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「日本刀オモテとウラの世界」展

東京都墨田区の刀剣博物館と、同じく中央区の三井記念美術館をはしごしてきました。今回は前者の話を。

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概要:「日本刀オモテとウラの世界」展

会期:2020年10月24日(土)~12月24日(木)
場所:刀剣博物館

2018年に開催された「京のかたな」展(京都国立博物館)からか、少しずつ広まっている刀の表裏展示。今回はそれをテーマに、ほとんどの展示刀剣を前期と後期でひっくり返して表裏展示をする企画展です。

また、今回の展示では刀だけでなく甲冑の背面や、目貫の制作工程、刀工や試し切り役人の生活を伺わせる古文書など、普段は展示されないい言わば「刀のウラの世界」にスポットを当てた、珍しい展示になっています。

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↓こちらは葛飾北斎の弟子による鍔の図案。

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刀は表裏の刃文が大きく異なる「児手柏」や、そもそも作りが違う片切刃造りの刀が多く展示されていました。

そのため前期と後期ともに足を運んで完成する展示なのですが、都合がつくとも限らず、行けても前期の展示を覚えていられるか……。(あと私立博物館なので入館料も高いのが悩ましいところです……)

とはいえ博物館側も親切な展示構成になっていまして、展示している向きとは逆の押形を並べて展示したり、図で表裏の造りの違いをわかりやすく示すなどの工夫もされていました。なのでどちらか1回しか行けずとも、十分に見応えはあるかと。

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鍔や拵、目貫などの刀装具もそれなりの点数が展示されています。

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私的感想:国広と青江が好い!

元々青江派が好きで国広を追いかけてるので当然の帰結ではあるのですが(笑)、改めて「好い!」と思わせて頂き幸せな気持ちでいます。

↓国広の刀(個人蔵)

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年紀がないので何とも言えませんが、姿や鋒の大きさからすると天正打か、慶長期でも初期の作刀でしょうか? 職員と思しき方何名かに聞いてみましたが「専門家ではないので……」とお答えを頂けず……。

たしか銘ぶりで年代推定ができたはずなので、素人ながらやってみようかな。しかし写真で見ても惚れ惚れします。

↓そしてこちらが青江派の、次忠の太刀(個人蔵)。

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繊細さと豪刀ぶりを兼ね備えてるのが青江派の魅力なのでしょうか。物打ち辺りの棟側には切り込み傷がいくつもあり、鋒もかなり研ぎ減りをしているようで、相当数の戦をくぐり抜けてきた刀なんでしょうね。いやはやかっこいい。

↓今回一番驚いた刀が明治期のこちら。

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三十六歌仙の歌と人物名、人物図が全面にびっっっっっちり彫られてます。肉眼では視認が難しいレベルに小さく、これを彫り込んだ技術と手間を考えると軽く目眩を覚えそうです。

片切刃などは刀身をキャンバスにする工夫で彫り物が主体なのだろうなとは漠然と考えていましたが、この短刀はその極地と言ったところでしょうか。

その他、撮影不可でしたが部屋を入った正面に置かれていた児手柏(徳川ミュージアム蔵)は圧巻の迫力でした。

全体的に黒ずんだ刀身や、鎺が溶けて茎に貼り付いた様はたしかに燭台切と同じ被災刀なのだなと思わされ、けれど美しくすらあるその姿にしみじみと「大切にされてきたのだな」と感じ入りました。いつか燭台切と一緒に徳川ミュージアムで拝見したいなぁ。

後期展示は11月25日(水)からとのことです。

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