小説家になんかなりたくない
「売れる作家の全技術」という本を読み終わった。概要はというと「小説家志望の数名の生徒に対して、現在の文芸業界の状況を踏まえつつ、具体的な技術指導をしていく」というものだ。
おれは別に小説家になりたいわけじゃないんだけど「自身のアウトプット技術向上に少しでも役立てばいいな」という気持ちで読んでみた。
ガチの作家志望者に対する指導とあって、その内容は大変に厳しく高度なものであった。
それもそのはずで、文芸業界というのは完全な斜陽産業であり、年々全体売上が縮小している状況だ。
その中で作家同士が過当競争を繰り広げているわけなのだから、厳しくて当然といえば当然である。
作中にある「半年かけて書いた本の収入が数十万円止まりとかザラ(意訳)」みたいな記述を踏まえると「今から小説家一本で喰おう」なんてのはほとんど狂気としかいいようがない。そういう惨状なのである。
「ずば抜けた高い記述スキルを必死で習得した上で、コンビニバイトみたいな実入りではやってられへんよなあ」というのが偽らざる感想だ。
「描写のキモは"天地人動植"、つまり情景を描くときは"天候、気候、地理、地形、人物、動物、植物"についてせよ(意訳)」というような小説的技法も紹介されていたが、こちらはnoteを含む小説以外のテキスト媒体にも使えそうなので参考にしようと思った。
ほかにもいくつか汎用的な記述技法は認められたので、小説家志望者以外が読んでもまったくの無駄とはいえない。
その上で、正直に述べるのならば「おれが売文を志す場合、そこまで高いスキルを求められない媒体で、より効率よく稼ぎたいなあ」と思ってしまった。
そういうラクをしたがる人間は小説家に向いていないということである。冒頭に書いた通り、まったく小説家にはなりたくないんだけどね。なんせおれは人一倍頑張りたくないので。
(了)
お酒を飲みます