おばあちゃんA

通勤途中に毎日会うおばあちゃんがいた。
おばあちゃんは夏も冬も服装はあまり変わらず、いつも腰に手を当てて手ぶらでゆっくり歩いていた。茶色いアパートから出てきて、こちらに向かって歩いてくる。いつも同じ時刻に、同じ場所ですれ違う。決まって平日で、土日は会わなかった。
すれ違った後どこに行くのかが気になっていたけどわからなかった。おばあちゃんが行く先は病院とスーパーがあるので、その辺りに用事があるのかも…でも手ぶらやしなあ…と思っていた。

段々と寒くなってきて、12月上旬頃、おばあちゃんに会わなくなった。
毎日すれ違っていただけで、それ以外のことは何も知らなかったけど、おばあちゃんに何かあったのかもしれないと思って心配になった。病気になったのかな…引っ越したのかな…散歩の時間が変わっただけならいいんやけど…。

年末になって、ある日突然、おばあちゃんが向かいから歩いてくるのが見えた。なんか無性に嬉しくなった。この時はいつもよりもっと手前でおばあちゃんと出会って、おばあちゃんは、喫茶店に入って行った。

おばあちゃんは毎日喫茶店のモーニングを食べに行ってたのかもしれない。もしかしたら寒くなったから外出しなくなったのかも。謎が少し解けて、おばあちゃんが元気なのもわかってちょっと嬉しかった。

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