mixi最後の日
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ついに誰も居なくなってしまった。マイミクは依然として三桁を超えているが、これを読む者は一人として居ないだろう。
読者の居ないオンライン日記にどれ程の価値があるのかはわからないが、自己満足的なひとつの区切りとして、これを記す。
つい先日、二十歳そこそこの女の子と話す機会があり、共通の話題に事欠いた僕はジェネレーションギャップを埋める事を早々に諦め、たまたま頭をよぎったmixiの話をする事にした。
「mixiって知ってる?」
(知らない。あっでもちょっと聞いた事あるかも)
この時点であまりのギャップの深さに心折られかけたが、さりとて他の適当な話題も見つからなかったので、強引に続けることにした。
「twitterやFacebookよりずっと前からあったSNSで」
「昔は招待制だったんだ。会員から招待メールを貰わないとmixiには参加できない」
「×年前は本当に流行っていたんだ」
「twitterやFacebookはコミュニティ機能が弱いよね。オフラインで会うときはマンツーマンが原則になる。mixiは多人数オフが多くて、社会人飲み会サークルなんかも流行ってたんだ」
「そこで沢山カップルも産まれてね、結婚した人も少なくないんだよ。何度かマイミクの結婚式に招かれたりもした」
(mixiは今どうなってるの?)
「誰もいない。誰もいないんだ」
(みんなどこへ行ってしまったの?)
「わからない。本当にわからないんだ。みんなどこに行ったんだろう?」
(さびしいね)
「そうなんだ。でもどこかで元気でやってると思うんだよ。そう思わないとあまりにも哀しいからね。ところで君…君たちのような若い人はどんなSNSをやっているの?」
(色々やってるよー。○○○とか△△△とかーほかにも□□□なんかも好きな子はいる感じ〜)
「そうなんだ…(耳には入っているはずだが殆ど覚えられなかった」
「そんなに沢山のアカウントを作ってちゃんと全部更新しているの?」
(全然してないよ〜たまに見るだけ〜)
「なるほどね」
「なるほど」
「少しわかったかもしれない」
「mixi全盛期は一つしかSNSらしきものがなくて、みんなそこにしか集まる事が出来なかったんだ」
「そこでみんなの"日々"が凝縮され、数千万人が書き綴り、それに対して反応を繰り返した奇跡の時間だったんだ」
「だけどその後、類似または新進的なSNSが乱立してみんなそれぞれに拡散してしまった」
「集約されない思いが皆の存在感を希薄にしてしまったが、殆どの者がインターネット上から居なくなるわけがない。どこかで何らかの思いを載せている筈なんだ」
「君もそう思わない?」
気がつくとその娘は居なかった。そういえば僕にそこまで若い女の子の知り合いは居ない。彼女も何処かに拡散してしまったのだろうか。それとも全ては幻で、最初から誰も居なかったのだろうか。
いやそんな筈はない。僕は過去ログを掘り漁ってみた。そこにはちゃんとみんなの形跡があった。熱があった。やはり幻ではなかったんだ。
だとしたら、さっきの女の子はどこに行ったのだろう?みんなどこへ行ったのだろう?他のSNSで僅かに見つかるけれど、やはり殆どはどうしても見つからない。見つからないことを望んでいるのかもしれないし、それを無理に探すのも良くないという水臭さが僕の中にある。
みんな一瞬集まって熱を帯びるが、それは嫌が応にもすぐにほどけてしまって、大きな河のような流れの中に混ざってしまい、見えなくなっていくんだ。mixiの中でバカばかりやっていた×年前はそんなこと思いもしなかった。いや考えたくなかっただけかも知れない。少し考えていればわかることだ。
『20xx年 △月□日をもってmixiは閉鎖します。長年のご愛顧ありがとうございました』
運営からの御礼の言葉がホーム画面最上部に掲げられている。今夜24時がその刻だ。あと数時間。足跡帳を何度更新しても訪問者数は増えない。
みんなどこへ行ったんだろう?
どこかで元気でやってる筈だよな。
ここに戻ってくる必要なんてないんだ。
なにも悲しむことなんてない。
でも、一人くらい観に来てくれないかなあ。
※この日記はmixi最後の日に読んでください
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