【詩の森】511　本を読んでいますか

本を読んでいますか
 
韓国の詩人
チョン・ヒョンジョンさんを知ったのは
韓国ドラマ『この恋は初めてだから』でした
ドラマの中で使われていたのが
訪問客という詩です
それはこんなふうに始まります
人がやって来るという事は
実はとてつもない事だ
その人は
自身の過去と　現在と　そして
未来と共に訪れるからだ
一人の人生がやって来るからだ
 
人に会うということは
それほどスリリングな体験なのだと
初めて気づかされました
実は僕は本を読むのも
作者に会うことだと思っています
ふいにやってきた訪問客のように
本もまた何かの糸に
手繰り寄せられるように
僕らのもとにやって来るからです
生身の人との出会いには及ばないけれど
本との出会いも
心ときめく体験ではないでしょうか
 
本なら日本人に限らず
外国人でも既に亡くなった人でも
時空を超えて
自由に会うことができます
だれかと話しているとき
少し黙ってよく考えてみたり
聞き返して確かめたりするように
本も中断して暫く積んでおいたり
読み返して
新しい発見をすることもあります
自分のペースで
対話することができるのです
 
君は最近
どんな本に出会いましたか
僕は詩人の
山尾三省さんに出会いました
長く屋久島に住んでおられた方です
彼からアニミズムについて教わりました
それから韓国の
ファン・ジョンウンさんにも出会いました
小説はあまり読まないほうですが
彼女の本だけは四冊も読んでしまいました
人間の内面の奥深さに
気づかされています
 
訪問客という詩は
さらにこんなふうに続きます
壊れやすく
それ故に壊れたこともあろう
心が訪れるのだ＿その栞を
きっと風は探ることができるだろう
心、
私の心がそんな風を真似したら
最期は歓迎されるだろう。
たったこれだけの短い詩ですが
この詩に出会う前と後で
人の見え方が違ってしまったのです
 
君は今
どんな本を読んでいますか
本を書いた人や
本に登場する人の人生が
君に語りかけていることでしょう
壊れやすい心に寄り添うことができたなら
僕らの人生はどんなにか
豊かになることでしょう
こんど会ったら
読んだ本の話をしましょう
素敵な本との出会いに
グッド-ラック！
 
2023.6.23