ぐだけでいいのだから―――
 
2024.3.8
 
 

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