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アニクラそもそも論:002 「構成が大事」っていうDJの意図のいち解釈。

DJのスタイルに関わらず、構成が重要と言われているのはなぜでしょう?
これに関しては、
・各自の中での音楽環境で変わること
・常識として分かっているが、言語化したことはあまりない
の2点があると思うので、既知の方は「いまさら」かもしれませんが、きちんと面白おかしく書きますので、読んでいただければ。

はじめに音楽は構成ありき

クラシック音楽の時代(そもそもそれ以前なのですが、分かりやすさのため割愛)からそうなのですが、「人に聞かせる音楽には順番がある」というのが前提にありました。


最初の曲から最後の曲まで「構成」されている組曲(いくつかに分かれた曲を1つの作品としてまとめたもの)やオペラ、オーケストラは順番も演奏に含まれます。

若い人向けに言うなら、推しのライブイベントのセットリスト(曲順)はよく見ると思いますが、即興や意図しないトラブル以外では、ライブ演奏は基本的にリハをしますし曲順も盛り上げなどを計算して決まっています。

音楽の視点で言えば「なんとなくこの順番で曲を聴かせた」は音楽を届けるうえで意味が無くなってしまう。オタクの視点で言うなら「ワンクールのアニメの順番は決まっている」のと同じです。それが「構成」の概念です。

明らかに無茶苦茶な演奏、無茶苦茶な曲順があったとしたら「そうなるように構成されている」を想定したほうがいいです。逆説的に、適当な音楽は適当にやろうとしないと基本的に不可能だともいえます。

そこに「他者にとって理解できるできないはさておき、構成に意味がある」のはDJの根幹なので、構成をまず理解した上で、取り入れるための手段を説明しています。

貴方の世界観が知りたい

最近ですとデジタルネイティブの方は「アルバムでアーティストの曲を聴く」が無いかもしれない、という懸念があるため、念のため説明します。

アルバムは今昔を問わず、その1枚のアルバムに並べられた曲の順番は、ランダムで振り分けたのではなく、意味を持って並べられています。

1つのアーティスト(V/A系のオムニバスやミックスならコンセプト)の世界観で構成されており、全部の曲を通して聞くことで世界観やメッセージを含めて完成するのが「アーティストのアルバム」の魅力なのです。
(これに加えてジャケットや歌詞などの装丁、装飾などもアルバムの魅力であることは、詳しく書かれている方がいるので割愛します)

そこから受け取るメッセージは聴いた人の中で解釈され、他のファンとコミュニケーションするときに理解が一致したり、異なったり。オタ活に近いです。

音楽は曲単位ではなく、並べることに思い入れがあり、意味がある。そこにミックスの価値が生まれるので、「構成が大事」と言われるのです。

補足説明:ベストアルバムにすら意味がある

ここからはCD概念も含めてのアーティストアルバムについて語ります。

たとえばベストアルバム。歴史が長くて、名曲が多いけどリリースしたアルバムもシングルも多いアーティストは、ベストという枠組みで選り抜き的な名曲集を出す。後から知った方は「これをまずは聴いたらいいよ」みたいな存在で、有り難いヤツです。

これは売上順やファン投票で選ばれた「コンセプトベスト」でない場合、リリースする側が「どの曲が入っていると嬉しい、この曲を入れておくとよりアーティストが好きになるかも」という厳選を経て、この媒体に納まる曲数はいくつだから、このトラックになりました! という「構成意図」があるんですね。(ちなみにそんな意味も感じられないベスト・アルバムも山のように存在する)

DJが考える構成に置き換えてみる

ここでは、音楽再生機がシャッフルした選曲を流し続けるイベントと、DJが楽しそうにいい曲といい曲を繋いでくれるイベント、どちらに通いたいですか? っていう問いから始めますね。

曲と曲をどういう順番でフロアに届けるかに「音楽にはドラマが含まれている」という考えが加わると、DJは各自のカラーが出る、個性的で面白いパフォーマンスになるんですね。そのDJの選曲は、そのDJが居なければ生まれないので。

現場でチョイスしたセトリも、事前に想定したセトリも、「流れた曲の順番に意味がある=構成している」というのはとても重要視されますし、DJプレイという単語に内包される要素(DJはかけたい曲をどの順番でかけるのかを楽しみながら悩む)だと思っています。そのDJは持ち時間の中でこういう表現をしたいんだ、こういうものを届けたいんだ、は結構如実に伝わるので。

いきなり1パートを全部構成するのは難しい場合は「絶対にかけたい1曲があって、その前後に使う曲を考える」をオススメします。これは既に構成なんですね。
その曲の前後に置いた理由が「なんとなく」でも構わない。そこに置いたら一番かけたい曲がステキに聞こえるか? を言語化しなくても、こうしたら気持ちがよいから、でまずは決めていいです。

そこに説得力を持たせる、伝わりやすくするという意味で、「同じようなジャンル」「同じような曲の速度」「関係性のある作品やアーティスト」を置いたんですわ―、って(後付でかまわないので)言えるようにしておくと色々便利です。これだけで3曲分、アニソン原曲なら最低でも270秒は構成できました。

追記:あとはこの「この曲とこの曲にはこういう親和性がある」という情報をつなげていき、持ち時間を1つの作品にすると、1現場が対応できるようになります。

セトリを組む、組まないはスタイルなので良し悪しとかは気にしないでいいのですが、曲をミックスしてフロアに聞かせる、という行為の中では「パートの構成がある」は分水嶺になります。

現場で組んでいる人は頭の中にもう曲が入っているから状況に合わせたDJで「構成」し、組んできたDJはそのパーティーの自分の出番で何を表現したいかを「構成」しているのです。

より楽しまれるDJになるうえで「構成」はDJが表現したいことの核、軸となるので、意識するだけでDJを聞く/する、イベントに参加する楽しさがアップします。

BPMや同じジャンルの曲、親和性、文脈などは構成するときのヒントとして強いんですね。言葉にしなくても伝わるものがDJの面白さでもあるので、「論理的に組み立てられているし、音楽として気持ちいい」は皆が幸せになるので、せっかくですしここでパクっていってください。

構成が大事ですよ、と言ってらっしゃる人は「DJとして音を流すのであれば、自分が好きな曲なのは当たり前だけど、そこに意味を持たせなさい、そうすればDJが流したパートとしての価値が生まれます」を伝えている、と鶴岡は解釈しています。

再生ボタンを押して、曲をかける理由が「自分が好きな曲」、というのは、スタートラインとしてOKですが、そこに構成はないわけですね。

伝わるか伝わらないかは別としても、「音楽を流す時に構成を考えているプレイ」は伝わらない人も嬉しい、伝わる人も嬉しい、でプラス要素が増えます。「構成を考えないでただ曲を流しているプレイ」はそれで喜ぶ人も居ますが、「構成されてない」と受け取った人は他にプラス理由がなければプラスにはならないんですね。

「構成を考えないDJ」はそれで構わない人から支持されるかもしれませんが、意味を見出したい音楽好きを切り捨ててしまう。これは単純に「もったいないから止めた方がいい」というのと、「せっかくDJするなら曲の構成考えるのはメチャクチャ楽しいし、その視座で他のDJさんを聞くと得られるモノがすごい増えますよ」という楽しもうぜマインドからの推奨です。

このDJさん良いなあ、って好きになった人が居たとしたら、その人はもれなく「構成を考えて持ち時間を使っている」前提と考えたほうがいいです。

いわゆるシメのパート

初期衝動を持った時に、すぐにエントリーできるDJという趣味はすごく間口が広いのですが、拡大スピードや環境の変化に対して「構成考えなきゃいけない理由を明文化してないな」と思ったので、書きました。

シングルカットだけではなく、アルバムを聞いたり、他のDJのプレイをオンライン・オフライン問わず聞いておくとある日、自分の中で「何が好きだったのか」が分かり、自分が育つスピードが爆速で上がるんですね。

お手軽にいろんな人のDJを体験できて、デビューできる世の中ですし、DJ始めたけど(始めたいけど)何したら良いの? って思ったら、たくさんアルバムとDJプレイを聴きましょう、その上でDJプレイのコンセプトはなんだろう? を頭の隅に入れておくととても成長できるので、チート的にお得ですよ、という話でした。

付随するであろう
・アニクラのイベントは全員で1つの作品
・曲を流す上で注意したほうがいいハウスルール
・アニクラって言われてもジャンル多いからどうしたらいいの
は今後扱いますー、一気に話すると「メンドクセエやってられるか」の可能性が出るので今回はナシ。

異論反論大募集しておりますし、自分でも添えた方がいい要素がたくさんあるので、改稿していきますけど、今日はこのへんで(執筆60分)



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