ハロプロの世代交代について②

 以前に、ハロプロの世代交代について書いたnoteで、これから起こるであろう世代交代はうまくいかないだろうと私見を述べたのだが、今回ちょっとそれの補足的なことを書いてみようと思う。なぜ、うまくいかないと思うか、その理由的なことも含めて。

 初めに言っておかなければならないのは、世代交代がうまくいかないであろうと自分が思うのは、メンバーそれぞれの資質の問題というよりも、構造的な問題の方が大きい。具体的に言うと、グループとしての活動の実態が少なくなってきて、次を担う「集団」がいなくなってしまっているという点にある。

 ハロプロの各グループの活動形態は2013年頃から徐々に変わってきて、今では2012年以前とは大きくかけ離れたものとなっているが、それは2012年までの活動期間が長かったBerryz工房と2013年から活動が始まったJuice=Juiceを比べるとわかりやすい。

 まずはCDのリリースペース。Juice=Juiceは2021年9月でメジャーデビューから8年たったが、それまでに出したシングルは14枚。Berryz工房は2012年の3月でメジャーデビューから8年であったが、その時点で出していたシングルの枚数は27。Juice=JuiceのシングルのリリースペースはBerryz工房の約半分だったことがわかる。

 更に極端なのはアルバムである。Juice=Juiceがこれまでに出したアルバムは、舞台のサウンドトラックを除くと2枚のみ。Berryz工房は2012年3月時点で既に8枚のオリジナルアルバムと1枚のベストアルバムをリリースしていた(ここで注釈が必要なのは、通し番号的にいって3番目のアルバムは2枚のミニアルバムで、それを1つのフルアルバムとして数えているので、正確に言うとすると、7枚のオリジナルアルバムと2枚のミニアルバム、そして1枚のベストアルバムである)。つまり、Juice=JuiceはBerryz工房と同じ活動期間中に4分の1以下しかアルバムを出していないという計算になる(ただ、これにも注釈が必要で、Juice=Juiceが出したアルバムはいずれも2枚組である(1枚目通常版にはカバーアルバムも入っているので3枚組)。これを考慮すると4分の1よりも約半分と言った方がいいのかもしれない)。

 ライブ活動でいうと、Juice=Juiceはライブハウスツアーが主体となっており、ホール及び大規模会場(武道館・代々木体育館)でのコンサート数は約70公演にとどまっている。それに対してBerryz工房は最初のツアーがライブハウスツアーであった他は2012年までホールコンサートのみを行っていた(2013年以降は、「ナルチカ」と呼ばれるライブハウスツアーを2013年秋(Juice=Juiceと合同)・2014年春・2014年秋と3回行った)。ホール及び大規模会場でのコンサートの公演数は、合同ツアーのものも合わせると2012年3月までに約260公演(単独では約190公演)であった。

 舞台活動でもJuice=JuiceとBerryz工房ではかなりの差がある。Juice=Juiceはこれまでに舞台を2回しか行っていないが、Berryz工房はデビューから8年たった2012年3月の時点で℃-uteとの合同舞台もあわせると6回行っていた。

 活動の差は、ファンクラブイベントにも表れている。2013年からはハロプロ全体で各メンバーのバースデーイベントが行われるようになった。このこと関係しているかは不明であるが、グループ全体が動くバスツアーの数が減った。Juice=Juiceがこれまでに行ったバスツアーの数は3回であり、Berryz工房が2012年までに行ったファンクラブツアー(ハワイツアーも含む)数の7回を大きく下回っている(それでもJuice=Juiceは他のグループと比べるとバスツアーを行っている方であり、アンジュルムは前身のスマイレージが2013年に行って以降、全くバスツアーをやっていない。カントリー・ガールズとこぶしファクトリーもそれぞれ2回だけであり、つばきファクトリーも1回のみである)。ただ、こればグループの人数が多いことによるロジスティックの問題もあるのかもしれない。しかし、2014年以降、ハワイツアーが行われなくなったなど、ファンクラブイベントの傾向が変わったのは事実である。

 Juice=Juiceがデビューした2013年は、ひなフェスカウントダウンコンサートが始まるなど、ハロプロ全体でのコンサートが多くなった都市である。2013年夏のハロコンからは、従来の東名阪3都市に加え、札幌・仙台・広島・福岡でもコンサートが行われるようになり、公演数も若干増えた。また、ハロプロの各グループを横断したメンバーでのメディアの露出も増えた。象徴的なのは、今は番組が終了したが2015年4月から5年半にわたって放送されたラジオ番組「JAPAN ハロプロ NETWORK」である。

 さらに、2013年で象徴的なのは、メンバーの卒業とは関係がない武道館公演が行われるようになったことである。それまで2011秋、12春、13春とモーニング娘。は武道館で公演を行っていたが、いずれもメンバーの卒業公演であった。しかし、2013年の秋は、9月に℃-ute、11月にはモーニング娘。とBerryz工房が、卒業とは関係なく武道館公演を行い、2014年以降もその傾向が続いた。

 2013年からの変化をまとめて言うと、①ライブハウスツアーの増加及び大箱公演の増加、②CDリリースの減少とリリースイベント(ミニライブ、個別握手会、チェキ会など)の増加、③ハロプロ全体での活動の増加、④グループの増加による各グループの舞台数の減少、あたりが大きいと思う。

 これは傾向としては、グループでなければできない活動が少なくなり、メンバー個人の活動がクローズアップされるようになったといえると思う。これは特に接触商法と呼ばれるものに顕著で、個人の魅力を増やすためには、以前にはスタンドプレーと思われていたようなものが、今は逆に奨励されるようになっている(まだ、つんく♂がプロデューサーだった頃は例えば、勝田がラジオでモデルをしたいと発言したのがつんく♂の耳に入り、「一つの事が中途半端な奴は何やっても結果中途半端」と切り捨てたことがあった)。

 そもそもの話、グループのパフォーマンスを磨いていくということが、メンバーの変動が多すぎるため、今はできない状態である。例えばアンジュルムでいうと、改名以降の2015年から2018年を除いて毎年卒業・脱退者が出ており、また新規加入者も毎年いる状態である。グループの変化・進化をメンバー間の連携を磨くことで齎そうとすることが放棄された結果、メンバー構成を変えることでしか変化が起きず、その変化も新メンバーが飽きられたら終わってしまうという悪循環に陥っている。アンジュルムメンバーの最近のメディア露出はめざましいものがあるが、それもグループ全体の人気指標には全く寄与していない(これも考えれば当たり前のことで、いくら魅力のあるメンバーがいても、グループとしての魅力がなければ人気が出るわけもない。映像作品の売上げだけで見れば、2016年春の武道館公演がアンジュルムのピークで、それを超えることは和田の卒業公演でもできなかったので、今後もないだろうということが予想される)。

 ここから世代交代の話になるが、Berryz工房や℃-uteが活動休止・解散したときに世代交代が比較的スムーズにいったのは、モーニング娘。の9・10・11期、旧スマイレージの1・2期、Juice=Juiceのオリジナルメンバーといった「集団」が受け皿になったのが大きかったと思う。特に、モーニング娘。の9・10・11期がいたのが大きかった。℃-uteが解散した後に、モーニング娘。の人気が他のグループをはるかに上回って、一強といえるような状態ができたことがあった。その理由としては、モーニング娘。が結成20周年で色々とメディア露出が多かったこともあると思うが、つんく♂時代を懐かしむベリキューシンパが一気にモーニング娘。に流れたことも大きかったと思う。

 ひるがえって、今の状態を見ると、まず前提としてつんく♂時代デビュー組の受け皿になる「集団」がいない。かろうじてまとまった「集団」といえるのはビヨーンズぐらいだと思われるが、人気の面で上の世代にとってかわれる存在になれるとは今の時点では到底思えない。

 結局、すべてを個人の勝負に還元しつつある今の体制が問題になると思うが、それがうまくいかないのは、既に徐々に世代交代を始めているアンジュルムとJuice=Juiceの現状を見れば明らかだと思う。アンジュルムは和田卒業以降、勝田や中西の2期、室田、船木といった中堅メン、さらに太田の脱退という不慮の事態もあったが、その間、全く人気が停滞したままである。Juice=Juiceも、「ひとそれ」の小ヒットでアンジュルムに並ぶ人気を得たが、宮本・高木が卒業・脱退してからは、全く人気が伸びていない。

 モーニング娘。は上記の2グループに比べて世代交代が遅れた感があるが、佐藤の卒業でそれが動きだすと思われる。しかし、今の右肩下がりの状況(これはグーグルトレンドを見ればわかりやすいが、YouTubeの数字を見ても一発でわかる)では、そのまま冬の時代に突入すると思う。そもそも客観的に見て、あるグループの映像作品のCM映像で、そのグループのスペルを間違ったまま映像をUpし、それを修正しないようなコンテンツに愛のない人がいる会社に未来があるとは絶対思えない。ハロプロが終わるとしたら、自業自得というか、終わるべきものが終わるという感想しか持たない。


 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?